最近はあんまり聞かなくなりましたが、一時期、糖質制限ダイエットがかなり流行っておりました。
その理由は、

  • ダイエット法が分かりやすく、また始めるとすぐに体重が減るから…!

というところです。
確かに糖質(炭水化物)を減らそう…!ってのは分かりやすいキャッチフレーズですからね。そして、最も魅力的なのは、すぐに成果が表れる…!というところでしょう。初めてすぐに体重が減っていたらそりゃモチベーションも上がりますからな。
但し、糖質制限ダイエットを開始すると、すぐに体重が減る理由については意外と知られていなかったりします。
ということで今回はこの疑問を調べた研究を見ていきます。



グリコーゲンと水分量は1:3~4gの割合…!だから糖質制限で2~2.5kgも変わってくる…!

1970年のカロリンスカ研究所の研究によると、ヒトの筋肉に貯蔵されるグリコーゲンの変化とそれによる体内水分量の変化について調べてみたそうです。
因みに糖質というのは体内に入るとグリコーゲンって形で貯蔵されます。
この研究は19名が参加したもので、以下の手順に則り実験を行ったそうな。

  • 1~3日:参加者全員に脚(太もも)と腕を使った長時間の激しい運動を行ってもらう。併せて高タンパク質・高脂肪の食事を取ってもらう。
  • 3日:筋肉に貯蔵されるグリコーゲンの変化とそれによる体内水分量の変化をチェックする。
  • 4~7日:高炭水化物食に切り替えて食事を取ってもらう。
  • 7日:再度、筋肉に貯蔵されるグリコーゲンの変化とそれによる体内水分量の変化をチェックする。

最後にデータをまとめてみたそうです。
結果、

  • 高タンパク質・高脂肪の食事を摂取したときのグリコーゲン濃度は、脚(太もも)が4.5g/kg、腕が2.6g/kgだった…!
  • 高炭水化物食に切り替えるとグリコーゲン濃度が、脚(太もも)19.9g/kg、腕16.9g/kgに増えていた…!
  • 高炭水化物食に切り替えてからの4日間で体重が2.4kgも増えていた…!
  • 体内の総水分量が2.2 1に増えていたが、原因は筋肉と肝臓にグリコーゲンが貯蔵されたからだと考えられた…!

とのこと。
つまり、低炭水化物食(低糖質食)から、高炭水化物食(高糖質食)に切り替えるとグリコーゲン濃度がアップし、それに伴い体重も増加、んで理由は筋肉と肝臓にグリコーゲンと一緒に水分が貯蔵されたからだと。
因みにこの研究では、貯蔵されたグリコーゲンの量と、1gのグリコーゲンに含まれる水分量も計算しているんですが、

  • 貯蔵されたグリコーゲンの量は少なくとも500gと計算できた…!
  • 貯蔵場所の内訳は、筋肉のグリコーゲンが400g、肝臓のグリコーゲンが100gだった…!
  • 1gのグリコーゲンに3~4gの水分が貯蔵されたことを意味している…!

とのこと。
もちろん性別や体型なんかによっても違いはございますが、グリコーゲンが500g、水分がその3,4倍も貯蔵されているんですね。つまり、グリコーゲンと水分量は1:3~4gの割合だと。
そのため、

  • 貯蔵されたグリコーゲンの量=500g
  • グリコーゲンと一緒に貯蔵されている水分量=500g×水分3~4g=1500~2000g
  • グリコーゲンと水分量=500g+1500~2000g=2000~2500g…!

って感じになるんで、糖質制限で2~2.5kgも減量する計算になるんですな。
糖質(炭水化物)を取らないと体内のグリコーゲンがなくなり一緒に水分もなくなっていく…。これが糖質制限ダイエットを行うとすぐに減量する理由みたいです。



追試でもグリコーゲンと水分量の割合は1:3g…!但し場合によってはその比率が1:17gになる可能性も…!

2015年のトレド大学の研究によると、高温で長時間運動するとヒトの筋肉グリコーゲンと水分量はどうなるのか調べてみたそうです。
上記の研究により、グリコーゲンと水分量の結合が1:3gぐらいの割合だと分かりました。では、これがどんな感じで元に戻っていくのか調べた研究がこちらとなっております。
この研究は二度にわたって行われたそうで、参加者は9人の方々。まず参加者全員に以下の形で運動してもらったとのこと。

  • 温度33±4度、湿度65%の高温状態のラボの中に入ってもらう。
  • 150分間、エアロバイクを漕いでもらう。
  • 強度はVO2max(最大酸素摂取量)の54.4±1.05mL kg(-1) min(-1)

つまり、暑い中、2時間半にわたって有酸素運動を自分の限界の半分ちょいぐらいのパワーで行ったと。これにより参加者の体内水分量が4.6±0.2%減少したみたい。
続いて運動の1時間後、参加者は以下の2グループに分かれてもらい水分補給をしたそうな。

  1. 糖質+水400mLグループ:糖質250gを400mLの水に溶かしたドリンク。
  2. 糖質+減った分の水分補給グループ:糖質250gを運動で減った体内水分量(3170±190mL)の水に溶かしたドリンク。

併せて、筋肉の水分量を運動前、運動1時間後、運動4時間後にチェックしたらしい。
最後に2回分のデータをまとめた結果、以下のような感じになったそうです。

  • 運動後に筋肉水分レベルが13±6%、筋肉グリコーゲンレベルが44±10%少なくなっていた…!
  • 運動から回復後、筋肉グリコーゲンレベルは両グループ共に変わらなかった…!
  • しかし筋肉水分レベルは、糖質+減った分の水分補給グループの方が糖質+水グループよりも高くなっていた…!
  • 糖質+水グループの水分量が足りなかったにもかかわらず、グリコーゲン1g当たり3gの水分が筋肉に貯蔵されていた…!
  • 糖質+減った分の水分補給グループは、グリコーゲン1g当たり17gの水分が筋肉に貯蔵されていた…!

つまり、追試の結果、グリコーゲンと水分量の割合1:3gは合っていると分かったみたいですね。但し、ガッツリ汗をかいた時にしっかり水分補給をすると、水がグリコーゲンと結合しないため、更にその割合は高くなるみたい。しかもその比率が1:17gって言うんだから驚きです。
つまり、ダイエットで糖質制限+運動をすると、

  • グリコーゲンと水分量=500g+8500g=9000g…!

となりまして、9kgも減量することになりますね。すごい…。
もちろん、脱水症状のままではいられないのであくまで計算上の話ですが、糖質制限ダイエットが如何に体内水分量の減少と関係あるかは見えたのではないかと思います。ただ、過去にご紹介した1日(24時間)でどれぐらい痩せるのか…?の研究では、脱水ダイエットで11kgも痩せたらしいんで、有り得る話かと。但し、当然ですが脱水のままいるのは健康には良くないですし、適度な水分補給はメリットもあるんで、結局ダイエットでは使えないでしょうね。
因みに余談ですが、熱中症に筋肉質な人がなりづらいのもここからきております。筋肉量が多いと蓄えられているグリコーゲンも多いんで自ずと貯蔵している水分量も多いんですよね。
更に余談ですが、水分補給には誤解も多かったりします。気になる方は「水分補給のウソと本当を科学的に見てみよう!」の記事をご覧ください。



個人的考察

まとめると、糖質制限ダイエットですぐ体重が減るのは体内の水分量が減っているだけが原因となります。
そして糖質制限ダイエットは他のダイエット法よりも特に優れているわけではなく、長く見れば、同じような結果になるんですよね。この辺について詳しく知りたい方は、


をご覧いただければと。
また、そもそも糖質が嫌われる原因であるインスリンも別にそんなに邪険にする必要はない感じでして、むしろ気にし過ぎて極端な糖質制限ダイエットになってしまった方がよっぽどまずいかと思います。
一方で、マイルドに糖質制限した場合はメリットもいくつかございます。特にダイエットが続くには最初の1ヶ月で体重を一気に落とすと良いみたいなんで、その辺を踏まえると別に行ってだめとも言えないかな~っと。
そのため、個人的には、自分に合っているなら極端にならない程度に糖質制限ダイエットはやっても良いんじゃないのかな~と思っております。やっぱ自分が続けられるものを選ぶのが一番大事なんで。



参考文献