当ブログでは、様々な運動の研究を取り上げておりますが、その中で良く登場するのが「強度」です。
強度は運動の負荷のことでして、自分に適した強度を知り、守ることによって、より運動効果が出やすくなったり、ケガの予防が出来たりするんですな。んがしかし、強度ってどう計れば良いのか…?ってなると、ちょっと困りますよね。
ということで、オススメの強度の計り方をご紹介します。



運動強度は自分の感覚的な辛さで計ろう…!

運動強度を計る際に最もオススメしたいのが、ストックホルム大学の研究者であるボルグ博士が考えたRPEという方法です。ボルグ博士の1982年の研究によれば、RPEというスケールが非常に良い感じなんですよ。
んでまず、RPEってなに…?ってなると思うんですが、

  • RPE(Rating of Perceived Exertion)とは、自覚的運動強度や主観的運動強度と呼ばれ、運動強度を自分の感覚的な辛さで計る方法のこと

を言います。
つまり、自分で今の辛さを評価してみよう…!ってことですな。

次にこのRPEのやり方についてなんですが、2017年の研究に分かりやすくまとめられておりましたのでこちらを参考にご紹介いたします。


ステップ1:自分の感覚的な辛さを計る…!

まず最初に、運動中に感じる身体的なストレスや疲労感などの全ての感覚と、「痛い」や「嫌だ」のような気持ちを合わせた自分の感覚的な辛さを評価します。因みに身体的なストレスや疲労感などの全ての感覚ってのは、心拍数の増加や呼吸数の増加、発汗の増加、筋肉の疲労、脚や腕などの痛み、息切れなどになります。
当然ですが、激しく動くほど、これらの評価は高くなります。


ステップ2:スケールに当てはめて運動強度を知る…!

次に、ステップ1での評価を基に、以下のボルグのRPEを使って6(全く辛くない)~20(死ぬほど辛い)の数字で辛さを表します。

  • 辛さ評価:運動レベル
  • 6:全く辛くない
  • 7
  • 7.5:非常に楽
  • 8
  • 9:とても楽
  • 10
  • 11:楽
  • 12
  • 13:やや辛い
  • 14
  • 15:辛い
  • 16
  • 17:とても辛い
  • 18
  • 19:非常に辛い
  • 20:死ぬほど辛い

空欄の部分は上下の運動レベルの中間とお考えください。
また辛さ評価・運動レベルの補足も以下に記載しておきます。

  • 辛さ評価6、運動レベル「まったく辛くない」とは、健康な成人での心拍数60拍/分、8~80拍/分ぐらい。
  • 辛さ評価9、運動レベル「とても楽」とは、自分のペースで数分間ゆっくり歩くぐらい。
  • 辛さ評価13、運動レベル「やや辛い」とは、自分的に運動を長く続けられるぐらい。
  • 辛さ評価17、運動レベル「とても辛い」とは、続けることはできるがとても疲れると感じるレベルを超えて、自分を追い込んでいる状態ぐらい。
  • 辛さ評価19、運動レベル「非常に辛い」とは、ほとんどの人にとって、これまで経験した中で最も辛い運動だと感じるぐらい。

この研究には書いていませんが、評価20、運動レベル「死ぬほど辛い」は、吐くほど辛い状態って感じです。因みにHIITやSITと呼ばれる高強度インターバルトレーニングは、評価19,20で行う感じですね(だから終わった後しばらく横になって動けずに死んでいる)

それとこのスケールの珍しいところ(使いづらいところでもある)は、0~20ではなく6~20の範囲で評価をするところ。なんでもスケールと心拍数の高い相関関係に関係していてこうなったらしい。因みに高血圧などの方の場合、筋肉の代謝が変化するんで、RPEが上昇したりすることもあるんだとか。


んで、ボルグ博士は10段階で評価できるボルグCR10っていうRPEのスケールも開発しておりまして、1998年の書籍「Borg’s Perceived Exertion and Pain Scales」に掲載されているんだとか。
このボルグCR10の流れは、過去24時間内にあった自分の感覚的な辛さを以下の10段階の評価から選ぶという単純なものです。

  • 辛さ評価:運動レベル
  • 0:全く辛くない
  • 0.5:ごくわずかだけあった
  • 1:非常にわずかだけあった
  • 2:わずかだけあった
  • 3:適度にあった
  • 4:ややあった
  • 5:あった
  • 6
  • 7:かなりあった
  • 8
  • 9:非常にあった
  • 10 最大限あった

こちらも空欄の部分がありますが、先程同様、上下の運動レベルの中間とお考えください。

RPEが分かったところで、ここからは、運動強度を自分の感覚的な辛さで計って使えるの…?って疑問を調べた研究を見ていきます。



RPEは意外と正確だった…!

2012年のミュンヘン工科大学の研究によると、RPEは本当に使えるのか調べてみたそうです。
この研究は、白人男女2,560人(年齢17~44歳、中央値28歳)が参加したもので、全員にトレッドミルかエアロバイクを漕いでもらったと言うもの。運動終了後、参加者全員にRPEを聞きつつ、併せて心拍数や血中乳酸濃度も計ってみたらしい。これで主観的な辛さと客観的な辛さのズレを見てみたってことですね。
結果は、

  • RPEは心拍数(r=0.74)、血中乳酸濃度(r=0.83)ともに強く相関していた…!
  • 上記は、性別や年齢、冠動脈疾患(CAD)の有無、身体活動状態、運動方法といった変数と関係なかった…!

とのこと。
自分で運動の辛さを計る方法って意外と精度が高いんですな。
因みに研究者によれば、

  • 普段運動することが少ない人:RPEは11~13がオススメ
  • 普段から運動しておりより激しい運動をしたい人:RPE13~15がオススメ

ってことでした。
ケガ予防のための基準として目安になりそうですね。



ボルグCR10によるRPEも使えそう…!

2013年の南デンマーク大学の研究によると、ボルグCR10によるRPEは肉体労働の辛さを評価できるのか調べてみたそうです。
この研究は、手で物を持ち上げる作業に従事している、男性159人、女性41人が参加したというもの。参加者全員には、正午と終業時にボルグCR10で肉体的な疲労度を評価してもらったんだとか。併せて、太ももや腰、首の筋肉を検査し、客観的な1日の筋肉負荷をチェックしたらしい。
最後にデータを照らし合わせてみた結果、

  • 首の筋肉の疲労が高いことと、ボルグCR10のRPEレベルが高いことに、相関関係があった…!

とのこと。
これをみると、ボルグCR10によるRPEも使えそうですね。しかも職場環境みたいな状況でも使えそうな感じ…。
因みに研究者曰く、

  • ボルグCR10によるRPEレベルが4以上の場合、筋肉への負荷が高いことを示しているようだった

ってことなんで、肉体労働の方が疲労度をボルグCR10のRPEで計る場合、基準にするとよろしいかと思います。



個人的考察

ということで、運動強度を知りたい場合は、RPEを使ってみてください…!



参考文献