ADHDの影響:早死に・自殺

114. 2015年のデンマークの研究によると、約200万人を対象に調べた結果、ADHDの人は事故による早期死亡リスクがわずかに高かった。また、ADHDに他の精神疾患や物質使用障害が併存すると、早期死亡リスクが高まっていた
115. 220万人以上の台湾人を対象にした2019年の研究によると、ADHDに関連する自然死リスクの増加は見られなかった。但し、ADHD患者の自殺リスクは2倍、殺人による死亡リスクは2倍、不慮の事故による死亡リスクは30%高かった
116. デンマーク人290万人を対象にした2019年のコホート研究によると、ADHD患者の自殺未遂と死亡率は4倍高かった。またADHDに他の精神疾患が併発すると、自殺未遂と死亡率は10倍高かった。
117. 2019年のメタ分析によると、ADHD患者は、自殺未遂が2倍、希死念慮が3倍以上、自殺既遂が6倍以上だった。
118. 2018年の台湾の研究では、ADHDの青年と成人の若者2万人以上と、年齢と性別を一致させた非ADHDの人6万1千人以上を対象に比較してみた。結果、ADHDの人はそうでない人に比べて、自殺未遂が約4倍、自殺未遂の繰り返しが6倍以上だった。メチルフェニデート(リタリン・コンサータ)又はアトモキセチン(ストラテラ)を服薬しても、自殺未遂や自殺未遂の繰り返しリスクは増加しなかった。但し、男性におけるメチルフェニデートの長期治療は、自殺未遂の繰り返しリスクを下げていた
119. 260万人以上のスウェーデン人を対象とした2019年の前向きコホート研究によると、ADHDの成人は早期死亡リスクがわずかに増加、その主な原因は事故や自殺だった。一方でADHDの子どもは有意な関係がなかった。


ADHDの影響:犯罪と非行

120. 2019年のデンマークの研究によると、ADHDの若者は、そうでない若者と比べて、犯罪で有罪判決を受ける可能性が2倍以上、刑務所に入る可能性が3倍高かった他のリスク要因の調整後も、犯罪で有罪判決を受ける可能性が60%高く、刑務所に入る可能性が70%高かった
121. 2015年のメタ分析では、19,500人以上の受刑者を対象にADHDかどうかを見てみた。結果、ADHDの有病率は20.5%で、男女間、青年と成人間の差はなかった。また、2020年のメタ分析では、少年院における青年のADHDの有病率を見てみた。結果、男女共に17%強と報告されており、一般人口の有病率をはるかに上回っていた。
122. 2015年のアメリカ成人5,000人以上を対象にした研究によると、ADHDを持つ人はデート中の身体的暴力の加害者になる可能性が2倍以上、被害者になる可能性が65%高かった。
123. 2016年のアイスランドの研究では、青少年と若年成人21,000人以上を対象に調べた結果、14%が警察署での尋問を受けたことがあると回答していた。そのうちの15%は虚偽の自白をしたとのこと。そしてADHDを持つ人は、虚偽の自白をする可能性が2倍高かった
124. 2019年のデンマークの研究によると、7歳~18歳までの青少年67万8000人を対象に暴力犯罪を調べてみた。すると、ADHDの子どもは、そうでない同年代の子どもに比べて、暴力犯罪の被害者になるケースが2.7倍も高かった



個人的考察

長くなったので今回はここまで。
続きは来週です。



参考文献

最後にまとめてご紹介します。