今回は私が最もおすすめしたい呼吸法であるタクティカルブリージング・ボックスブリージングをご紹介します。



タクティカルブリージング・ボックスブリージングってなに…?

タクティカルブリージング(Tactical Breathing=戦術的呼吸)、別名ボックスブリージング(Box Breathing)とも呼ばれるこの呼吸法は米軍の兵士や警察官、消防士の間で使われております。更にアメリカ海軍の特殊部隊であるNavy SEALsにも採用されているそうなんで、呼吸法としては広く効果が認められている定番のテクニックとも言えるでしょう。
タクティカルブリージングは戦場という特殊な環境下の中、極限のストレスに襲われている状況で使う呼吸法なんでストレス解消、自分を落ち着かせるにはきっと役立つであろうと思います。



タクティカルブリージング・ボックスブリージングのやり方

とまぁ、なんだかすごそうな話の前置きは終わりにして(笑)、やり方の説明に入っていきます。
2008年の書籍タクティカルブリージング(ボックスブリージング)のやり方が載っているんですが早速書いていくと、

  1. 口を閉じて鼻から4秒かけて息を吸う
  2. 4秒間息を止める
  3. 4秒かけて口から息を吐き出す
  4. 4秒間息を止める

以上が1セットとなります。基本は4セットとなりますが落ち着くまでくり返してOKです
すると、心拍数が自然と115〜145に落ち着いていきます。115~145の心拍数とは全身の力がほどよく抜けた状態、つまり、緊張とリラックスのバランスがベストな状態といえます。簡単に言うと自分の最高のパフォーマンスが出る状態ってことですね。

最初のうちは下記GIF画像を見ながら4秒の間隔をつかむと良いと思います。


またアメリカ政府が開発したタクティカルブリージング用のiPhoneアプリもあるんですが、上記のものがただアプリになっただけって感じのものなんで、上のGIF画像を見ながら行うか、保存するだけで良いような気がします。



タクティカルブリージングを普段から練習しておくとストレスに2倍以上強くなり冷静に対処もできるようになる…!

2012年のケベック大学ウタウエ校の研究によると、タクティカルブリージングの効果について調べてみたそうです。
この研究は現役のカナダ軍男性兵士41人(年齢18~60歳、平均年齢24.9歳、独身68%、兵役年数4.8年)が参加したそうで、そのうちの62%が実戦経験済みとのこと。
具体的な実験内容ですが、まず参加者全員に初日、タクティカルブリージングを15分間行ってもらったそうな。
続いて以下の2グループにランダムに振り分けて2,3,4日目の3日間過ごしてもらったらしい。

  1. コントロール群:ストレスマネジメントトレーニングを行わない。
  2. タクティカルブリージング練習グループ:Left 4 Deadという高ストレスがかかるホラーFPSゲームを1日30分しつつ、タクティカルブリージングを行う。

更に5日目の最終日、参加者全員は、即席の爆発装置がいきなり登場、爆破、負傷した兵士を応急処置するというシミュレーションに参加してもらったそうです(10分間)
最後にコルチゾールや心拍数など集められたデータを統計処理した結果、

  • タクティカルブリージング練習グループとコントロール群を比べてみると、コルチゾールに違いがあった…!
  • タクティカルブリージング練習グループの最終日シミュレーション前のコルチゾールは5.93で、シミュレーション後は7.22だった(差1.29)
  • コントロール群の最終日シミュレーション前のコルチゾールは5.82で、シミュレーション後は8.8だった(差2.98)
  • つまりタクティカルブリージング練習グループはコントロール群よりも2倍以上ストレスが軽減されていた…!
  • しかしなぜか心拍数はどちらも同じ感じだった。

とのこと。
更に面白いのが5日目のシミュレーション中に参加者が行った医療行為の正確さで、

  • タクティカルブリージング練習グループの45%が患者の胸の傷を適切に治療できていた…!
  • コントロール群の10%が患者の胸の傷を適切に治療できていた…!

って感じだったんですよ。
つまり、タクティカルブリージングを普段から練習しておくことによってストレスに2倍以上強くなり冷静に対処もできるようになる…!ってことですね。



タクティカルブリージングで不安・緊張・興奮が収まり冷静になる…!パワーブレスでより良いパフォーマンスが発揮できる…!

2021年のドイツ軍の研究によると、タクティカルブリージングと吐く時間を長くした呼吸法(≒パワーブレス)の効果について調べてみたそうです。
この研究は健康な30名が参加したもので、タクティカルブリージング又はパワーブレスのどちらかをしつつ、以下の状況でストループテストを行ってもらったそうな。

  • 実験はラボ内で行われた。
  • 解答時間350ミリ秒(0.35秒)という超短い時間と、解答時間1500ミリ秒(1.5秒)という短い時間で答えてもらい、時間によるプレッシャー(ストレス)を感じてもらった。
  • ラボ内に77~89デシベル(騒々しい工場内、地下鉄車内、救急車のサイレン、パチンコ店内)のホワイトノイズ(昔のテレビの砂嵐音みたいな音)を流して、騒音によるストレスを感じてもらった。

合わせて主観的なストレスレベルや心拍数、心拍変動なんかをチェックしたそうです。
気になる結果は、

  • タクティカルブリージングとパワーブレスの間に、主観的なストレスレベルの違いはなかった…。
  • タクティカルブリージングを使うと、不安や緊張、興奮が収まり冷静になりやすかった…!
  • パワーブレスを使うと、タスクでより良いパフォーマンスが発揮できるようになった…!

とのこと。
自分自身では気付かないけど、それぞれの呼吸法の効果がちゃんと出ていたんですね。
この結果に研究者曰く、

  • 受動的な場合はタクティカルブリージングが効果的で、能動的な場合はパワーブレスが効果的である可能性がある

としています。
つまり、プレッシャー(ストレス)を感じる場面ではタクティカルブリージングが有効、自分から積極的に行動せにゃいかんときはパワーブレスが有効ってことですね。
やはり呼吸法はその時々で使い分けた方が良さそうですねー。



個人的考察

不安や緊張の解消効果もあるんですが、やっぱ一番は自分の最高のパフォーマンスを発揮したい場面や作業効率をアップしたい方におすすめですね~。
ぜひお使いください。


…。
因みに戦場のメリークリスマスとかけて今回記事を書いたと気付いた方は何人いらっしゃいましたかね…?(笑)



参考文献