先週の続きです
予告通り、今回もセアラ連邦大学が発表したアンブレラレビューを見ていきます。
今回の研究は前回と対になるような研究でして、うつ病が寿命に及ぼす影響はどうなのかを調べた内容となっております。
丁度毎週記事にしている「知的障がい以外の障がいを持つ方の平均寿命は短いのか?」シリーズと内容が被っていますが、そこはご勘弁ください。
それでは早速見ていきましょうか。



うつ病を持つ方の平均寿命は短いのか…?

2018年のセアラ連邦大学の研究によると、うつ病を持つ方の平均寿命は短いのかアンブレラレビューを行ってみたそうです。
そもそもうつ病(大うつ病)は慢性的且つ再発性のある精神疾患でして、2011年のニューヨーク州立大学ストーニーブルック校などの研究2013年のハーバード大学の研究によると、生涯における発症リスクは高所得国で14.6%、低中所得国で11.1%と推定されるんだとか。また、うつ病は糖尿病や肥満、脳卒中、急性心筋梗塞、認知症などといった健康状態になると発症リスクが高くなってしまうみたい。更にその逆もあり得そうでして、因果関係が不明ながら、寿命に影響を及ぼしそうな感じなんですよね。
そんな精神障害の寿命研究の歴史は意外と古く、1851年の研究1952年の研究ってのがあるそうで150年以上にわたって調べられてきた分野とのこと。また最近では系統的レビューやメタ分析もいくつか発表されているんだとか。そこで今回研究者たちは、これらのデータを統合し、うつ病と全死亡率・原因別の死亡率についてアンブレラレビューを行ってみることにしたそうです。
まず最初に2018年1月20日までに発表された該当する観察研究の系統的レビューやメタ分析をPubMed(MEDLINE)、EMBASE、PsycINFOといったデータベースで検索してみたそうな。すると4,983件もの研究がヒットしたらしい。続いてこの中から質の高い研究を選んでいったそうで、最終的に26件の研究が基準を満たしていたんだとか。因みにこの26件の研究には17件のメタ分析が含まれていたみたい。
それでは次に研究の特徴を見てみましょう。

  • アンブレラレビューで選ばれた研究のオリジナル研究の合計は246件だった。
  • 246件中238件は前向きコホート研究だった。
  • 246件中8件は後ろ向きコホート研究だった。
  • 総サンプル数は3,825,380人だった。
  • そのうち、うつ病の参加者は293,073人だった。
  • そのうち、亡くなった参加者は282,732人だった。

うつ病と平均寿命の関係を調べた研究としては超大規模と言えるでしょう。さすがアンブレラレビュー。
それでは気になる結果を見てみましょう。

  • 17件のメタ分析を全てチェックしたが、うつ病が寿命を短くする説得力のあるエビデンスは1つもなかった。
  • がん患者、急性心筋梗塞後の患者、心不全患者、これらにプラスして入院・外来・地域やプライマリケアの人における、うつ病と全死亡率との関係は、非常に有り得そうなエビデンスだった。
  • 冠状動脈性心疾患の患者、糖尿病患者における、うつ病と全死亡率との関係は、有り得そうなエビデンスだった。
  • その他は弱いエビデンスだった。

どうやらなんらかの病気と精神障がいがセットになって寿命が短くなるみたいですね。
これについて研究者曰く、

  • うつ病が全死亡率と原因別の死亡率に及ぼす因果関係は証明されていないが、今回のアンブレラレビューによれば、うつ病によって死亡率が低下するとは予想されないだろう

とのこと。
観察研究がベースなんで因果関係は不明なものの、少なくともうつ病で死亡率が低下することはないみたいです。



個人的考察

鶏が先か卵が先かは分からないですが、とりあえず糖尿病や肥満対策など出来ることから始めておいても良いかもしれませんね。



参考文献