【まとめ】「腹が減っては戦は出来ぬ」は本当か?
「腹が減っては戦は出来ぬ」ってことわざがあるじゃないですか…?空腹だと何もやる気が起きないってことですね。戦を現代に置き換えると、運動前に空腹だと良くないという感じでしょうか…。
一方で、「腹の皮が張れば目の皮がたるむ」なんて言葉もあったりします。ご飯をたくさん食べてお腹の皮が張るほど満腹になると眠くなるってことですね。こちらも満腹で眠くて何もやる気が起きない状況ですね。やはり現代に置き換えると食べた後は動かない方が良いって感じでしょうか…。
どちらもやる気が起きなくなるのは仕方ないとして、運動の場合で考えるとどちらが良いんですかね…?
つまり、
- 運動前に食事を取った方がいいのか…?
- 食事後に運動を行っていいのか…?
って問題です。
上記には、運動後に食事を取って栄養補給した方が良いのか…?って項目がありませんが、ゴールデンタイムまで気にするべきかって話があるように、これはほぼ間違いなく、食事はした方が良いと言えます。
また、食事後に運動を行っていいのか…?については、直後でなければ問題なさそうな感じ。これはウォーキングの記事なんかが参考になりますね。
ということで残る問題はあと一つ。
運動前に食事を取った方がいいのか…?です。
ここには賛成派と反対派の意見がありまして、
- 賛成派:栄養がないと体は動かない…!パフォーマンスも下がるから運動が非効率的になる…!だから食事をして運動した方が良い…!
- 反対派:空腹で運動すれば体脂肪が使われてダイエットに良い…!その後栄養補給すれば問題なし…!
ってな感じなんですよ。
確かにどちらもありそうですよね。う~ん。困った…。
運動前の炭水化物摂取で脂肪燃焼効果がどうなるのか見てみた…!
1997年のテキサス大学オースティン校の研究によると、運動前に炭水化物を摂取した場合、脂肪分解効果にどのような影響が出るのか調べてみたそうです。
この研究は、健康でアクティブな男性6人を対象としたそうで、まず初めに以下のどちらかを摂取してもらったそうな。
- 体重(kg)×0.8gのグルコースを摂取してもらう(Glc)
- 体重(kg)×0.8gのフルクトースを摂取してもらう(Fru)
その後、
- 1時間待機する
- 一晩断食する
のどちらかをしてもらった後、60分間自転車を漕いでもらったそうです。
因みにこの時の強度は全力の44%程だったらしいんで、結構余裕をもってゆっくり1時間漕いでもらったみたい。
では、結果をバーッと見てみましょう…!
では、結果をバーッと見てみましょう…!
- 運動開始前の50分間の平均インスリン濃度は、断食した人たちに比べ、フルクトース+1時間待機の人が断食の約2倍、グルコース+1時間待機の人が断食の約5倍高かった…。
- 運動終了後の25分間の脂肪分解効果は、断食が一番だった…!フルクトース+1時間待機は、断食の60%程の効果だった…。グルコース+1時間待機は、断食の35%程の効果だった…。
つまり、空腹で運動した方がダイエット効果が高い…!ってことですね。
朝食前に運動した方が朝食後に運動するよりダイエット効果が高かった…!
2013年の筑波大学の研究によると、朝食前後の運動で脂肪燃焼効果に違いが出るのか24時間観察してみたそうです。
この研究は、若者の男性アスリート12人を対象に行ったとのことで、まず、
- 朝食を食べる前に運動を行う
- 朝食を食べた後に運動を行う
のどちらかを行ってもらったそうな。
因みに運動は各参加者のVO2maxの50%で行ってもらったそうで、時間は60分間だったとのこと。
結果、
- 運動中の60分間のカロリー消費量は同じぐらいだった…!
- 朝食に対する運動時間は、1日のカロリー消費量に影響を与えなかった…!
- 朝食前に運動を行った場合、消費カロリーの約33%が脂肪だった…!
- 朝食後に運動を行った場合、消費カロリーの約20%が脂肪だった…!
- 朝食後に運動を行った場合と比較して、朝食前に運動を行った場合は、脂肪燃焼効果が高く、炭水化物の吸収量もアップしていた…!
そうです。
サンプル数は少ないですが、とりあえずこの研究では、空腹状態で運動を行った方が良い…!って結果ですね。
ということで1日でみた場合、ダイエットに関しては空腹の方が有利…!って感じでした。
どうやらダイエットに於いて、短期的には空腹で運動は良い…!って感じみたい
2013年のノーザンブリア大学のRCT・クロスオーバーデザインによると、朝食有無からの運動有無によって、代謝や内分泌、食欲、カロリー摂取量、摂取栄養素に違いが出るのか調べてみたそうです。
この研究はノーザンブリア大学の学生&職員から健康な男性12名(平均年齢23.2歳、身長178.0cm、体重77.2kg、BMI24.5)が参加したそうで、まず始めに参加者全員に前日から飲食についての記録を付けてもらったそうな。その際合わせて、アルコールやカフェインの摂取、激しい運動も24時間前から禁止としたとのこと。また、前日の夜から断食もしてもらったらしい。
10~14時間断食後の実験当日、7時30分にラボに来てもらい血液を採取、続いて以下の4グループにランダムに振り分けたそうです。
- 朝食なし&運動なしグループ
- 朝食なし&運動ありグループ
- 朝食あり&運動なしグループ
- 朝食あり&運動ありグループ
ここで朝食ありなしの詳しい情報を挙げておくと、朝食ありグループのメニューはオートミールで具体的にはオーツ麦72gとミルク360mlで444kcal(タンパク質17%、炭水化物60%、脂肪23%、1859kJ)だったとのこと。朝食なしグループは水のみOKだったみたい。
朝食終了から120分間ゆっくりくつろいでもらった後、運動ありグループの人達には、事前にチェックしておいたカロリー消費量を基にpeak VO2の61%(≒全力の6割のパワー)で59分間トレッドミルで走ってもらったそうです。因みに運動なしグループは運動ありグループと同じ時間ゆっくりしてもらったそうです。
また運動終了後20分以内に4グループ全員に500mlのチョコレートミルク(358kcal:タンパク質18%、炭水化物63%、脂肪19%、1500kJ)を飲んでもらったそうです。
90分後、昼食を自由に食べてもらい実験終了とのことでした。昼食についてはミートソースパスタを食べてもらったみたいで、内訳はパスタ、トマトソース、チェダーチーズ、オリーブオイルとのこと。こちらは100g当たり205kcal(タンパク質14%、炭水化物52%、脂肪34%、859kJ)ってことでした。
ウォッシュアウト期間は7日以上を設定したそうで、全ての実験が終わった後にデータをまとめたところこんな結果になったそうです。
- 朝食の摂取は、食後の血糖値や安静時のインスリンを減少させる可能性が高かった…!
- 朝食なし&運動ありグループの場合は耐糖能に影響がなかった…!
- 朝食あり&運動ありグループの場合は耐糖能が低下した…!
- 朝食なし&運動ありグループは、朝食あり&運動ありグループに比べ、空腹感や食欲が大幅に低下していた…!
つまり、朝食なし&運動ありグループが最もダイエットに適していたと…。
注意点としては、1回の食事からしか調べていないので長期的にはどうなのかってのが分からないことですかね。
どうやらダイエットに於いて、短期的には空腹で運動は良い…!って感じみたいですね。
HIITで朝食ありなし+運動のダイエット効果を調べてみた…!
上記までは、短期の場合、朝食なし+運動が良い…!ってことだったんですがここから長期の場合を見ていきたいと思います。
この研究は、太りすぎ又は肥満体型の女性16名(平均年齢27±8歳、BMI=29±6)を対象に行われたそうで、まず以下の2グループ(1グループ8名)にランダムに分かれてもらったそうな。
- 運動→朝食グループ:前夜から断食状態のままで運動、約60分後に朝食を取った
- 朝食→運動グループ:運動の約60分前に朝食をとり、その後運動を行った
朝食のメニューは皆同じものを食べたそうで、エナジーバーやヨーグルト、オレンジジュースなんかだったそう。因みに439kcalで炭水化物74%、脂肪14%、タンパク質12%という普通な朝食だったみたい。
運動メニューについては、今回HIITを採用しておりまして、毎週月・水・金の週3日、午前7~10時の間で行ってもらったそうな。
詳しいHIITのメニューはこんな感じ。
- 3分間、ウォーミングアップとしてエアロバイクを50Wの抵抗でゆっくり漕いでもらう
- 60秒間、エアロバイクを最大心拍数の約90%(≒吐き気の出るレベル)で漕ぐ
- 60秒間、50Wの抵抗でゆっくり休みながらエアロバイクを漕ぐ
- 上記2,3を10回繰り返す…!
- 2分間、クールダウンを行う
つまり、合計25分間のHIITメニューってことですね。実際やれば分かりますが最後の方はきつすぎて、もはや漕いでるんだかなんなんだか分からんくなるほどヤバいです(笑)
6週間後に、体組成や筋肉、インスリンなんかを調べてみた結果、
とのこと。
体重は変わっていませんが、体の中では大きな変化が起きていますねー。やはりHIITのダイエット効果は素晴らしいの一言です。
んがしかし、ここに食事のありなしが関係ないってのは面白いですよね。短期の研究では関係あったのに6週間ともなると空腹時の運動のダイエット効果はなくなってしまうみたいです。
どうやらダイエットに於いて、長期的には空腹かどうかと運動は関係ないみたい
2014年のニューヨーク市立大学リーマン・カレッジの研究によると、一晩断食した後、有酸素運動を行うとダイエット効果が高い…!って話があるけど、これって本当なのか調べてみたそうです。この研究は、健康な若い女性20名(平均年齢22.4±2.8歳、身長163.4±4.7cm、体重62.2±6.5kg)を対象に行ったそうで、全員普段から週何日か定期的に有酸素運動を行っていたとのこと。因みにオフシーズンの大学陸上競技選手もいたらしい。
まず参加者には、少なくとも実験開始12時間前から激しい運動やアルコール、薬の使用を控えてもらいつつ、更に夕食を断食してもらったそうです。次の日の朝、皆にラボに来てもらい、スタート時の体重や身長、体組成、腹囲なんかを測定したそうな。
その後、全員を以下の2グループ(1グループ10名)にランダムに振り分けたそうです。
- 断食→運動→食事グループ
- 断食→食事→運動グループ
運動メニューは週3日1時間の有酸素運動をチョイスしたそうで詳しくはこんな感じ。
- 5分間、ウォームアップとして、最大心拍数の50%でトレッドミル(勾配0%)を走る
- 50分間、最大心拍数の70%でトレッドミル(勾配0%)を走る
- 5分間、クールダウンとして、最大心拍数の50%でトレッドミル(勾配0%)を走る
つまり、低~中程度の強度で走ってもらったってことですね。
またこの研究ではダイエットが成功するよう食事管理も徹底したみたいです。
まず痩せるための低カロリーが維持できるようにカロリー量を設定したそうでその時の公式がこんな感じ。
- 10×体重(kg)+6.25×身長(cm)–5×年齢–161=A
- A×1.5(適度な活動係数)=B
- B–500(kcal)=1日の摂取カロリー(kcal)
更に栄養面の偏りが起こらないよう、
- タンパク質摂取量を、体重(kg)×1.8gに設定
- タンパク質摂取量を決めたら、それを踏まえて1日のカロリー摂取量の25〜30%を脂肪に設定
- タンパク質と脂肪を除いた残りを炭水化物に設定
としたみたい。すごい綿密に組まれたダイエットですねー。
また個人的には1.6gを超える1.8g以上のタンパク質を基準にするなどプロテインレバレッジを採用している点も嬉しい感じ。
それと2グループの運動前後の食事に関しては、直前直後に特性シェイクを飲んでもらったみたい。特性シェイクは250kcal(炭水化物40g、タンパク質20g、脂肪0.5g)で、こちらも上記のカロリー計算に含まれていたそうな。
上記ダイエットプログラムを4週間行い、最後にデータを統計処理した結果、こんな感じになったとのこと。
- 断食→運動→食事グループは、1日の摂取カロリーが1236kcalだった。
- 断食→食事→運動グループは、1日の摂取カロリーが1277kcalだった。
- 体重は、グループ間の違いはなかった…。
- BMIは、グループ間の違いはなかった…。
- 体脂肪率は、グループ間の違いはなかった…。
- 腹囲は、グループ間の違いはなかった…。
- 脂肪量は、グループ間の違いはなかった…。
- 筋肉量は、グループ間の違いはなかった…。
2グループともスタートの時より体重や脂肪量がはっきりと減ってはいたんですが、グループ間の有意差はなかったみたいですね…。う~ん、残念…。
ということで、残念ながら長期的(1ヶ月以上)にみた場合は、ダイエット効果はどちらも同じという結果でした。
すきっ腹に運動で体脂肪が増えずに筋肉が増え耐糖能とインスリン感受性が改善した…!
2010年のルーヴェン・カトリック大学の研究によると、すきっ腹に運動は良いのか…?について調べてみたそうです。
具体的には空腹+運動と食事+運動で体重や耐糖能、インスリン感受性に違いが出るのかチェックしたとのこと。
この研究は18~25歳までの健康な男性28人を対象に行ったそうで、平均年齢は21.2±0.3歳、体重は71.5±1.9kgだったそうな。因みに実験中、1名が実験と関係のない病気でリタイアしたそうで、最終的なサンプル数は27人だったらしい。
まず参加者全員は実験開始の2週間前に、エアロバイクでVO2maxなどをチェックしつつ、更に4日間、食事記録もつけてもらったそうです。
その後、全員には以下のような高カロリー・高脂肪食を6週間摂り続けてもらったそうな。
- 高カロリー:1日当たり3000kcal、3500kcal、4000kcal、4500kcalという4つの異なるカロリーメニューをとってもらった。この食事メニューで、1日のカロリー摂取量がプラス30%以上増加した。
- 高脂肪食:各食事メニューの三大栄養素の割合は、脂肪約50%、炭水化物約40%、タンパク質約10%だった。
上記高カロリー・高脂肪食の食事を取ってもらいながら、参加者を以下の3グループにランダムに振り分けたそうです。
- 空腹+運動グループ:10人には、すきっ腹に運動してもらった。
- 食事+運動グループ:10人には、運動前と運動中に炭水化物を摂取してもらった。
- コントロールグループ:7人には、特に運動してもらわなかった。
ではここで、空腹+運動グループと食事+運動グループの詳細について見ていきましょう。
運動は週4日で行われたそうで、空腹+運動グループは全ての運動を空腹で行いました。それに対して、食事+運動グループは、運動の約90分前に炭水化物が豊富な朝食(675kcal、炭水化物70%、脂肪15%、タンパク質15%)を食べてもらったとのこと。
更に空腹+運動グループは運動中、1時間当たり500mlの水しか飲まなかったのですが、食事+運動グループは、1時間当たり500mlの特性ドリンクを飲んだそうです。このドリンクは、水+体重1kg当たり1gのマルトデキストリン(吸収率の良い炭水化物)というものだったみたい。
そして上記による1日当たりのカロリー摂取量のズレを合わせるため、空腹+運動グループには、朝食と特性ドリンクを午後半ばに食べたそうです。
週4日の運動は、必ず午前6:30~9:00の間に行われたそうで、週2日の60分間と週2日の90分間で構成されていたとのこと。因みに運動メニューはエアロバイクとランニングを組み合わせたものだったらしく、有酸素運動がメインだったみたいです。
実験終了後、集められたデータを統計処理した結果がこちら。
- コントロールグループの体重は3.0±0.8kg増加した…。
- 食事+運動グループの体重は1.4±0.4kg増加した…。
- 空腹+運動グループの体重は0.7±0.4kgと増加していなかった…!
- コントロールグループよりも食事+運動グループは耐糖能とインスリン感受性が良くなっていたが、空腹+運動グループは更に耐糖能とインスリン感受性が良くなっていた…!
- 食事+運動グループではみられなかったが、空腹+運動グループはコントロールグループよりも、筋肉成長スピードがアップした…!
どうやら、すきっ腹に運動は食事+運動よりも、体脂肪が増えずに筋肉が増え、耐糖能とインスリン感受性が改善するというアドバンテージがあるみたいですね。
この研究は、上記研究とスタイルが似ていて、男性20名が参加したものとなっております。
まず参加者は以下の2グループにランダムに振り分けたそうです。
- 空腹+運動グループ:10人
- 食事+運動グループ:10人
食事+運動グループには、運動前に炭水化物が豊富な朝食を取ってもらい、更に運動中にも炭水化物を摂取してもらったとのこと。運動については1回2時間の運動(VO2maxの70%ぐらい)を行ったそうです。
結果、
- 予備テストでは、運動によりeEF2のリン酸化(≒筋肉成長スピードがアップ)が約2倍増加した…!
- 本テストでは、食事+運動グループではeEF2のリン酸化が無効になった…。しかし、空腹+運動グループは無効化されなかった…!
とのこと。
つまり、空腹+運動グループは食事+運動グループよりも運動後、筋肉成長スピードがアップする…!ってことですね。
但し、これらはいずれも数週間での結果なので長くなっても同じ効果が得られるかは分かりません。
カロリー制限は確かに脂肪を積極的に使ってくれますが、一方で激しいカロリー制限を長期的に行うと、デメリットがメリットを上回る可能性も高そうです。ミネソタ飢餓実験然りでストレス(コルチゾール)もヤバそうですしね。
もちろん、栄養を補給しなければ筋肉の維持は厳しいですし、分解も進んじゃうんでやはり補給は必要でしょう。実際、上記実験でも朝食や運動前、運動中に補給しなかった部分を夕方に補給していますし。
それらを踏まえると、
- すきっ腹に運動は良いけど、その分の栄養は別で補給した方が良い
- 断食するにしてもプチ断食程度で抑えておきたい
- チートデイの導入などメリハリをつけた方が良さそう
って感じになるのではないでしょうか…?
いずれにしても1日の中で栄養補給はしっかりしておきたいですねー。
個人的考察
やはりポイントは1日のカロリー摂取量を低くして運動できるかが大事という当たり前な結論みたいですね。そういえば朝食べると痩せるのか?健康に良いのか?の記事でも、どっちでも良い…!って結論だったんで、これが真理なのかもしれませんね。
但し、食事なしの運動は痩せている人には有効な可能性もあります。つまり元から体脂肪が低い方が更に追い込みをかける場合には有効かもしれません。まぁ、そこまでする必要がある人は限られていると思いますし、個人的にはストレスとかヤバそうなんでおすすめしませんが…。