一昨日の続きです
今回は更に他の心理的要因を探っていきます。



ほとんどの人は実際よりも激しい運動をしていると思いがち…!

2014年のヨーク大学の研究によると、主観的な運動強度が実際の強度とどれぐらい合っているのか調べてみたそうです。
この研究は18~64歳の成人男女129人(男性39人、女性90人)が参加したもので、参加者はランダムに軽度、中程度、高強度だと自分が思う速さでトレッドミルの上を歩いたり走ったりしてもらったと言うもの。因みに軽度、中程度、高強度といった3つの運動強度の説明(定義)は以下だったんだとか。

  1. 軽度:体が温かいと感じ始め、呼吸がわずかに増加するぐらい(最大心拍数の50~63%)
  2. 中程度:体が温かくなり、呼吸も大きく増加するぐらい(最大心拍数の64~76%)
  3. 高強度:体がかなり温かい感じで、息も切れた状態ぐらい(最大心拍数の77~93%)

因みに参加者は心拍数モニターを付けた状態で各強度の速度を2~3分間歩いたり走ったりしたそうな。次に健康上のメリットが得られそうな速度を主観で捉えて3分間歩いたらしい。
最後に集まったデータを統計処理したそうです。これで主観的な運動強度(軽度、中程度、高強度)が実際の運動強度と合っているのか分かりますな。因みに性別や人種、年齢やBMIによっても違いが出るのかもチェックしたとのことでした。では結果を見てみましょう。
まずは参加者全体の主観的な運動強度の照らし合わせからです。

  • 軽度:主観は最大心拍数の51.5±8.3だった。最大心拍数の50~63%からみて、正しく判断できていた…!
  • 中程度:主観は最大心拍数の58.7±10.7だった。最大心拍数の64~76%からみて、低く判断していた…!
  • 高強度:主観は最大心拍数の69.9±11.9だった。最大心拍数の77~93%からみて、低く判断していた…!
  • 健康上のメリットが得られそうな速度の主観は最大心拍数の57.4±10.5だった。中程度の最大心拍数は64~76%なので低く判断していた…!

どうやら軽度は正しく判断できるけど、中程度や高強度は実際もっと高いレベルなのに低く思っているみたいですな。
また若者と中年~高齢者での健康上のメリットが得られそうな速度の主観は違いまして、

  • 若者:最大心拍数の56.6±9.4
  • 中年~高齢者:最大心拍数の59.5±13.5

って感じだったんですよ。
つまり若者の方がより低く見積もっていたってことですな(まぁ、それでも中高年でも低く見積もっていたんですが)。因みに性別や人種、BMIによっての違いはなかったそうです。
まとめると、

  • ほとんどの人は楽なペースでの運動を正確に見積もることができる…!
  • しかし普通や激しいペースでの運動を正確に見積もることができない…!
  • つまり、軽度を除き、ほとんどの人は実際よりも激しい運動をしていると思っている…!

って言うことになりましょう。
運動でのカロリー消費は皆が思っているほど多くないのに、更に実際自分が行ったダイエットの見積もりが甘くて、思っている以上に全然運動していないとなれば、これは痩せないのも無理からぬ話ですな。



個人的考察

この「いっぱい運動した…!」っていう過大評価(バイアス・思い込み)は、初心者のマラソン選手に特に起こりがちだそうです。例えば、ランニングを週7日で中~高強度のペースで走っている人はほとんどいないでしょう。マラソンは長距離走なんで自ずと全力を出すシーンは少なく、結果、強度は下がってしまうんですな。そして大体の方は週3~4日のランニングをしていると言います。しかし一方で、週3~4日でジムに通い、走ったり筋トレしたりする人は全然珍しくありません。
これらを見ても、運動でダイエットやランニングでダイエットが如何にムリゲーか分かるかと。
では運動やランニングはやらない方が良いのか…?ってことで来週に続きます



参考文献