【加筆内容】握力とメンタルの意外な関係
握力と認知機能の関係について調べてみた…!
2018年のウィーン医科大学の研究によると、握力と認知機能の関係について調べてみたそうです。
まず前提としてがんと認知障害ってのは関係がありそうでして、がん患者さんやがん生存者の方に良く見られる傾向なんですな。そこで今回研究者たちは、がん生存者における握力と認知機能の関係をチェックしてみることにしたんだとか。
この研究は、アメリカ国民健康栄養調査(NHANES)っていうアメリカ国民の代表的な健康調査のデータセットを用いたもので、2011年~2012年と2013年~2014年のデータを使ったと言うもの。そのデータセットから、60歳以上のがん生存者における、握力や認知機能検査のスコア、がんの診断に関するデータなんかをチェックしたそうな。因みにがんと診断されたことがない人は除いたらしい。
最後に変数(年齢、性別、人種・民族、教育、婚姻、喫煙、うつ症状、身体活動)を調整して、握力と認知機能テストのスコアと比べてみたそうです。
では結果の前にサンプル情報をチェックしておきましょう。
- サンプル数:383人のがんサバイバー
- 男女比:女性58.5%
- 平均年齢:70.9歳
- 平均BMI:29.3kg
- 有病率の高いがん:乳がん(22.9%)、前立腺がん(16.4%)、結腸がん(6.9%)、子宮頸がん(6.2%)
それでは結果です。
- 男性では、逆U字型の関係性が見られ、握力が40kg~42kgで認知機能がピークに達していた…!
- 女性では、握力が強いほど認知機能も高かった…!
基本的に握力が高いと認知機能のテストも良かったみたいですね~。
因みに男性で逆U字型になった原因は不明らしく、女性では特に乳がんの生存者の握力と認知機能の関係が高かったみたい。
握力とうつ病の関係について調べてみた…!
2018年のアングリア・ラスキン大学の研究によると、握力とうつ病の関係について調べてみたそうです。
この研究は上記と同じく、アメリカ国民健康栄養調査(NHANES)を使ったもので、2011年~2012年と2013年~2014年のデータをチェックしたというもの。このデータセットから、握力やうつ症状をチェックしつつ、更に参加者のBMIから、標準体型(BMIが25kg/m2未満)、過体重(BMIが25.0~30.0kg/m2未満)、肥満(BMIが30kg/m2以上)のいずれかにグループ分けしたそうな。その後統計処理して関連性があるのか見てみたらしい。
最終的なサンプル数は2,812人で、そのうち女性の割合は54%、平均年齢は69.2歳、平均BMIは29.2kg/m2だったそうな。
では結果を見てみましょう。
- 中から重度のうつ症状がある女性は、全くないから最小限のうつ症状がある女性に比べて、握力が1.60kgも低かった…!
- 但し、男性ではこのような傾向はみられなかった。
- 中から重度のうつ症状がある肥満の男性は、握力が3.72kgも低かった…!
- 中から重度のうつ症状がある肥満の女性は、握力が1.83kgも低かった…!
体型を無視すると女性だけ握力とうつ病は関係あるっぽいですね。そして肥満の方で調べると男女とも握力とうつ病は関係あると…。
握力と希死念慮(自殺願望)の関係について調べてみた…!
2019年のワシントン大学の研究によると、握力と希死念慮(自殺願望)の関係について調べてみたそうです。
この研究は、これまた上記と同じく、アメリカ国民健康栄養調査(NHANES)を使ったもので、期間は2011年~2012年と2013年~2014年というもの。このデータセットから、握力と希死念慮の関係を見てみたんだとか。
因みに握力は利き手の最大値としたそうで、希死念慮については以下の質問に答えてもらったとのこと。
- あなたは過去2週間で「死んだ方がマシだ」又は「自傷行為をした方がマシだ」とどれぐらいの頻度で悩みましたか…?
この回答から、
- 全くない
- 数日・半数以上の日・ほぼ毎日
の2グループに分けつつ握力との関連性をチェックしたそう。
最終的なサンプル数は8,903人(平均年齢47.4±0.4歳)でして、結果はこのようになっておりました。
- 握力が5kg増えるごとに、男性全体における希死念慮が16%(OR0.84)も低くなっていた…!
- 握力が5kg増えるごとに、20~39歳の男性における希死念慮が17%(OR0.83)も低くなっていた…!
- 握力が5kg増えるごとに、40~64歳の男性における希死念慮が27%(OR0.73)も低くなっていた…!
- 上記のような傾向は女性では見られなかった…!
男性では握力と希死念慮の関係はありそうな感じですね。しかも年齢が上がれば上がるほど関係は強くなるみたい。一方でこちらの研究では女性は関係なかったみたいですね。
どのぐらいの握力があると良いのか…?
これらを見ていると握力が大事…!ってのは分かるものの、果たしてどのぐらいの握力があると良いのでしょうか…?
そこで参考になるのが2021年のリスボン大学の研究になります。この研究ではヨーロッパ14か国の中高年20,598人(そのうち女性は10,416人)を対象に握力とうつ病との関係をチェックしているんですが、
- 50~64歳の男性:43.5kg
- 50~64歳の女性:29.5kg
- 65歳以上の男性:39.5kg
- 65歳以上の女性:22.5kg
がボーダーラインだったらしい。
これより握力が高いとうつ病リスクが有意に低下していたそうで、一つの目安にはなりそうですね。
個人的考察
以前にも書いた通り、注意点としては、握力を鍛えれば健康になるかは分からないということです。あくまでメンタルが健康な人は握力が強いって話ですからね。但し、握力かどうかはさておき、個人的には筋力とメンタル健康の因果関係は双方向なんじゃないかな~と思っております。
というのも、
- 有酸素運動でも無酸素運動(筋トレ)でも、やればメンタルが健康になるって研究はたくさんある
- 強度は関係なく、歩いても、HIITでも効果がある
- 精神障がいの方はBDNFが低い傾向にあり、運動でBDNFは増えるので、握力測定(筋力測定)から見える可能性はありそう
- 実際、歩くスピードが速いとメンタルが健康だったり、認知機能低下・認知症リスクが低いっていう研究結果もある
って感じなんで。
まぁ、まだまだよく分からない部分は多いですが、なんか最近握力が弱くなったな…って時は、心が元気かどうか一度考えてみてもよろしいかもしれません。