アンブレラレビューを見てみよう!」シリーズその105です。
今回は、2024年にオタワ大学が発表した、妊娠中における向精神薬の安全性についてのアンブレラレビューを見てみます。



妊娠中における向精神薬の安全性についてアンブレラレビューを行ってみた…!

2024年のオタワ大学の研究によると、妊娠中における向精神薬の安全性についてアンブレラレビューを行ってみたそうです。
なんでも妊娠中における向精神薬の安全性に関する既存のエビデンスはまだ一貫していないそうな。また特定の向精神薬における妊婦への潜在的なリスクは過大評価されている可能性があるらしい。
そこで今回、妊娠中における向精神薬の使用に関する妊婦とその子どもの健康への悪影響をチェックする為、初のアンブレラレビューを行ってみることにしたんだとか。
ということでまず研究者たちは、2023年4月5日までに発表された該当する観察研究のメタ分析ありの系統的レビューをPubMed、Scopus、PsycINFOで検索してみたそうな。すると3,601件の研究がヒットしたとのこと。次にこの中で被っている研究や質の低い研究を除外していったらしい。
最終的に選ばれた観察研究のメタ分析ありの系統的レビューは21件でして、

  • 総サンプル数:17,290,755人
  • 各メタ分析に含まれる個々の研究数の中央値:3.5件(範囲:2~18件)
  • サンプル数の中央値:122,775人(範囲:259~2,673,972人)
  • 症例数の中央値:3,767人(範囲:26~90,589人)

って特徴があったみたい。
それでは結果を見てみましょう。

  • 説得力のあるエビデンス:なし…。
  • 非常に可能性のあるエビデンス:なし…。

…ってことで、あんまりはっきり言える関連性はなかったみたい。残念ですね~。
ただ、可能性のあるエビデンスと低いエビデンスはいくつかありましたんで、その辺を見てみましょう。

【向精神薬と健康被害との関連性】
  • 早産リスクの増加:妊娠中のどの時期にも抗うつ薬を服用している精神疾患(1.62倍)、又はうつ病(1.65倍)の妊婦
  • 在胎不当過小(在胎週数に対して小さい胎児)リスクの増加:妊娠中のどの時期にもSSRIを服用しているうつ病の妊婦(1.50倍)
  • 奇形リスクの増加:妊娠初期にパロキセチンを服用しているうつ病又は不安障がいの妊婦における重大な先天奇形(1.24倍)又は心臓奇形(1.28倍)
  • 上記はいずれも可能性のあるエビデンスレベルだった
  • 自閉症リスクの増加:妊娠期間中、抗うつ薬(特にSSRI)を服用している精神疾患のある妊婦の子ども
  • 上記は低いエビデンスレベルだった

【気分安定薬】
  • 可能性のあるエビデンス:なし…。
  • 奇形リスクの増加:第1トリメスター(≒妊娠初期)にリチウムを投与された双極性障害の妊婦における心臓奇形(1.88倍)と先天奇形(1.97倍)
  • 奇形リスクの増加:妊娠中の全期間におけるリチウムを投与された双極性障害の妊婦における心臓奇形(1.84倍)と先天奇形(1.94倍)
  • 早産リスクの増加:第3トリメスター(≒妊娠後期)にリチウムを投与された双極性障害の妊婦における早産(1.91倍)
  • 上記は低いエビデンスレベルだった

【抗精神病薬】
  • 可能性のあるエビデンス:なし…。
  • 運動障害リスクの増加:妊娠中のどの時期にも抗精神病薬を服用していた精神疾患を有する妊婦から生まれた胎児
  • 上記は低いエビデンスレベルだった

【ベンゾジアゼピン(抗不安薬)】
  • 可能性のあるエビデンス:なし…。
  • 低いエビデンスレベル:なし…。

【オピオイド(鎮痛剤)】
  • 可能性のあるエビデンス:なし…。
  • 低いエビデンスレベル:なし…。

ということで、ざっくりまとめてみると、

  • 妊娠中の向精神薬と安全性はあんまりよく分からん…!はっきり悪影響があると言えるものもない…!

って感じでしょうか。
現時点での結論はこんな感じですかね。



個人的考察

まだまだよく分からないって感じですねー。
つまり過度に気にする必要は(現時点では)なさそうな感じです。



参考文献