先週の続きです
今回は、コロナと位置情報ゲームの研究を見てみます…!



位置情報ゲームはコロナ禍での身体的・精神的健康にどのような影響をもたらしたのか…?

2020年のマッコーリー大学の研究によると、コロナのパンデミック中における位置情報ゲームプレイヤーの運動頻度とメンタル面の健康について調べてみたそうです。
今まで見てきたようにポケモンGOなどの位置情報ゲームを行うと身体活動量や社会的なつながりが増えるなど、身体的にも精神的にもプラスの影響があるということが分かっております。
一方で2019年12月31日に中国の武漢で初めて見つかり、その後2020年4月までに世界中のほとんどの国が、新型コロナウイルス感染症の対策の為に様々な制限をかけました。これを受けてNiantic(ナイアンティック:ポケモンGOなどを運営している会社)も、外出や移動、接触制限のある中でも楽しく遊べるようにゲームシステムを変更しました。なんで外出をメインとしたゲームではあったのですが、自宅や隔離環境でもプレイしやすくなった感じです。
んがしかし、身体活動や社会活動を促すシステムがなくなったり変更したため、位置情報ゲームがプレイヤーの身体的・精神的健康面にプラスの影響をもたらすのかは謎になってしまいました。
そこでコロナのパンデミック中における、位置情報ゲームの利用状況と運動頻度、メンタル面について調べてみることにしたそうです。
この研究は、多くの国々でコロナ制限中だった2020年5月15日~2020年5月29日まで行ったもので、ウェブによるアンケート調査を実施したと言うもの。
ポケモンGOやハリー・ポッター:魔法同盟(2022年1月31日にサービス終了)を最低1週間はプレイしたことのある人を集めて、40項目の質問からなるウェブアンケートに答えてもらったそうな。因みにアンケートの回答には平均15~20分ほどかかるものだったみたい。
アンケートの主な質問内容は、年齢、性別、国などの基本情報、位置情報ゲームのプレイ頻度、運動頻度、精神面の健康度と位置情報ゲームを行う動機や精神面への影響とのこと。
例えば参加者のゲーマー度をチェックし、以下の3グループに分けたんだとか。

  • ハードゲーマー:余暇の時間のほとんどをゲームに費やす人。またゲームの知識やスキルをたくさん持っている人。
  • ゲーマー:ハードゲーマーとライトユーザーの中間の人。定期的にゲームはするけどガッツリはしない人。
  • ライトユーザー:ちょこっと短い時間だけゲームをする人。又は稀にゲームをプレイする程度の人。

その上でコロナのパンデミック前、ロックダウン中における、

  • ゲームのプレイ頻度:1日何時間ゲームをするか、週何日ゲームをするか
  • 身体活動頻度:1日何時間運動するか、週何日運動するか
  • メンタル面のチェック:「WHO-5 精神的健康状態表」を使った。これは過去2週間の気分や活力について6段階で答える物で、合計数が低いほどメンタルや幸福度が落ちているとなる

を聞いてみたそうです。
併せて、コロナのロックダウン中にポケモンGOなどの位置情報ゲームをプレイした動機は何か聞いたり、その時ゲームをすることでメンタルへどのような影響があったか聞いてみたんだとか。
それでは結果をバーッと見ていきましょう。

  • 今回の合計サンプル数は2,004人で、その​​ほとんどは男性(1153/1960、58.8%)であり、且つ、25~34歳(985/1998、49.3%、平均年齢30.5歳、年齢範囲18~99歳)だった。
  • 66か国の人々が参加してくれたが約半分はアメリカ(987/1987、49.7%)だった。
  • 自分をハードゲーマーだと思っていた人は20.2%(392/1943)だった。
  • 自分をゲーマーだと思っていた人は33.2%(646/1943)だった。
  • 自分をライトユーザーだと思っていた人は46.6%(905/1943)だった。
  • ハードゲーマーは女性(61/385、16.0%)よりも男性(324/385、84.2%)の方がかなり多かった。
  • コロナ前の1週間における運動時間は、平均7.5時間だった。
  • コロナ前の1週間におけるハードゲーマーの運動時間は、平均9.07時間だった。
  • コロナ前の1週間におけるライトユーザーの運動時間は、平均7.19時間だった。
  • コロナ前の1週間における男性の運動時間は、平均8.31時間だった。
  • コロナ前の1週間における女性の運動時間は、平均6.35時間だった。
  • ロックダウン中の1週間における運動時間は、平均6.5時間だった。つまり有意に身体活動が減少(1週間当たり1時間減少)していた…!
  • ハードゲーマーはライトユーザーよりも、コロナのロックダウンにより、身体活動が大幅に減少していた…!
  • ロックダウン中にアンケートに答えてもらったが、半分以上の人がメンタルが不調と答えていた(925/1766、52.4%)
  • 女性、若者、運動量の減少がメンタルが不調と答えた人の共通点だった。
  • 参加者の4分の3(1261/1675、75.3%)がコロナのロックダウン中にビデオゲームを少し~かなりたくさんプレイしていたと答えていた。
  • 1,675人の参加者のうち、20%(335人)がゲームの頻度に変化なしと答えていた。
  • 1,675人の参加者のうち、4.7%(79人)がゲームの頻度が少し減った~かなり減ったと答えていた。
  • コロナ前の1週間におけるゲーム時間は、平均16.38時間だった。
  • コロナ前の1週間におけるハードゲーマーのゲーム時間は、平均20.24時間だった。
  • コロナ前の1週間におけるライトユーザーのゲーム時間は、平均13.97時間だった。
  • コロナ前の1週間における男性のゲーム時間は、平均17.90時間だった。
  • コロナ前の1週間における女性のゲーム時間は、平均14.26時間だった。
  • ロックダウン中の1週間におけるゲーム時間は、平均20.82時間だった。つまり有意にゲーム時間が増加(1週間当たり4時間半弱増加)していた…!
  • ロックダウンでライトユーザーのゲーム時間はコロナ前のハードゲーマーと同じレベルにまで増えていた(1週間当たり平均20時間)…!
  • ロックダウン時のハードゲーマーのゲーム時間は1週間当たり平均21.84時間だった。つまりハードゲーマーはコロナでゲーム時間が1時間半ほどしか増えていなく、またロックダウンによりライトユーザーとあんまり変わらない時間にもなっていた…!
  • ロックダウン時の女性のゲーム時間は1週間当たり平均20.91時間だった。
  • ロックダウン時の男性のゲーム時間は1週間当たり平均20.82時間だった。
  • つまりロックダウンにより、男女におけるゲーム時間の差はなくなった…!
  • ほぼ全ての参加者(1962/1975、99.3%)はロックダウン中でも位置情報ゲームをプレイし続けていた…!

つまりコロナ禍に入ったことで、運動時間が減少、ゲーム時間は増加したってことですね。またコロナ禍に入ると、ゲームのプレイ時間は皆ハードゲーマーレベルになり、そこに男女差なんかもなくなってしまうと…。
そしてそんな中でもポケモンGOをやり続けている人がほとんどだったってのは面白いですな。ではどこからそんなモチベが湧いてくるのか…?ってことで次はその辺の結果を見ていきますかー。

  • エンターテインメント制:位置情報ゲームを続ける一つ目の共通点が楽しいから、面白いからとのこと。ロックダウン中は家に閉じこもっており、やることがなかったので、ゲームが暇つぶしにちょうど良かったみたい。なお、ロックダウンがきっかけで、位置情報ゲームを再開しなつかしんだ人もいたらしい。
  • 課題と成果:ログインボーナスや日課のタスクなどがありそれを行うことで達成感が得られたからとのこと。ロックダウンにより、仕事や学校に支障が出ている中、ゲームは達成すべきタスクやチャレンジが明確にあり、また時間的余裕もあったことから、進捗が分かり達成感も味わえたそう。
  • ゲームシステムの変更:コロナ禍に対応する為、ゲームシステムが変更になったのも続けられたポイントとのこと。ロックダウン中でも自宅でプレイしやすくなったり、リワードやイベントが増えたりしたことで、夢中になれたんだとか。因みにポケモンGOではこの時、リモパス(リモートパス)やGOバトルリーグ(PVP)を実装している。
  • エクササイズ:位置情報ゲームによりコロナ禍でも運動するきっかけになったのが大きかったと答えた人もいたとのこと。コロナ禍ではどうしても運動頻度が減り、また人と合わずに外出して運動しなければいけなかったので、そのモチベーションを維持するのにお供として位置情報ゲームは有効だったみたい。アンケートに答えた人の中には、外を散歩する唯一のきっかけが位置情報ゲームだったと答えた人もいたそう。

まとめると、コロナ禍でも位置情報ゲームのモチベが続いた理由は、楽しい、達成感、状況に合わせての変更、運動するきっかけってことですね。正直、ゲームに限らずモチベーションの維持、向上に使えそうな項目ばかりですな。
最後に精神面への影響結果もチェックしておきましょう。

  • 参加者の4分の3以上(1102/1427、77.2%)がコロナのロックダウン中にビデオゲームをすることが精神的健康につながると思っていた…!
  • 参加者の20.7%(1427/295人)がコロナのロックダウン中にビデオゲームをすることが精神的健康につながるかはどちらとも言えないと思っていた。
  • 参加者の2.1%(1427/30人)がコロナのロックダウン中にビデオゲームをすることが精神的健康にマイナスの影響があると思っていた。

大体の人はコロナ禍のゲームはメンタルに良さそうと思っていたみたいですね。
では具体的な理由を見てみましょう。

  • 気晴らし:コロナで現実逃避したい状況でゲームは素晴らしい気晴らしになるとのこと。連日コロナの報道ばかりで憂鬱な気分になっているから気を紛らわせるのに有効だったそうな。
  • アクティビティ・エンターテイメント:コロナのロックダウン中にゲームは何かすることを与え、忙しく過ごすことに役立ち、楽しみを提供し続けてくれたとのこと。コロナ禍で24時間365日家にいる間、ゲームは集中して楽しいものとして、また退屈を紛らわせるのに役立つものとして良かったんだとか。
  • 感情のコントロール:コロナ禍でもゲームは楽しい時間を提供してくれたのも大きいとのこと。それによりメンタルが安定し、ネガティブにのまれることなく、状況を冷静にポジティブに捉えることが出来たんだとか。またアンケートに答えた人の中にはゲームでストレス解消、リラックスできた、ポジティブな気分になったと答えた人もいたらしい。更にはコロナ禍で正気を保っていられる唯一のものと答えた人もいたみたい。
  • 社会的なつながり:コロナ禍でもゲームにより社会的なつながりを感じられたとのこと。ゲームを家族や子ども、パートナーと一緒に行い、絆を深めるきっかけになったと答えていたそうな。また友人と連絡を取り合いゲームでパーティープレイするというきっかけにもつながったらしい。これによりコミュニティ感を感じやすくし、孤立感を感じ辛くする効果があったみたい。

確かに、先の見えないコロナ禍で気分転換ややる事、楽しみを与え、人とのつながりを感じさせてくれたのは大きかったのかもしれませんな。



個人的考察

ポケモンGOなんかの位置情報ゲームは、コロナ禍での身体的・精神的健康を促す効果があったというお話でした。
まぁ、運動の項目以外は別に他のゲームでも同じ効果があったような気がしますし、その運動の効果についても犬なんかのペットを飼っていて散歩のきっかけになったとすれば代替方法はあったと思います。
けれどそれらを同時に、気軽にできるとなるとコロナ禍の状況を踏まえれば位置情報ゲームは有用だったと言えるのではないでしょうか…?



参考文献