昨日、HIITSIT以外の高強度トレーニングとして、HIFT(ハイ・インテンシティ・ファンクショナル・トレーニング)ってのをご紹介しました。
今回もこれとはまた別の高強度トレーニングをご紹介したいと思います。



HIPTってなに…?

HIPT(ハイ・インテンシティ・パワー・トレーニング=ハイ・インテンシティ・レジスタンス・トレーニング=HIIRT=ハイ・インテンシティ・インターバル・レジスタンス・トレーニング)は、筋トレ(無酸素運動)のHIITバージョンって感じの運動法になります。どういうことかというと、HIITは有酸素運動(ランニングやエアロバイクなど)を短時間全力で行う→短時間休憩を繰り返す運動法ですが、HIPTは無酸素運動(筋トレ)を短時間全力で行う→短時間休憩(休憩なしの場合もある)を繰り返す感じなんですよね。
んで、筋トレ内容は様々なメニューを順番にやっていく感じで、例えば、


を連続してどんどんやっていく感じですね。
因みにHIPTは筋肉量アップが主な目的ですが、心肺機能アップと体組成アップも合わせて行えるのではないかと期待されております。



HIPTで筋力・筋肉量・VO2maxがアップした…!

そんなHIPTですがその歴史は意外に古かったりします。
例えば2000年のオハイオ大学の研究によると、高齢者を対象にHIPTを試してもらったそうです。この研究は普段筋トレを行っていない60歳~75歳の男性高齢者22人を対象に行ったそうで、以下の2グループにランダムに振り分けたそうです。

  1. HIPTグループ:12人でスタートしたが途中3人脱落したため最終的には9人となった。9人の平均年齢は63.7±5.0歳。
  2. 何もしない:10人でスタートしたが途中1人脱落したため最終的には9人となった。9人の平均年齢は66.2±6.5歳。

つまり最終的なサンプル数は18人ってことですね。
続いてHIPTの内容を見ていきます。

  • 週2回、16週間のHIPTを行った。
  • トレーニング日は連続にせず少なくとも2日間(48時間)は空けた。
  • 筋トレ種目はレッグエクステンションレッグプレスハーフスクワットを行った。
  • 各種目それぞれ、1RMの85~90%で6~8回失敗するまで行った。これを1セットとし3セット行った。セット間の休憩は約2分間だった。
  • ウェイトは徐々に増やしていくスタイルで各エクササイズの1セットが6~8回になるよう調整した。

下半身強化の普通の筋トレですね。
また3つの筋トレ前後に強度をチェックしたり、採血なんかもしたそうです。
最後に集まったデータを統計処理した結果、HIPTで

  • 体脂肪が約3%減少した…!
  • レッグエクステンションは50.4%筋力アップしていた…!
  • レッグプレスは72.3%筋力アップしていた…!
  • ハーフスクワットは83.5%筋力アップしていた…!
  • つまり全ての筋トレで筋力がアップしていた…!
  • また筋肉量も大幅にアップしていた…!
  • 更にトレッドミルのパフォーマンスとVO2max(心肺機能)も大幅にアップしていた…!

とのこと。
HIPTで筋力、筋肥大ともにアップしつつもVO2maxもアップしていたってのはすごいですねー。



HIPTは普通の筋トレよりも筋力と筋肉量アップがしやすいかも…!だけどダイエット効果はあんま期待しない方が良い…!

2020年のパドヴァ大学の研究によると、普通の筋トレとHIIRT(=HIPT)の効果を比較してみたそうです。
この研究は健康な20名の若者を対象としておりまして、平均年齢が22.15±1.95歳、BMIは23.57±1.63だったとのこと。因みに参加者の中に定期的に筋トレを行っている人はいなかったそうな。
まず参加者全員には、最初の2週間、普通の筋トレメニューを行ってもらったそうです。続きまして、以下の2グループにランダムに振り分けて引き続き筋トレを行ってもらったみたい。

  1. HIIRTグループ:11名
  2. 普通の筋トレグループ:9名

上記グループの筋トレは3週目~8週目までの6週間(約1ヶ月半)行ったとのことでした。
全ての筋トレは週3日で行ったそうで、但し、連続では行わず、少なくとも1日は休憩を挟んだとのこと。
また最初の2週間の筋トレの負荷は、スタート時に5RMで行ったテストに基づいて評価し、その後は微調整したそう。
因みに15RMの強度(1RM約60%のパワー)で筋トレしてもらったらしい。
続いてグループ分けした際の筋トレがどんな感じだったか見ていきます。


HIIRTグループの流れ

HIIRTグループの流れについては下記となります。

  1. 1RM80%のパワー(6RM相当)で6レップ行った。
  2. 20秒間、休憩してもらった。
  3. 次は持ち上がらなくなるまで繰り返してもらった。
  4. 20秒間、休憩してもらった。
  5. もう一度持ち上がらなくなるまで繰り返してもらった。
  6. 以上を1セットとした。
  7. セット間の休憩は2分30秒とした。
  8. 2セット目は6レップ+2レップ+2レップで行った。

1回の筋トレ時間は準備時間を含めて大体43分だったとのこと。


普通の筋トレグループの流れ

普通の筋トレグループの流れについては下記となります。

  1. 1RM60%のパワーで15レップ行った。
  2. これを1セットとし、3セット行ってもらった。
  3. セット間の休憩時間は75秒間だった。

1回の筋トレ時間は準備時間を含めて大体62分だったとのこと。


筋トレメニュー

筋トレの種目はHIIRTグループも普通の筋トレグループも同じものを行った。
基本的には全身の筋肉を鍛える感じのものだったそうで、


なんかを行ったそうです。


合わせて体組成や脂肪、筋力や筋肉量などもチェックしたそうです。
最後に集められたデータを統計処理した結果はこちら。

  • HIIRTグループは体重が+2.27%増加していた…!普通の筋トレグループは体重に変化はなかった…!
  • DXA除脂肪体重(≒筋肉量)をチェックした結果、HIIRTグループは+2.82%と明らかに増加していた…!普通の筋トレグループは+1.29%と統計的に有意な増加はしていなかった…!
  • 筋肉量の割合はHIIRTグループが+2.66%、普通の筋トレグループが+2.02%と大幅に増加していた…!但し、除脂肪体重に対する筋肉の比率は普通の筋トレグループが+0.96%なのに対し、HIIRTグループが+1.18%と高かった…!
  • ハンドグリップで測定した等尺性筋力(握ったまま保つ力)はHIIRTグループが+4.06%、普通の筋トレグループが+0.54%と有意な増加は見られなかった…。但し、筋持久力テストでは普通の筋トレグループが+12.27%だったのに対し、HIIRTグループが+22.07%と明らかにアップしていた…!
  • ジャンプスクワットのパフォーマンスは、HIIRTグループが+26.02%、普通の筋トレグループが+14.89%とアップしたが、グループ間やスタート時との有意差はなかった…!
  • 基礎代謝に有意差はなかった…!

つまりここから言えることは、
HIIRT(HIPT)は普通の筋トレよりも筋力(筋持久力)と筋肉量アップがしやすいかも…!だけどダイエット効果はあんま期待しない方が良い…!って感じですかね。



HIPTは時短効果が期待できる…!

2022年の国立清華大学RCTによると、HIPTと従来の筋トレを比べて運動パフォーマンスに違いが出るのか調べてみたそうです。
この研究は、健康な大学生24人(男性17人、女性7人、平均年齢21.47±1.8歳)を対象に行ったもので、まずは全員の現在の運動パフォーマンスをチェック、続いて以下の2グループにランダムに振り分けて運動してもらったとのこと。

  1. HIPTグループ:12人
  2. 普通の筋トレグループ:12人

運動期間はどちらのグループも週3日の頻度で8週間、合計24回のトレーニングを行ってもらったそうな。また、トレーニングは連続して行わず、少なくとも24時間は休息の期間を設けたとのこと。
んで、それぞれのグループの運動の詳細は以下のようになっておりました。


HIPTグループ

1RMの60%で、

  1. ベンチプレスを10秒行う
  2. 15秒休憩
  3. スクワットを10秒行う
  4. 15秒休憩
  5. アップライトローイングを10秒行う
  6. 15秒休憩
  7. ヒールレイズ(つま先立ち)を10秒行う
  8. 15秒休憩

で筋トレを行う。
これを1セットとし全部で3セット行った。セット間の休憩は90秒間とした。1日の筋トレ時間は合計約8分間。


普通の筋トレグループ

1RMの90%で、

  1. ベンチプレス3回行う→180秒休憩
  2. ベンチプレス3回行う→180秒休憩
  3. ベンチプレス3回行う
  4. スクワット3回行う→180秒休憩
  5. スクワット3回行う→180秒休憩
  6. スクワット3回行う
  7. アップライトローイング3回行う→180秒休憩
  8. アップライトローイング3回行う→180秒休憩
  9. アップライトローイング3回行う
  10. ヒールレイズ3回行う→180秒休憩
  11. ヒールレイズ3回行う→180秒休憩
  12. ヒールレイズ3回行う

で筋トレを行う。
これを1セットとし全部で3セット行った。各トレーニングセッションに約40分かかった。


最後(9週目)にもう一度全員の運動パフォーマンスをチェックして実験終了となります。因みに普通の筋トレグループはリタイア者が3名いたとのこと。
実験終了後、データを統計処理した結果がこちら。

上半身の筋力(ベンチプレスで測定)
  • HIPTグループ:中央値162.01から190.00Nにアップ…!
  • 普通の筋トレグループ:中央値172.74から203.11Nにアップ…!

下半身の筋力(垂直ジャンプで測定)
  • HIPTグループ:平均57.00±6.18cmから63.25±5.58cmにアップ…!
  • 普通の筋トレグループ:平均57.11±10.96cmから59.11±10.69cmにアップ…!

無酸素パワーテスト(ウィンゲートテスト:30秒間全力でエアロバイクを漕ぐテスト)
  • HIPTグループ:平均788.25±156.23Wから835.31±122.74Wにアップ…!
  • 普通の筋トレグループ:平均773.38±148.66Wから773.68±140.18Wと変わらず…。

つまり、

  • HIPTも普通の筋トレも同じぐらい筋力アップしていた…!
  • 但し、無酸素パワーテストはHIPTのみアップしていた…!

ってことですね。
HIPTも普通の筋トレも効果はあんまり変わらなそうですが、HIPTは時短効果が期待できるので、筋トレする時間がない人にはおすすめかと思います。



個人的考察

ということで、高強度で筋トレをガンガンこなしていくと無酸素運動効果だけでなく、有酸素運動効果も得られる可能性アリ。是非、有酸素運動が苦手な方はお試しください。
また、少しでも筋力+筋肉量アップをしたいという方は試してみてもよろしいのではないでしょうか…?
まぁ、個人的にはボリュームを意識した方が良いと思っておりますが…。



参考文献