【加筆内容】知的障がいの方が運動を続けるには何がポイントなのか?
これまで知的障がいの方やダウン症の方の運動について様々な視点から研究を見てきました。
ざっくり結論をまとめると、障がいの有無に関わらず同じように運動効果は得られる…!って感じでして、やはり定期的な運動はした方が良さげです。
んがしかし、運動を続けるのはかな~り難しいのは周知の事実…。
知的障がいの方が運動を続けるには何がポイントなのか…?
2023年のノーステキサス大学の研究によると、知的障がいの方が運動を続けるには何がポイントなのか…?について調べてみたそうです。
この研究は、2011年のユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究で考えられたCOM-Bモデルっていう行動を理解するためのフレームワークを使ったものでして、
- C:Capability=能力
- O:Opportunity=機会
- M:Motivation=モチベーション
っていう3つの要素から行動(B=Behavior)に影響を与えるよ~って感じとなっております。
んで、今回のケースにこのCOM-Bモデルを当てはめてみると、
- 能力:身体的にも心理的にも実行可能かどうか
- 機会:運動を行える又は運動を促す外的要因があるかどうか
- モチベーション:運動したい又は運動する必要があると思えるかどうか
となります。
参加者はアメリカ南部に住む知的障がいや発達障がいを持った成人でして、全員DSM-5で診断を受けている方々。サンプル数は27歳から50歳までの11人となっており、男性5人、女性6人って内訳です。この参加者たちの障がい特性に十分に配慮しつつ調査してみたそうな。
具体的には、
- フィールド調査:参加者がフィットネスを行っているときの様子をビデオに録画した。その際、本人だけでなく、フィットネス仲間やインストラクターも撮影した。併せて聞き取り時に使う写真も撮影した。
- 聞き取り調査:個人から直接話を聞いて、何が運動を促進し何が妨げているのか、運動を継続するモチベーションや運動中に必要なサポートは何なのかを調査した。
のようになっておりました。
特に聞き取り調査時の障がい特性への配慮した質問方法が良い感じでして、
- 簡単な言葉で質問した
- 質問は短文にした
- 考えるための十分な時間を用意した(5秒以上は用意した)
- 安全だと感じる場所で聞き取りした
- 質問の回答が間違いないか復唱して確認した
- フォローアップクエスチョンをした
- フィールド調査の際の写真を使用しつつ話した
といった工夫をしたらしい。
モニタリングやアセスメント取りで使えそう…。
最後に質問の回答データを集計した結果、運動を続けるポイントは以下だったそうです。
- 交通手段がある又はサポートがある:交通手段やそのサポートがあるかどうかは障がいのある方の自立の障壁として最も頻繁に挙げられるポイント。運動にとってもそれは同じで、多くの参加者はフィットネスクラブに連れて行ってくれる支援者頼みだったそうな。またそのサポートがなければ、フィットネスクラブに参加出来ないとも言っていたそう。そのため、公共交通機関でアクセスしやすいフィットネスセンターがあると良さそう。
- 様々な運動の機会があると良い:例えば今回の実験では、ウォーキングやウェイトリフティング、ランニング、グループで行うスポーツゲームなど、多種多様な運動方法を提供していたんだとか。いろんなスポーツを行う機会に触れたり、実際に行ったりすることも重要なポイントとのこと。
- 人との触れ合いが大事:参加者はインストラクターや一緒に運動する仲間、家族など様々な方にサポートされている感じがしたと答えており、それが毎週フィットネスクラブを楽しみにしている理由だと答えていたそうな。確かに友達や仲間ってのは大事ですし、それが習慣化する大きなポイントになるのも事実なんで納得ですね。
またCOM-Bモデルの視点からも見てみると、
- 自分の能力と機会は、両方とも運動に参加する為のモチベーションにつながっていた…!
- 例えば「自分で運動が実行可能だと良いですね。もっとフィットネスクラブに来たくなります」と答えていた…!
- 他にも「インストラクターの○○さんは私のお気に入りなので今では週2回来ています。もっと来たいです」と答えていた…!
そうです。
つまり自分でできる運動があり、それを行う環境や声掛けがあるとモチベがアップし、実際に運動する(行動する)と。やっぱ運動でも環境整備が大事みたいですな。
最後にポイントとして挙がっていたのは、
- 運動した時の話で盛り上がれる環境や小道具があると良い…!
ということです。
なんでも参加者たちは自分の運動している写真について語り合うのが楽しかったようで、例えば1人はインストラクターと歩いている自分の写真について説明し、その時の詳細やインストラクターがどのように運動を楽しい物と感じさせてくれたかを話してくれたそうな。でも、最初は運動について特に何も話すことはないと答えていたそうなんですよね。
つまり、写真という当時を思い出せる小道具を用意することで、知的障がいや発達障がいのある方は、より当時の話しをしてくれるみたいなんですよ。この辺も個別支援計画作成の為のモニタリング時に使えそうなテクニックですな。
個人的考察
これらをみると、運動の習慣化についても障がいの有無って関係ないな~と思いました。
強いて違いを上げるとするならば、支援者やサポートがより充実している方が良いというところでしょう。