認知行動療法(CBT)の効果を調べた研究を片っ端から見てみる!」シリーズの続きです。今回はコクランの研究を見てみます。



成人のうつ病に行動活性化療法が有効なのかメタ分析・系統的レビューを行ってみた…!

2020年のコクランの研究によると、成人のうつ病に行動活性化療法が有効なのかメタ分析・系統的レビューを行ってみたそうです。
DSM-5によれば、うつ病は、少なくとも2週間の抑うつ症状がある、又は以前楽しいと感じていたことへの興味や喜びが感じられなくなった、あるいはその両方を特徴とした精神疾患とのこと。これらのうつ病の主要な特徴に加えて、体重減少や体重増加、不眠症や過眠症(過剰な睡眠・眠気)、精神的・身体的に落ち着かない感じ、精神的・身体的な行動の遅さ、疲労感、気力が感じられない、過度の罪悪感や無価値感、集中力の低下、反芻思考など、さまざまな症状が伴うこともあるそうな。
そんなうつ病の治療はSSRIやSNRIなどを使った薬物治療でしょう。実際、抗うつ薬はうつ病の急性期治療に有効であることは証明されていますからね。
んがしかし、これがなかなかうまくいかないのは知っての通り。
理由としましては、

  • 副作用や依存性が怖い為、薬をちゃんと飲む人、飲み続ける人が少ない…!
  • 薬をちゃんと飲まない為に、再発、通院、入院、症状の悪化、回復の可能性の低下が起こってしまう…!

ってのがよくあるところかと。
また上記の理由もあってか、調査では一貫して患者さんは抗うつ薬による治療よりも心理療法を好む傾向がみられております。
そして、短期の心理療法である行動活性化療法は、うつ病に対する費用対効果が高い(コスパが良い)ってことで注目を集めております。また他の心理療法よりも手間が少なく、すぐに始めやすい利点もあるんですな。
じゃあ、効果はどれぐらいあるのか…?ってことで、今回調べてみることにしたみたい。
まず研究者たちは、2020年1月17日までに発表された該当するRCTをコクラン、Ovid MEDLINE、Ovid Embase、Ovid PsycINFOで検索してみたそうな。また、その他にも良い研究がないか、様々なデータベースや参考文献リスト、研究者への聞き取りで探してみたらしい。
次に集まった研究の中で被っている物を除外したそうで、結果、5,823件の研究が見つかったんだとか。その後これらの研究の質をチェックし、精査していったみたい。
最終的にピックアップされたRCTは53件でして、そのうちの49件でメタ分析を行ってみたそうです。
因みに53件の研究の総サンプル数は5,495人でして、様々な国で実施されておりました(日本の研究も1件選ばれていた)。また、ほとんどの研究は、あらゆる年齢層の成人を対象にしていたそうです。
んで結果なんですが、個人的なポイントを挙げていきますと以下な感じ。

  • 行動活性化療法と第二世代の認知行動療法を短期(最大6か月)で比較した結果、治療効果は同じぐらいだった(RR0.99)
  • 行動活性化療法と第二世代の認知行動療法を中期(7~12か月)と長期(12か月超)で比較した結果、治療効果は同じぐらいだった(中期:RR1.00、長期:RR0.93)
  • 行動活性化療法と第三世代の認知行動療法を短期(最長6か月)で比較した結果、治療効果は同じぐらいだった(RR1.10)
  • 行動活性化と待機リストを短期(最大6か月)で比較した結果、治療効果が高かった(RR2.14)
  • 行動活性化と薬物治療を短期(最大6か月)で比較した結果、治療効果が高かった(RR1.77、但しRCT1件のみのデータ)
  • 行動活性化と薬物治療を中期(7~12カ月)で比較した結果、治療効果は同じぐらいだった(RR0.86、但しRCT1件のみのデータ)
  • 行動活性化と通常の治療を短期(最大6か月)で比較した結果、治療効果が高かった(RR1.40)
  • 行動活性化と通常の治療を中期(7~12か月)で比較した結果、治療効果が高かった(RR1.23)
  • 行動活性化と通常の治療を長期(12か月超)で比較した結果、治療効果が低かった(RR2.17)

特段優れている訳ではないけど、短期的には同じぐらいの効果があるっぽいですね。
ということでポイントをまとめてみると、

  • うつ病治療において、行動活性化療法と第二世代の認知行動療法の効果は同じぐらいっぽい…!
  • うつ病治療において、行動活性化療法と第三世代の認知行動療法の効果は同じぐらいっぽい…!
  • うつ病治療において、行動活性化療法と他の心理療法を比較するには十分なエビデンスがなかった…!

って感じ。
但し、行動活性化療法は、成人のうつ病に対して他と同じぐらい効果的だし、受け入れやすい治療法なんで、選択肢の一つとしてよろしいのではないでしょうか…?



個人的考察

同じぐらいの効果が出る方法がたくさんあると自分に合う方法を選べるんでよろしいかな~と思います。



参考文献