ポケモンGO(位置情報ゲーム)の研究を見てみよう!その41「身体活動や心理的・社会的影響を系統的レビューで調べてみた!」
これまでの過去記事については、
- その1~31はこちらの記事の冒頭からご覧ください
- ポケモンGO(位置情報ゲーム)の研究を見てみよう!その32「日本人のポケモンGOと身体活動の関係」
- ポケモンGO(位置情報ゲーム)の研究を見てみよう!その33「ポケモンGOの運動効果を系統的レビュー・メタ分析してみた!」
- ポケモンGO(位置情報ゲーム)の研究を見てみよう!その34「ポケモンGOで自傷行為が減るのか初めて調べてみた!」
- ポケモンGO(位置情報ゲーム)の研究を見てみよう!その35「ポケモンGOでメンタルがやられるという研究のお話」
- ポケモンGO(位置情報ゲーム)の研究を見てみよう!その36「位置情報ゲームはコロナ禍での身体的・精神的健康にどのような影響をもたらしたのか?」
- ポケモンGO(位置情報ゲーム)の研究を見てみよう!その37「コロナのパンデミックと位置情報ゲームの運動モチベアップ効果の関係」
- ポケモンGO(位置情報ゲーム)の研究を見てみよう!その38「移動手段や移動ルートに焦点を当てた研究」
- ポケモンGO(位置情報ゲーム)の研究を見てみよう!その39「安全性と健康への影響はどうなのか?」
- ポケモンGO(位置情報ゲーム)の研究を見てみよう!その40「歩き方で効果が変わるのか?」
を見てください。
ポケモンGOという一つのゲームで、ここまでの数の研究があるのはなかなかすごいんではないかと。
んで、今回は、ポケモンGOの系統的レビューを見てみたいと思います。それでは早速チェックしてみましょう…!
ポケモンGOにより、身体活動(特に軽度の身体活動)と歩数の増加、気分と社会的交流の改善、記憶力・注意力・集中力などの認知能力の向上があった…!
2021年のミネソタ大学ダルース校の研究によると、ポケモンGOが身体活動や心理的・社会的な側面にどのような影響を与えるのか系統的レビューで調べてみたそうです。
そもそもこれまでポケモンGOによる健康への影響を調べた系統的レビューはいくつかありましたが、
- 2021年のノルウェー科学技術大学の系統的レビュー:含まれる研究の質については評価していなかった
- 2020年のトゥルク大学の系統的レビューや2019年のイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の系統的レビュー・メタ分析(その33で紹介した研究):身体活動への影響のみしか調べていなかった
って感じで、それぞれ弱点があったんですよ。
特に身体活動以外の心理的・社会的な側面の効果について、レビューが不足気味なんで、今回、ポケモンGOの身体活動・心理的・社会的な側面の影響について先行研究の結果をまとめてみることにしたらしい。
ということでまず研究者たちは、2016年7月~2021年4月にかけて、該当する査読済みの先行研究をPubMedやSPORTDiscus、PsycINFO、Web of Science、Science Direct、Scopusで検索してみたそうな。すると最初の検索で合計959件の研究がヒットしたらしい。
因みに内訳は、
- PubMed:87件
- SPORTDiscus:154件
- PsycINFO:93件
- Web of Science:220件
- Science Direct:74件
- Scopus:310件
- その他:21件
とのこと。
続いてこの中から、重複しているものや質の低い研究を除外していったそうで、最終的に基準を満たしている研究は36件だったそうです。
この36件の研究の質は、
- 質が高い研究:2件
- 質が中程度の研究:11件
- 質が低い研究:23件
だったみたい。あんまり質の高い研究はなかったみたいですが、この手の研究分野では仕方ないでしょう。因みにこのようなこともありメタ分析は出来なかったそうです。
また36件の研究のうちのほとんどが観察研究(36件中33件)だったらしく、ランダム化比較試験(RCT)はなかったそうな。
研究した国も様々でして、
- アメリカ:21件
- 香港:3件
- 日本:2件
- タイ:1件
- 台湾:1件
- スペイン:2件
- イギリス:2件
- セルビア:1件
- ポーランド:1件
- コスタリカ:1件
って感じ。
因みに日本の研究は、
の2つなんで、どちらも紹介済みのものでした。
最後に36件の研究の概要についても押さえておきましょう。
- 発表年:2016年~2020年(2018年が12件、2019年が10件発表されており、この研究分野がまだ初期段階にあり、拡大していることを意味していた)
- サンプル範囲:20人~27,126人(7件が50人未満、11件が50人~300人、18件が300人以上、14件が301人~999人、1件が10,000人以上)
- 総サンプル数:38,724人
- 年齢範囲:子ども(5歳)~高齢者(60歳以上)までと様々(3件の研究が子供と青少年(平均年齢13歳)で、他の研究は18歳以上の成人のみが対象だった)
- 女性の割合:25%~78%の範囲
- 実験期間:60分~9か月(中央値は1か月)
概要を掴んだところで、結果を見てみましょう。
まずはポケモンGOが身体活動に与える影響についてです。
- 27件中19件の研究で、ポケモンGOが身体活動にプラスの影響を与えていた…!
- 12件中7件の研究で、ポケモンGOプレイヤーは非ポケモンGOプレイヤーに比べて、1日の歩数、中程度の身体活動とウォーキングをした週の日数、1日の歩行距離が有意に高かった…!
- 14件中11件の研究で、ポケモンGOの始める前と後では、1日の歩行時間、1日のその他の身体活動時間(ウォーキングやランニング、サイクリング、スケートなど)、週の軽度~中程度の身体活動時間、1日の中~高強度の身体活動時間、毎日のウォーキング・ランニング距離、毎日の歩数、運動頻度、1日1万歩以上歩いた日の割合が有意に高かった…!
- 但し、効果の持続性についてはあやしかった。1週間~4週間で減ってきたり、1週間を過ぎると有意ではなくなったり、6週間でスタート時と同じレベルまで戻ったりしていた。一方で7か月後も効果が持続した研究もあった。
次にポケモンGOが心理的・社会的な側面に与える影響についてです。
- 身体活動への影響の研究に比べ、心理的・社会的な側面に与える影響の研究は少なかった(36件中13件の研究)
- 13件中11件の研究で、ポケモンGOが感情や気分の改善にプラスの影響を与えていた…!
- 具体的には、約1時間のプレイ後にネガティブな感情が減少、3か月のプレイ後に神経症的傾向が減少していた…!
- ポケモンGOにより、ストレス低下、生活満足度の向上、幸福度の向上、活力の向上や若者の言語性ワーキングメモリ、注意の持続、創造力、集中力も向上していた…!
- 複数の研究で社会的幸福度が改善していたと報告もあった…!
- 親密度の増加、社会的交流の増加、社交性 、帰属意識とつながりの感覚にもプラスの効果があった…!
いや~身体活動、心理的・社会的面ともに良い効果が出ていますねー。
この結果をまとめますと、
- ポケモンGOにより、身体活動(特に軽度の身体活動)と歩数の増加、気分と社会的交流の改善、記憶力・注意力・集中力などの認知能力の向上があった…!
ってことになりますな。
すばらしい…。
個人的考察
系統的レビューで、身体活動・心理面・社会面にプラスの効果があったと分かったのは大きいですね。あとはこの効果が長期間続くのかがはっきりするとよろしいですが、きっかけとしてでも使えそうなのは大変よろしいかと。