心理学でウォルター・ミシェル教授の「マシュマロ・テスト」と言えば、知らない人はいないぐらい有名でしょう(追試であやしい結果も出ていますが)
ということで、今回は、「マシュマロ・テスト」の復習を一緒にしていきましょう…!



ウォルター・ミシェル教授の「マシュマロ・テスト」ってなに…?

以前はコロラド大学やスタンフォード大学の教授であって、その後、コロンビア大学の教授になったウォルター・ミシェル教授の名著「マシュマロ・テスト 成功する子・しない子」には、かの有名なマシュマロ・テストが一般向けに分かりやすく載っております。
マシュマロ・テストは1970年頃からミシェル教授によって行われたセルフコントロール実験のことを言います。
例えば、

  • 1970年の研究によると、保育園に通う3歳6ヶ月~5歳8ヶ月(中央値=4歳6ヶ月)の子ども32人(男の子16人と女の子16人)を対象にしたマシュマロ・テストを行った。
  • 1972年の研究によると、保育園に通う3歳6ヶ月~5歳6ヶ月(平均年齢=4歳6ヶ月)の子ども50人(男の子25人と女の子25人)を対象にしたマシュマロ・テストを行った。

などがございます。
んで、マシュマロ・テストの実験概要はこんな感じ。

  1. 研究者と子どもが部屋に入る。
  2. 子どもにイスに座ってもらう。
  3. おもちゃで遊んでもらう。
  4. おもちゃを段ボールに入れ、子どもの見えないところに置く。
  5. 子どもの目の前に1つのマシュマロを置く(注:マシュマロ以外にもプレッツェルや動物のクッキーなんかでも調べた)
  6. 研究者が子どもに「部屋を出る用事が出来たが、マシュマロを食べずに15分間我慢することが出来たら更にもう1個マシュマロをあげるよ」と言って部屋を出る。
  7. 子どもがマシュマロを食べちゃうまでの様子を観察しつつ、時間も測定する。

つまり、目先の誘惑にどれだけ耐えられるか、長期的な利益を考えられるかを子どもで調べた研究となります。
因みに実際にマシュマロ・テストを行って、子どもが待っている様子はこんな感じ。




マシュマロの匂いを嗅ぐ子、じっと見つめる子、触って感触を確かめる子、必死にマシュマロを見ないようにする子、スタート時から食べちゃう子など、必死にマシュマロの誘惑から逃れようとしているのがなんともかわいいですねー。

最後に実験に参加した子ども達が、その後どういう大人になるのかをず~っと追跡調査しました。その間なんと半世紀でして、かな~り長期間にわたって調べております。
結果、子ども時代(3歳半~5歳半の時)に、マシュマロを我慢できた子ども(=セルフコントロールが高かった子ども)程、


といった感じだったそう。
この結果からミシェル教授は、セルフコントロールは長期的な目標を達成するのに必須であり、また、思いやりがあり、他人との信頼関係を気付く為に必要な克己心や共感を育てるのにも必須だとしています。更にEQ(心の知能指数)にも必須とのこと。
つまり、セルフコントロールの高さ人生がイージーモードかハードモードかが決まる…!ってことですね。

この、マシュマロ・テストでセルフコントロールの高さが分かり、子ども時代のセルフコントロールで人生が成功するかが分かる…!というセンセーショナルな結果は、その後のセルフコントロール研究に多大な影響をもたらします。
例えば、


と言った感じです。
ミシェル教授のマシュマロ・テストから今日のセルフコントロール=誠実性=人生の成功=人生イージーモードの必須スキルという公式が出来上がっていくわけですな。



ホットに考える…!クールに考える…!

本書では、セルフコントロールを扱う上で、ホットな情動システムとクールな認知システムを理解し、適切に考える力を身に付ける必要があると書かれております。
まず、ホットな情動システムとクールな認知システムとは何か見ていきましょう。


また、ホットな情動システムとクールな認知システムは反比例の関係にあり、片方が上がるともう片方は下がる傾向にあるんだとか。
そして、マシュマロ・テストでの誘惑の対象物が、マシュマロ以外のプレッツェルや動物のクッキーを使ってもOKだった通り、マシュマロそのものにこだわった話ではなく、実際にその物(こと)に対して、脳がどう判断するかによって、発動度合が変わるみたい。因みにマシュマロ・テストの際にマシュマロを雲だと思うよう必死に考えた子どもは我慢できる時間が延びたらしい。要は捉え方一つでセルフコントロールの働き方が変わるってことですね。
実際、捉え方を変えるこの方法は、前頭前野が活性化し、ホットな情動システムが下がってクールな認知システムが上がるみたい。この辺は認知行動療法にも通ずる話ですね。

しかし、クールな認知システムが上手く働かない状態ってのがあるとのこと。それは慢性ストレスがある状態ということで、なんでも、ストレスがあるとそちらに認知のキャパシティを使ってしまうみたいで、心や体に気を回す余裕がないみたい。更に恐ろしいのはその状態が長く続くと麻痺してしまうみたいで、実際、親からアレコレ言われまくった子どもは、慢性ストレス状態の為、クールな認知システムが上手く発動しなかったそうな。つまり、自由度が少なく、強制的で支配的、親の元の指示のみでしか動けない環境であればあるほど、セルフコントロールが低いみたい。

逆に自由度が高く、子どもの意思を尊重した教育過程の子ども達は、自然と問題解決スキルなどがアップし、セルフコントロールも成長していくみたい。
う~ん。この当たりを見ると、子どもは自分で自分の成長に必要な事を知っているみたいなんで、下手に口を出さずに見守るのが良さそうですねー。まぁ、本当にダメな事や危険な事はしっかり注意をすべきなのは当然ですが…。



ホットな情動システムとクールな認知システムを上手く扱うにはどうすべきか…?

では、ホットな情動システムとクールな認知システムを上手く扱うにはどうすればいいのでしょうか…?
ミシェル教授によれば、自制心を働かせ、誘惑に打ち勝つためには、if-thenプランニングが効果的だということです。ホットな情動システムは、本能により瞬間的に湧き出る感情の為、これに負けずに素早くオートでクールな認知システムを発動させるには、前もって行動を決めておくif-thenプランニングが非常に良いみたい。これは分かりますね~。
更にマシュマロ・テストで長時間マシュマロの誘惑に耐えられた子ども達の共通点があったそうな。


上記を行うことによってクールな認知システムの発動がより効率的に行えると言えるみたいです。

この他にもホットな情動システムを上手く扱うために自分のホットスポットを見つけておくと良いそうな。ホットスポットとは、文字から想像できる通り、ホットな情動システムが発動しやすい状況のことを言います。つまり、ストレスを感じ瞬間的に感情が爆発してしまうポイントってことですね。
このホットスポットは実験によれば、

  • 子どもAは、友だちから仲間外れにされ怒ってしまった
  • 子どもBは、他の子どものなれなれしい態度に怒ってしまった

と言った感じで、当然ながら人によって違うので、あらかじめそれを知っておくことによって、ホットな情動システムの発動を回避、又は発動をすぐさま察知して対応ということが可能になります。
具体的にはエクスプレッシブライティングログ(記録・日記)を取って自分のホットスポットを知り、if-thenプランニングに落とし込むことによって、素早くクールな認知システムを発動できるようにすると良いみたい。



個人的考察

ホットな情動システムを上手く対処しつつ、クールな認知システムを上手く発動できるようになるということは、メタ認知的視点(客観的視点)を持つということになりますんで、ネガティブになりづらく、また、共感力も高いとも言えます。そのため、改めて万能スキルであるセルフコントロールを日々高めるために努力しようと思いました。
でも子どもに限った話だし、子ども時代で決まっちゃう話なんでしょ…?と思った方は、ミシェル教授の言葉をどうぞ。

  • 子どもでも大人でもセルフコントロールを育てることは可能である。実際、前頭前野を意識して使うことによって、クールな認知システムが活性化し、ホットな情動システムを制御することは可能である。



参考文献