今回はオメガ3脂肪酸・魚がメンタルに効くのかを調べた大規模コホート研究を見ていきます。



魚・オメガ3脂肪酸のメンタル安定効果は特に女性に効きそう…!

2009年のノースウェスタン大学の研究によると、オメガ3脂肪酸・魚の摂取量とうつ症状が関係あるのか調べてみたそうです。
そもそもエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)といったオメガ3脂肪酸は、中枢神経の発達に重要で、魚で頭が良くなるとか脳に良いとか言われるのもここからきております。
んで、そんな脳に良いオメガ3脂肪酸がうつ病と関係あるんじゃないか…?って研究も出てきておりまして、例えば、大うつ病や産後うつの発症率は魚の摂取量の少なさが関係あるかもと言われているんですよね。しかし、一方で関係ないって研究結果も出ており、まだまだよく分からない感じです。
そんな中、2006年にブリストル大学からRCTのメタ分析・系統的レビューが出ました。この研究では、抑うつ症状にオメガ3脂肪酸が効くのかを調べた12件のRCTをメタ分析したんですが、結果は出版バイアスが高く、研究ごとの質がかな~りバラバラでよく分からなかったんですよ。
なんで今回研究者たちは、大規模コホート研究で確かめてみたんだとか。
具体的には、CARDIAっていう研究のデータセットを使ったみたいで、これがどういったものかといいますと、

  • 1985~1986年時点で18~30歳だった5,115人のアフリカ系アメリカ人と白人の男女を対象に、ライフスタイルと心血管疾患(CVD)の危険因子を前向きコホート研究で調べたというもの
  • 参加者はアラバマ州バーミンガム、イリノイ州シカゴ、ミネソタ州ミネアポリス、カリフォルニア州オークランドから募集
  • 追跡調査は2年目(1987~1988年)、5年目(1990~1991年)、7年目(1992~1993年)、10年目(1995~1996年)、15年目(2000~2001年)、20年目(2005~2006年)の全6回

って感じ。
このデータセットの参加者5,115人から、7年目と10年目の調査に不参加だった人やデータが抜けている人、カロリー摂取量が極端な人、双極性障害の治療を受けていると自己申告した人を除外していったそうです。
因みに双極性障害の参加者をなぜ除外したかといいますと、1999年のブリガム・アンド・ウィメンズ病院二重盲検プラセボ対照RCTで、オメガ3脂肪酸が双極性障害に有効だったから。というのも寛解期間(症状安定期間)が有意に長かったんですよね。そのためうつ症状の効果を確かめる今回の研究から除外したわけです。
話しを戻しまして、除外した結果、最終的なサンプル数は3,317人になったそうな。
続いて魚の摂取量とエイコサペンタエン酸(EPA)・ドコサヘキサエン酸(DHA)の摂取量についてですが、これは食事アンケートから摂取量をチェックしたとのこと。
うつ病の症状については以前に登場したCES-Dスケールっていううつ病自己評価尺度(60点満点・全20項目)を用いてチェックしたらしい。このスケールで16点以上だった人又は自己申告で抗うつ薬を使用していると答えた人をうつ症状ありとしたみたい。
因みに食事とうつ症状をチェックした時期は、

  • 食事:7年目(1992~1993年)
  • うつ症状:10年目(1995~1996年)、15年目(2000~2001年)、20年目(2005~2006年)

となっておりました。
最後にデータを統計処理した結果、以下のことが分かったそうです。

  • 3,317人の平均年齢は、10年目の時点で32.1歳、年齢幅は24~42歳だった。
  • 参加者の22.4%(744人)が10年目の時点でCES-Dスケールが16点以上だったり、抗うつ薬を使っていた…!
  • 男性よりも女性の方がCES-Dスケールの平均スコアが高かった。また平均BMIが高い、身体活動レベルが低い、別居や離婚している可能性が高い、失業している場合が高い、年収が低い、魚の摂取量の中央値が低いという傾向も見られた…!
  • 全体的にはエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)については小さいが逆相関があった。EPA+DHAについては有意な逆相関があった…!
  • 性別を分けて分析した結果、女性のみエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、EPA+DHAで有意で大きな逆相関があった…!
  • 男性は有意な関係性は見当たらなかった…!

これらをみると、魚・オメガ3脂肪酸の摂取量と慢性的なうつ症状リスクは逆相関の関係みたいですね。但し、女性だけが関係あって男性は関係ないと。