アンブレラレビューを見てみよう!」シリーズその51です。
今回は、うつ病の発症リスクや症状の軽減に役立つ食事は何なのか調べたアンブレラレビューを見てみます。



うつ病の予防と治療に役立つ食事は何なのかアンブレラレビューを行って調べてみた…!

2021年の四川大学の研究によると、うつ病の予防と治療に役立つ食事は何なのかアンブレラレビューを行って調べてみたそうです。
うつ病は悲しみや絶望などのネガティブ感情の増加、興味の低下、自己評価の低下、死について繰り返し考えてしまうなどの症状がありまして、世界で3億2千万人以上が発症しているそうな。その根本的な原因は未だはっきりしていないものの、どうやら、遺伝要因、環境要因、生物学的要因が相互に作用して起こる様子。
そしてこの中の環境要因ってのは、ライフスタイルや食事、社会的サポートなんかを指しまして、対策がとれる項目となっております。その中でもうつ病と食事については研究が盛んに行われておりまして、多くの系統的レビューやメタ分析により、うつ病の発症率やうつ症状の重症度との関連が示唆される証拠が見つかっているんですよね。
ただ、そのエビデンスレベルや質なんかがよく分かっていない部分もあったんで、この度、アンブレラレビューでガッツリチェックしてみることにしたんだとか。
まず研究者たちは2021年7月20日までに発表された該当する前向きコホート研究のメタ分析をPubMed、Embase、コクランで検索したそうです。
すると、

  • PubMed:1,515件
  • Embase:4,616件
  • コクラン:148件

がヒットしたそうな。
次にこの中で重複した研究を除きつつ、基準に従い精査したとのこと。
最終的に選ばれたメタ分析は28件でして、特徴は、

  • サンプル範囲:293~316,894人
  • 平均年齢範囲:18~95歳
  • 地域:世界中から研究が選ばれた

って感じでした。
それでは研究の質の結果から見てみましょう。

  • 28件中5件(17.9%)は質の高いメタ分析だった…!
  • 28件中2件(7.1)は中程度の質のメタ分析だった。
  • 28件中14件(50.0%)は質の低いメタ分析だった…。
  • 28件中7件(25.0%)は質の非常に低いメタ分析だった…。

つまり、メタ分析のほとんど(75%)は結果の信頼性がかけるってことですね。良い感じの質のメタ分析自体意外と少ないんですね~。
次に、その中である程度信頼のおける要素の結果を見てみましょう。

  • エビデンスレベル高の関連性はなかった。
  • 健康的な食事をしている人はそうでない人に比べて、うつ病発症リスクが28%(RR0.72)低下していた(エビデンスレベル中)
  • AHEI又はAHEI-2010(代替健康食指数:健康的な食事評価の指標)のスコアが高いとうつ病発症リスクが26%(RR0.74)低下していた(エビデンスレベル中)
  • の摂取量が多い人は少ない人に比べて、うつ病発症リスクが12%(RR0.88)低下していた(エビデンスレベル中)
  • 軽~中程度のアルコールの摂取(1日40g未満の摂取)をすると、うつ病発症リスクが23%(RR0.77)低下していた(エビデンスレベル中)
  • 大量のアルコールの摂取(1日48gより多い摂取)をしても、うつ病発症リスクは変わらなかった(RR1.01)(エビデンスレベル中)
  • 1日500mlのコーヒーを摂取すると、うつ病発症リスクが11%(RR0.89)低下していた(エビデンスレベル中)
  • 1日2杯のソフトドリンクを摂取すると、うつ病発症リスクが5%(RR1.05)増加していた(エビデンスレベル中)
  • 食べ物から亜鉛を摂取すると、うつ病発症リスクが34%(RR0.66)低下していた(エビデンスレベル中)
  • オメガ3脂肪酸を摂取しても、うつ病発症リスクは変わらなかった(RR1.01)(エビデンスレベル中)
  • 健康的な食事を摂取すると、うつ病の症状が軽減していた(Hedges's g0.28)(エビデンスレベル中)
  • プロバイオティクスを摂取すると、うつ病の症状が軽減していた(SMD-0.31)(エビデンスレベル中)
  • オメガ3脂肪酸はプラセボに比べて、うつ病の重症度を緩和する働きがあった(SMD-0.28)(エビデンスレベル中)
  • アセチル-L-カルニチンはプラセボに比べて、うつ病の重症度を緩和する働きがあった(SMD-1.10)(エビデンスレベル中)
  • ビタミンDはうつ病の症状に明らかな効果がないと出ていた(エビデンスレベル中)

ちょっとまとめてみますかー。


食事面での対策は上記を参考にすると良さそうです。



個人的考察

因みに食事以外の環境要因については、以下のアンブレラレビューが参考になりますのでご覧ください。




参考文献