以前にひきこもりの支援の研修がないなんて書いたことがありますが、やはり社会問題と認知されつつあるのか、最近精神科医の方から学ぶ機会(研修)がありまして参加してきました。

今回はその研修で学んだことについて書いてみたいと思います。
過去にブログで書いたひきこもりについては下記をご覧ください。




当事者と支援策には大きな誤差がある…!

まず、初めに話していたのがひきこもりやその家族などの当事者と行政などが考える支援策には大きな誤差があるということでした。あるひきこもりのアンケート調査によると、

  • 当事者→相談したいと思わないが1位だった
  • 支援策→相談窓口の周知・PRが大事だという意見が1位だった

ということでした。つまり、相談したいと思っていないのに相談窓口をどんどんアピールしていこうって、矛盾しちゃっているんですよね~。それもそのはず、ひきこもりについて知られたくないという人が大半なので当然相談しづらいし、ひきこもりは知られないようにしていることが多いのでどうしても受け身にならざるを得ない性質があるんですよね。う~ん。難しい。



ひきこもりの人は悩んでいる人がほとんどで…。

ひきこもりの人は悩んでる人がほとんどなのは皆さんご存知の通りですが、その思考は大きく2つにわかれるそうで、

  • 自分に責任追及する思考
  • 他人に責任転嫁する思考

ということでした。自分で責任を感じて自分を責める。または、他人への責任転嫁(大概親だとか)をするのはひきこもりになった時、責める相手が自分か親しかいないかららしいです。これはなんとなく想像できる話ですね~。



ひきこもりの定義の曖昧さと勘違い

ひきこもりの相談を家族等からされることが今回の精神科医もよくあるそうですが、よくよく聞くとそれはひきこもりではないよという場合が多いそうです。例えば、

  • 80歳の高齢者がひきこもった!助けて!→それは高齢者福祉!
  • 薬を止めてひきこもって独語が!助けて!→それは治療中断例!
  • 働かずに時々窃盗までしている!助けて!→それはひきこもりじゃない!警察!

といった事例が実際にあったということです。ひきこもりの定義については政府によるガイドラインをみると詳しく書いていますが、当事者や専門機関の関係者、興味がある人以外は見ないでしょうし、勘違いが起きるのは納得できる話ですね。



ひきこもりと社会参加への気持ちは常に揺れ動いている

ひきこもりの方の心情はいったいどのようなものなのか…。
精神科医によると、ひきこもり=プロセスであり、社会参加⇔ひきこもりは常に気持ちが揺れ動いていると話していました。つまり、

  • 社会参加に気持ちが動く→このままじゃだめだ。働かないとまずい…。
  • ひきこもりに気持ちが動く→トラウマが…。やっぱ怖い…。やめとこう…。

こんな感じです。この気持ちが揺れ動いているうちに時が経ちひきこもりからの脱却がより困難になってしまうみたいです。



ひきこもり≠犯罪者予備軍

ひきこもり≠犯罪予備軍ではない。メディアの幻想であり、偏見による対策が必要だと話していました。これは以前に少年院の診療をしている医学博士も同じようなことを言っていましたが精神科医も同じ意見でした。もちろん私もこの意見には賛成であります。まぁ前にも書いた通り、金儲けの為とはいえ、当事者は一括りにされたらそりゃ知られないようにしますし、相談なんかし辛いに決まってますよね。



ひきこもりは病気?発達障がい?悩み?何が原因?

ひきこもりは病気なのか?発達障がいなのか?悩みなのか?何が原因なのかについて、精神科医曰く、判断が難しいということです。病気・発達障がい・悩みがそれぞれあったりなかったり、重複していたりするので一括りに判断はできないということ。また、ある程度の信頼関係ができるなどして、何度か話していくうちに実は重複していたってパターンもあるそうで、ことはそう単純じゃないっていうことでした。
これもはっきりこれって言えないところが問題の肥大化や先延ばし、見て見ぬふりとかの原因になってそうですね~。



ひきこもりの悪循環

精神科医曰く、ひきこもりで一番注意するポイントは長引くのが危険だということ。長引けば長引くほどより悪循環に陥り、きっかけが掴めず、なかなか抜け出すのが難しくなるということでした。これは納得のいく話ですが、そもそも長引いたからひきこもりになる訳でしてパラドックス的な感じが個人的にはします。とりあえず、タイムマシーンはないので(過去には戻れないので)今からひきこもりを抜け出そうと少しずつ動き出すのが「長引く」を防止できる手段ではないかと思いました。



責任転嫁の話はしない…!

とかく、こうなったのは(ひきこもりになったのは)誰が悪いとか犯人捜しを始めるのは良くある話。しかし、精神科医曰くそれは不毛であるとのこと。更に、責任転嫁の話も意味がないということで、これは非常に納得できるお話しでした。そんな話をしたって現状が良くなるわけじゃないしむしろ悪化する可能性の方が高いですもんね~。



ひきこもりの当事者(本人や家族)への支援方法や対策の基本

精神科医は主な対策として、

  • 親と自分が楽しむ
  • ハードルを低くする(地雷ワードに気を付ける)
  • 悪い事ばかりみず、違う事をする


を挙げていました。以前に紹介したCRAFTって技術を簡単にした感じの話でしたね~。これはなかなかシンプルでいい感じでした。



ひきこもりの当事者(本人や家族)にはSFAが使える…!

後半の方はひきこもりの支援にはSFA(ソリューションフォーカストアプローチ)が使えるっていうことをメインにロールプレイなどを行っていました。特に、ひきこもりは原因が分からないことが多く、SFAは原因が分からない時有効だと話していました。SFAってなんだっけ…?って方はブログ「SFA(ソリューションフォーカストアプローチ)」をご覧ください。



支援方法のポイント

精神科医は支援方法ポイントを以下にまとめていました。

  • 家族の意見が違う場合は共通部分を探すようにすると良い
  • 相談して損したと思わせないようにする
  • 相談して良かったと思わせること。これでOK
  • 一気に解決を期待しない。時間をかけて行う

更に、相談を受けた際は次も相談してもらえるようにするため、上記を理由として次回へつなげるのがいいそう。例えば「電話一本で解決できないからまた電話を下さい」のような言い方が良いみたいです。



個人的考察

話を聞いていると今回の精神科医はポジティブシンキングが好きなご様子でした。個人的には自分がネガティブよりの人間であること(泣)、ポジティブシンキングの悪影響のデータが多く、ポジティブ心理学の効果が低いって研究があるのを知っているので苦手ですが、それはそれとして非常に勉強になりました。
特にSFAがひきこもり支援に使えるっていうのは聞いたことがなかったので是非覚えておきたいところです。実際に最近ひきこもりの利用者が増えてきていますからね~。



参考文献