少年院での調査研究に従事・診療を行っている医学博士の講演を聞く機会がございまして、それが非常に勉強になったため、今回、ポイントをまとめておきたいと思います。

因みに今回の内容は、当事業所の令和2年1月、2月の社内研修で行った内容でありますが、社内研修の企画等を行った方が私ではなかったので、もし私が社内研修をしたら~っていう思いも含めてまとめてみたいと思います。



少年院の子どもに聞いてみた犯罪を犯した理由

子どもの犯罪っていったいどういう動機でどういった内容なのか…。一言でまとめると、極端な自己対処の果てに犯罪を犯していたっていうケースがほとんどらしい。
例えば、

  • いじめ、学業、先生、給食などの理由で学校に行きたくないから自宅に放火した。
  • 母親がでていき、父親がいなくなれば母親が戻ってくるかもと思い、寝ている父親の頭部を殴打した。今でも殺せばよかったと思っている。
  • 自分が弱くない事を見せればいじめ加害者がひるむと思い、路上で見知らぬ人を背部から刃物で襲った。
  • 小学校の時、下ネタがウケたので今でもウケると思い、路上で陰部の露出を繰り返した。
  • 仲間に入れてもらう為、万引きして同級生に配っていた。
  • 自分が必要とされている快感から、家金を持ち出していた。
  • 自分が必要とされている快感から、オンラインゲームの課金がとめられなくなった。
  • 異性への感情の伝え方が分からず、直接抱きついたり、自宅まで押しかけた。
  • 女性用下着に執着しオンラインショップで購入し、母の下着を集め隠し持っていた。
  • 出会い系アプリで自分の裸体画像を送信していた。

ということが実際にあったということ。上記の子どもの中には発達障がいの方もいたそうで、変化に弱いなどの障がい特性があるので納得できる話です。
こういうことを挙げるとつい障がい者=犯罪者予備軍みたいに面白おかしくマスメディアは取り上げますが、医学博士曰く、

  • ひきこもり≠犯罪者予備軍
  • 発達障がいがある≠犯罪者予備軍

と言っていました。ひきこもりについては前回ブログで書きましたが、犯罪者予備軍ではないことやマスメディアの幻想ってのは同意できる話。まぁ、視聴率っていう金稼ぎだから面白おかしくしないといけないんでしょうが、関係ない当事者は最悪ですよね。



悩みのプロセスは何か…?

少年院に入るなどの犯罪を犯してしまった子どもの動機は「悩み」なのは間違いなかったそう。では、どのような悩みかというと、共通していたのは「友達がほしい」ということだったらしい。しかし、実際に友達ができない。でも、欲しいだから悩む。結果、犯罪を犯してしまうといった流れだということです。確かに友達ってどういうふうに作るか具体的な授業が義務教育にあるわけじゃないし、なんとなく、気付いたらって感じだから発達障がいの方なんか特性的に理解するのが難しいのかもしれませんね。
因みに科学的な友達の作り方は

  • 友達と多くの時間を費やす
  • 友達とイベントをこなす
  • 友達の近くに住む

というのが大事らしい。重要なのは「時間」で一緒に長い時間を過ごせば仲は良くなるっていう話ですが当たり前ですよね~。そこまでのステップが難しいんですよね。あと、ほかにも重要なことがあって、退屈するのが嫌いな人には友だちなどできないらしい。これはなんとなくわかる話で、自分がつまらない、退屈でも周囲に合わせなきゃいけないときってありますよね。



友だちが作れない原因

医学博士は友達が作れない原因として

  • コミュニケーションが上手くできない
  • いじられる、からかわれる
  • 皆からどう思われているのか気になる
  • 文字が読めない、書けない

を挙げていました。結局、うまくいかなかったり、からかわれたり、できないと勉強や運動、コミュニケーション、友だちなどが嫌いになってしまうのが原因ということらしいです。特に強調していたのがこれらのことで「嫌いになる」ということがまずいということです。得意や不得意に関係なく好きか嫌いかが非常に重要で嫌いだと拒否してしまうからみたいです。確かに不得意でも好きなことってありますよね。



嫌いになるプロセス

嫌いになるプロセスとしては、

  • うまくできない→無理やり特訓→嫌いになる
  • 忘れ物が多い→怒られる→嫌いになる
  • 締め切りが間に合わない→先延ばし→嫌いになる

というのが挙げられていました。特訓なんかはモチベーションの上げ方を間違ってしまった感じがしますね。忘れ物や先延ばしは障がい特性を理解していないとなかなか周囲が気付いて対応が難しそう。因みにもし、先延ばし対策を知りたい方は以前書いたブログを参照ください。

これを聞いていた時にふと思ったのが親や先生などの大人が子どもに注意するときも気を付けないといけないんだよな~ということ。怒るのがダメなのは当然として、2015年のエディンバラ大学の研究によると、子供の恥を利用して心理的にコントロールしようとしないって言われていますがいったいはたしてどれぐらいの人が気を付けて守っているのか…。



子どもは忙しい

話を戻します。医学博士によると、以上の原因の他に、今の子どもは学校に習い事、友人関係などやることが多く、忙しいっていう話をしていました。これについては、以前に忙しさは幻想だっていうことを書いたと思いますが、対策はシングルタスクになるかと思います。しかし、これも知っている人がどれぐらいいるのかあやしいので子どもにしっかりと伝えられずになってしまっている可能性は高いですよね~。う~ん。問題の肥大化が止まらない感じ…。



悩みのスパイラルは続く…。

悩みが悩みを生む、まさに悩みスパイラルに陥る訳ですが、更にこれに発車をかけるのが、

  • 周囲に傾聴や共感がない
  • 発達障がいは質と量が多く対応できない大人や子どもが多い

っていうこと。傾聴や共感、発達障がいの特性の理解を周囲の子どもができたらそれはかなりすごい子どもだし、そもそも大人だってできる人は専門性のある人を除いて難しいと思う。その結果、犯罪を犯してしまったり、自殺をしてしまったりするそうです。

自殺については以前にブログで少し書きましたが、日本の自殺のピークは3万人で今は2万人と減少傾向にあります。しかし、若者の自殺者数は変わっていないのが現状です。理由は社会的孤立、つまり孤独・一人ぼっちということです。

孤立・孤独は健康を害すのは有名な話で、例えば、2010年のブリガムヤング大学の研究によると孤独は、喫煙やアルコール消費などの死亡率と同等の影響があるって話ですし、かなりのダメージがありそうです。これはひきこもりにも言えるかもしれませんね。



脳内飽和が起きてしまう

更に、脳内飽和が起きてしまっているパターンも多いそうです。これも以前にシングルタスク・マルチタスクのブログで詳しく書きましたが、要はマルチタスク状態になってしまっているということで、

  1. メモリの空き容量が不足
  2. 不要なアプリケーションの起動数が多い
  3. 疲れた(脳内疲労が多い)

といった形になってしまいます。また、間違った対策で万引きに置き換える事もあるそうです。万引きはスリルと達成感が味わえるので一時的に他のアプリケーション(悩みなど)を止められることができるということですね。でも、悩みそのものを解決するわけではないので結局アプリケーションは再起動しますし(悩みを思い出しますし)、万引きをしたという新たな悩み(アプリケーション)が起動する事にもつながります



飽和状態のサイン

医学博士曰く、飽和状態のサインとして、

  • 生活の乱れ
  • 食生活の乱れ
  • 睡眠の乱れ
  • メンタルの乱れ
  • 犯罪行為

を挙げていました。因みに2週間続くと危険ということで、これは別に障がいがなくても同じではないでしょうかね~。特に上記がダブルやトリプルで起こるとヤバいのは明白です。

あと、医学博士は体に表出するものとして「腹痛が多い」というのを挙げていました。これはかなり納得のいく話でおそらく腸内環境の乱れが原因ではないかと思います。腸は第二の脳と言われる重要な器官。その腸内環境が乱れ、炎症を起こすことがうつ病の大きな原因の1つであり、おそらく、腸内環境の悪化の結果、腹痛が起きている可能性もあるのではないかと思います。他にもリーキーガット症候群になっている可能性も高いのかな~と思ったりしますが、このあたりの話は長くなるので、いつか詳しく書こうと思います。



まとめ

これらが複雑に絡み合った結果、自己主張の極端な歪曲化とその表現という表出に至る=犯罪を犯すということになるみたいです。また、一方でダメな人間なんだという気持ちも持ち合わせてしまうということでした。

この負のループから抜け出す為に、更に、予防のためにできることがあるということですが、長くなったので今回はここまでにします。
今回は合間に個人的考察を入れてみました。
因みにダメな人間なんだっていう気持ち対策は、まさに脱フュージョンが必要だと感じました。っと、こんな感じで次回は医学博士が挙げた具体的対策に個人的考察を含めて書いてみたいと思います。



参考文献