今回は、2023年にサンパウロ大学が発表した、双極性障害における全死亡率と原因別の死亡率についての系統的レビューとメタ分析を見てみます。



双極性障害における全死亡率と原因別の死亡率についての系統的レビューとメタ分析(2023年バージョン)

2023年のサンパウロ大学の研究によると、双極性障害における全死亡率と原因別の死亡率について系統的レビューとメタ分析を行ってみたそうです。
そもそも双極性障害の発症時のピーク年齢は19.5歳、中央値は33歳と言われておりまして、性別、人種、社会的地位や年収に関係なく、世界人口の約1%が発症しているそうな。
そしてこれまで3件のレビュー(以下)により、双極性障害における死亡率をチェックしてきているとのこと(全てすでに登場済み)

  1. 1998年のサウサンプトン大学レビュー論文
  2. 2009年のワシントン大学のレビュー研究
  3. 2015年のユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの系統的レビュー・メタ分析

しかしこれらには様々な問題がありまして、例えば、個々の研究のばらつきのチェックが甘かったり標準化死亡比(SMR)の範囲が狭かったりしていたらしい。また2015年以降もバンバン新しい研究が発表されているんですな。そこで今回改めて先行研究の結果をまとめてみることにしたんだとか。
まず研究者たちは、2021年7月20日までに発表された該当する研究をPubMed/Medline、Embase、Web of Science、PsycInfoで検索してみたそうな。すると合計3,117件の研究がヒットしたとのこと。次にこの中の重複を除いた後、質の低い研究も除いていったみたい。
最終的に残った研究は57件でして、特徴は、

  • 双極性障害の患者さんの総サンプル数:678,353人
  • 国・地域:16か国(主に西ヨーロッパで、北アメリカとアジアと続く)
  • 研究デザイン:ほとんどは後ろ向きコホート研究か前向きコホート研究
  • 追跡期間:1年~52年の間

って感じ。
因みに日本の研究も1件選ばれておりました(過去にも登場した1995年の産業医科大学の研究
それでは結果を見てみます。

  • 全死亡率:RR2.02
  • 男性における死亡率:RR2.27
  • 女性における死亡率:RR2.26
  • 感染症における死亡率:RR4.38
  • 呼吸器系における死亡率:RR3.18
  • 心血管系における死亡率:RR1.76
  • 脳血管系における死亡率:RR1.57
  • がんにおける死亡率:RR0.99
  • 自殺における死亡率:RR11.69
  • 男性の自殺における死亡率:RR14.02
  • 女性の自殺における死亡率:RR17.52
  • 自然死以外における死亡率:RR7.29
  • 男性の自然死以外における死亡率:RR6.69
  • 女性の自然死以外における死亡率:RR9.33
  • 自然死における死亡率:RR1.90

ちょっとポイントを挙げてみますと、

  • 双極性障害の患者さんは一般人口と比較して早期死亡リスクが約2倍高い
  • その最も大きな要因は自殺で早期死亡リスクが約11.7倍高い
  • 特に女性における自殺の早期死亡リスクが高く約17.5倍だった
  • 自然死(約1.9倍)、感染症(約4.3倍)、呼吸器(約3.1倍)、心血管(約1.7倍)、脳血管(約1.5倍)の原因による早期死亡リスクも高い
  • 但し、がんは関係なかった

にようになっておりました。



個人的考察

う~ん…。
やはり残念な結果だったみたいです。



参考文献