アンブレラレビューを見てみよう!」シリーズその93です。
今週の土日も大気汚染のアンブレラレビューを見ていきます。それではどうぞ~。



大気汚染と肥満の関係についてアンブレラレビューを行ってみた…!

2024年の温州医科大学の研究によると、大気汚染と肥満の関係についてアンブレラレビューを行ってみたそうです。
実は、大気汚染が肥満リスクを高める…!っていう先行研究が近年増えつつあります。んがしかし、大気汚染における肥満への影響は非常に複雑で、人口や汚染物質の種類、汚染の深刻度によって変わりそうだったり、研究結果もまちまちで矛盾していたりしていたんですよね。そこで今回現時点の知見をまとめて大きな結論を出して見よう…!となったそうです。
まず研究者たちは、2023年7月16日までに発表された該当研究をEMBASE、PubMed、コクラン、Web of Scienceで検索してみたそうな。
すると、

  • EMBASE:96件
  • PubMed:91件
  • コクラン:1件
  • Web of Science:141件

の合計329件の研究がヒットしたとのこと。
続いてこの中で被っている研究を除きつつ、基準に従い精査、質の高い物をピックアップしていったらしい。
最終的に選ばれた系統的レビューは7件でして、内訳は、


って感じでした。
因みにチェックされていた大気汚染物質は、PM1、PM2.5、PM10、NO2(二酸化窒素)、SO2(二酸化硫黄)、O3(オゾン)など。それでは結果を見てみましょう。

【子ども・青少年における大気汚染と肥満リスク】
  • PM1と肥満リスクの関係:肥満リスクが有意にアップ(OR1.41)
  • PM2.5と肥満リスクの関係:肥満リスクと関連あり(OR1.28)。肥満リスクが有意にアップ(OR1.06)。但しBMIとの間に有意差なし。
  • PM10と肥満リスクの関係:肥満リスクと関連あり(OR1.12)。肥満リスクが有意にアップ(OR1.07)。BMIも有意にアップ(r=0.034)
  • NO2と肥満リスクの関係:メタ分析その1では肥満リスクが有意にアップ(OR1.11)。メタ分析その2でも肥満リスクが有意にアップ(OR1.10)
  • O3と肥満リスクの関係:調べたメタ分析は1件のみで有意差なし(OR1.08)

【大人における大気汚染と肥満リスク】
  • 大気汚染と成人の肥満の関係に焦点を当てた研究は1件のみだった。
  • PM2.5と肥満リスクの関係:肥満リスクとの間に有意差なし(OR1.21)。但しBMIは有意にアップ(β=0.34)
  • PM10と肥満リスクの関係:肥満リスクと関連あり(OR1.06)
  • NO2と肥満リスクの関係:肥満リスクと関連あり(OR1.13)
  • SO2と肥満リスクの関係:肥満リスクと関連あり(OR1.04)
  • O3と肥満リスクの関係:肥満リスクと関連あり(OR1.07)

【全年齢における大気汚染と肥満リスク】
  • PM2.5と肥満リスクの関係:10µg/m3増えるごとに肥満リスクがアップ(RR1.159)。母親の曝露で小児肥満リスクがアップ(RR1.06)
  • PM10と肥満リスクの関係:10µg/m3増えるごとに肥満リスクがアップ(RR1.092)

やっぱり肥満と関係ありそうですね~。
今回の結果をまとめてみると、

  • 大気汚染物質(PM1、PM2.5、PM10、NO2、SO2、O3)への曝露は、肥満・過体重、 BMIと正の相関関係がありそうだった…!
  • 但し、大気汚染が肥満に与える影響は、大気汚染物質の種類によって異なりそうだった…!

って感じですかね。