良いアイディアが浮かぶような方法としてジュガード・イノベーションEUREKA(エウレカ・ユーリカ)についてご紹介してきた当ブログ。
今回はそもそもアイディアが出ないとき脳内では何が起こっているのかを調べた研究をご紹介しつつ、色々なクリエイティブ性アップの方法を見ていきたいと思います。



良いアイディアが出ないとき脳内はどうなっているのか…?

2015年のスタンフォード大学の研究によると、健康な成人の男女30人(男性14人、女性16人、平均年齢28.77歳、平均IQ120)を対象にして、創造性をチェックしながらfMRIで脳内を見てみたそうです。
具体的には、参加者に単語推測ゲームを行ってもらいつつ、小脳、視床、頭頂葉を観察したらしい。因みに単語推測ゲームってのは、言われた単語を書きつつ、対義語なんかを書いてもらうみたいな感じだったそうな。
んで、分かったことが、

  • 小脳が活発であればあるほど、クリエイティブ性が高かった…!

とのこと。
小脳は、主に身体の運動機能を調節していまして、全身の筋や腱からの指令で筋肉運動をコントロールしたり、平衡感覚を保つのに役立っております。
しかし、今回は、運動機能だけではなく、良いアイディアが浮かぶかどうかにも関わっている可能性があることが分かったんですよねー。すごい…!

因みに研究者によれば、小脳は他の脳内エリアとの調整役として動いている可能性が高く、大脳がスピーディーに動けるよう補佐しているみたいです。また、意識したものが小脳で無意識のうちに精査、処理され、大脳の負担を減らし、効率をアップしている様子とのこと。
更に、良いアイディアを浮かばせよう…!と頑張ると普通、あんまり上手くいかないけど、これは大脳が動いちゃうからで、大脳がお休みしてくれると、良いアイディアってのは浮かびやすくなるみたい
だから、頑張れば頑張るほど、ドツボにはまって全然良いアイディアが思い浮かばなくなっちゃうんですねー。
アイディアを練る時、脳内ではこんなことが起きていたなんて面白い…!

大脳さんが休んでいると良いアイディアが出やすいってことで、これを踏まえるとリラックス状態の方が良いアイディアが浮かびやすいのも納得ですね。
では次に色々なクリエイティブ性アップの方法を見ていきたいと思います



シャワー効果ってなに…?

まず最初に紹介したいのがシャワー効果についてです。
皆さんは、アイディアが思いつかんときはシャワーを浴びよう…!みたいな話を聞いたことがございませんか…?
これは「シャワー効果」を狙ったもので、シャワーを浴びると、心も体もリラックスし、クリエイティブ性がアップすると言われているんですな。
例えば2014年の研究によると、最もアイディアが浮かびやすい時はシャワー中(72%!)だったって話がございます。理由はシャワー中=リラックス=余裕がある=アイディアが思いつくって感じみたい。
難点としてはシャワー中はすぐメモが取れないことです。アイディアは夢と一緒ですぐ消えてしまうのですぐメモできる状況にしておくのが良いかもしれません。
ではここからさらにシャワー効果の研究を見て深掘りしていきましょう…!



シャワー効果って本当にあるのか…?

2015年のチャールズ・スタート大学の研究によると、シャワー効果って本当にあるのか調べてみたそうです。
例えば、有名な科学者や発明家の伝記なんかにはシャワー中に閃いた…!って話があるけど、あれって一般人でもあり得るのかを調べたのが今回の研究になります。
まず研究者たちは、普段、ふとした瞬間に閃くことがあるか…?について、オンラインを通じて1,114名の方々に質問したそうな。結果8割の方が、ある…!と答えたとのこと。
次にその8割の方々が、どのような人たちで、どのような場面で閃いたのかを自由形式で質問してみたらしい。
すると8割のひらめきが起きる人たちは、

  1. 女性
  2. 若者
  3. 高学歴
  4. 経営者
  5. 科学者
  6. 芸術家
  7. サービス業

といった7種類の人たちや仕事に就いていることが多かったそうです。
次にどのような場面で閃いたかですが、多かったのが

  1. 仕事中
  2. シャワー中
  3. 自宅にいる時
  4. 静かな場所にいる時
  5. 交通機関を利用している時(バスとか電車の中とか)
  6. 運動中
  7. 自然の中にいる時

だったとのこと。
この8つの場面でエウレカ(ユーリカ)が起きていたみたい。
因みに交通機関を利用している時(13%)や運動中(11%)に比べ、圧倒的にシャワー中(30%)のひらめき率が高かったらしい。どうやらシャワー効果は間違いなくありそうですし、一般人でも起きるみたいですねー。
では、ひらめきが起きる(エウレカ・ユーリカが起きる)条件のポイントは何なのか…?ってことでその辺も研究者はまとめてくれております。
んでその気になるポイントは、

  • 答えは潜在意識にすでにあるので考えないようにする…!

ってのだったらしい。
更に8割の方に、ひらめきについて伝えたいことはありますか…?と質問してみたそうで、結果、

  • 年齢が上がるにつれてひらめきはアップするよー
  • 問題の詳細を分析するのはとてもひらめきにとって重要だよー
  • 意外な解決策の場合が多いよー

という3つの事を言う方が多かったそうです。
どうやらシャワー効果はありそうですし、アイディアが出やすい環境整備、コツのヒントもありましたね。



シャワー効果のポイントは「適度に魅力的な行動」であるから…!

2022年のバージニア大学の研究によると、シャワー効果でエウレカが起きる理由はマインドワンダリングなのは分かるけど、どのような心ここにあらずな事をしても起きるのか…?について調べてみたそうです。
まずシャワーを浴びているときや適度な運動(散歩やウォーキングなど)をしているときに良いアイディアってのは浮かびやすいですよね。これはなぜかと言うと、マインドワンダリング(心ここにあらず)の状態だからってのが大きいと言われております。
ではどんなことでもマインドワンダリングさえなれりゃ~良いんか…?って疑問が湧いたみたいです。
ここについては研究者曰く、

  • 例えば、問題に行き詰まったとしよう。あなたはどうするか…?たぶん、絵の具が乾くのを、ただじーっと見て待つような気の遠くなる、退屈なことはしないだろう。代わりに散歩やガーデニング、シャワーを浴びたりといった、自分自身が満足できる何かをするはずだ。このような行動は全て、適度に魅力的な行動である

とのこと。
つまり、シャワーやウォーキングは適度に魅力的な行動によるマインドワンダリングだから創造性がアップしている…!ってことですね。う~ん。面白い視点ですな。
ではこの仮説が本当なのか…?ってことで研究者は以下の実験を行ってみたそうです。
どんな実験だったかと言いますと、まず、参加者全員にレンガ又はペーパークリップの別の使い方を考えてくださいと伝えたそうです(余談ですが、レンガの別の使い方を考えるってのは創造性実験でかな~り良く使われる手法です)
次に参加者を以下の2グループに分けたそうです。

  1. 退屈なビデオグループ:3分間、退屈でつまらん映像を観た。具体的には男性2名がただ洗濯物を畳んでいるだけの動画(想像するとかなりシュールですな)
  2. 魅力的なビデオグループ:3分間、ちょっと魅力的な映像を観た。具体的には1989年の映画「When Harry Met Sally...」のワンシーンを観た。

上記のどちらかの動画をみつつ思いついたアイディアに基づいて、レンガ又はペーパークリップの別の使い方を書き出してもらったらしい。
最後に参加者全員に、動画の視聴中、自分がどれだけマインドワンダリング状態になったか…?についても聞いてみたんだそうな。
んで結果は、

  • マインドワンダリングは確かにクリエイティブなアイディアにつながる現象だった…!
  • しかし、クリエイティブなアイディアにつながるのは魅力的なビデオグループだけだった…!
  • 退屈なビデオグループは、より多くのアイディアや意味的に離れたアイディアを思いついていたが、これらの効果はマインドワンダリングとは無関係だった…!

そうです。
この結果に研究者曰く、

  • 人はシャワーを浴びたり、散歩をしているときなど、適度に魅力的な行動をしているときに、しばしば創造的なアイディアを生み出すようだ

とのこと。
つまり適度に魅力的な行動をしているときマインドワンダリングが起こり、良いアイディアが思いつく…!ってことですね。

上記の研究で出てきたひらめきの起きた場面である、シャワー中や自宅にいる時、交通機関を利用している時、運動中、自然の中にいる時などは、なるほど確かに「適度に魅力的な行動」をしているときに該当していますな。
となると、ここがマインドワンダリングに入りやすいポイントと言えますね。つまり、意図的にマインドワンダリングを発動させようとするなら、「適度に魅力的な行動」を抑えておくと良さそうな感じです。
また個人的に思ったのが、上記の結果を踏まえるとシャワー効果ってのはシャワーでなくても、例えば湯船に浸かっていても同様の効果を得られそうだなーということ。現に私も、湯船で何をしたらいいのか色々試した結果、わざとマインドワンダリングを行うことをしていますし…。しかも結構良いアイディアが思いつくんですよね~。他にもトレッドミルで毎日歩いているとき、ふと良いアイディアが思いつくときがあるんで、上記の結果・ポイントには非常に納得いくものがありました。
皆様も良いアイディアが欲しいときは、シャワー効果を使ったり、適度に魅力的な行動をしてわざとマインドワンダリング状態になることを目指してみてはどうでしょうか…?



良いアイディアの20%が仕事以外のことをしているときや思いついたアイディアと関係ないことをしているときにひらめいていた…!

2019年のカリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究によると、良いアイディアがひらめく頻度やタスク中に生まれるアイディアの質の違いについて調べてみたそうです。
この研究は98人のプロの作家と87人の物理学者に協力をお願いしたもので、参加者全員にその日思いついたアイディアの中で最もクリエイティブだったものを毎日記録してもらいつつ、

  • そのアイディアが浮かんだ時に、何を考えていたか…?
  • そのアイディアが浮かんだ時に、何をしていたか…?
  • そのアイディアが浮かんだ時に、ひらめいた…!と感じたか…?
  • 思いついたアイディアの質はどうか…?

なども記録してもらったらしい。
最後に集まった記録データを見比べた結果、

  • アイディアのほとんどは職場で思いついていた。
  • しかし、その日で最もクリエイティブだと思ったアイディアの5分の1は、タスクと関係ないことをしていた時だった…!

とのこと。
良いアイディアの20%が、皿洗いやシャワーを浴びているときなど、仕事以外のことをしているときや、思いついたアイディアと関係ないことをしているときにひらめいていたみたいですね。

今回の研究結果も「適度に魅力的な行動」と重なる部分があるのではないでしょうか…?
やはりこの辺がエウレカ発動のキーのようですな。



ブルートシンク法

ブルートシンク法とは関係ない物を組み合わせて新しいアイディアを作る方法です。
例えば辞書から単語を3つだして何か作れないか考えるみたいな感じ。実践で扱うのなら単語を選んだ後にやりたいこと、やっていること、問題点を加えていくと良いアイディアや解決方法が浮かぶかもしれません。要はアイディアは論理的ではない刺激を与える(入れていく)と生まれやすいってことですね。



デスクを散らかす

2013年のミネソタ大学の研究によると散らかったデスクはクリエイティブ性をアップする効果があったんだとか。しかし一方で性格をだらしなくするデメリットがあるので注意が必要そうです。
アイディアを思いつきたいとき限定でデスクを散らかした状態で考えると良いかもしれません。



あえて注意力を散漫にする

カリフォルニア大学の研究によると注意力が散漫だとクリエイティブ性がアップするそうです。散らかしたデスクもそうですが、とにかく注意力を散漫にできる状況で考えるのが良いみたい。図書館よりファミレスで考えるのが良いってことですね(笑)



ボーッとする

ある実験によると忙しいとアイディアが出てこないみたい。つまりボーッとするのが大事みたいです。となると暇な時間が大事ということになります。仕事で余裕を作らないとアイディアは出てこないよ~ってことですね。



好きな音楽を聴く

アイディアを思いつくには拡散的思考が必要…!ってことで、好きな音楽を聴くのもオススメです。



人間観察が好きな人をチームに入れる

クリエイティブな人たちは人間観察が好きなんだそうです。そのため、そういった人をチームに入れたり事前に声掛けしておくのもありかもしれません。



個人で考える

集団より個人の方がアイディアがでてきやすいみたいです。よくあるのが会議中にアイディアを考えて結論を出すってパターンですが、あれはダメで実際お通夜みたくなったり、ある一部の人だけ発言して終わるってパターンになってしまいますよね。
実は会議は始まる前までが大事で、始まる前までにそれぞれがどれだけアイディアを思いついて会議に臨めるのかがポイントになります。要は会議はそれをまとめるだけでアイディアを考える場ではないんですよね。祭りの準備や遠足の準備が大事ってのに似ているかも(笑)

つまり、会議の主催者、司会者は事前にアイディアを個人で考えてもらえるよう声掛けが必要になります。その時チームに不安のメリットを活かしている人がいると貴重な戦力となります。また、ポジティブな人も戦力となりますので、そういった方たちには特にあらかじめ声をかけておき、アイディアを考えてもらうようにしておくと会議が良いアイディアで満ちて、結果、良い会議となる可能性が高まります。

アイディアにはチーム作りやチームワークも必須です。
良いチームを作りたい…!良いチームワークはどうやって作るの…?ってのが気になる方は下記をご覧ください。




クリエイティブポーズをとる

良いアイディアを思いつきたい、つまり、クリエイティブになりたいならクリエイティブポーズを覚えておくのが良いそうです。クリエイティブポーズとは以前に良いアイディアが思いついた時のポーズのこと。例えば、腕を組むとか考えるポーズなどですね。クリエイティブポーズを覚えておくことにより身体化された認知が働き、同様に思いつく可能性が高まるんだとか。これは覚えておきたいですね~。
更に良いアイディアが思いついた時の状況、場所、聞いていた音楽などなるべく詳細に覚えておくと尚良しです。再現すればするほどクリエイティブ性も比例して高まる様子。この当たりは場所で覚える記憶の宮殿に近い物を感じますね。



自己イメージを色々考えるとクリエイティブ性がアップする…!

2015年のシカゴ大学の研究によると、自己イメージを色々考えるとクリエイティブ性がアップするそうです。
具体的には自分の様々なアイデンティティ、例えば、

  • 人種
  • 家族
  • 仕事
  • 趣味

などなどのイメージを持ちながら物事を考えると良いみたい。
つまり、多様なキャラ視点の自分を脳内にいくつも作って脳内会議すると、色々な視点からクリエイティブ性がアップする…!みたいな感じですね。
これはなんだか分かる話で、様々な角度から考えて行く…!ってのは、昨日ご紹介した広い感覚に近い物がありますし、一人で考えた方がブレインストーミング(普通の集団会議)よりも良いアイディアが出る…!って話もありますんで納得の結果かと…。
ということで、良いアイディアが欲しいときは、自分のアイデンティティごとにキャラ分けし、脳内会議をしてみてはどうでしょうか…?



創造性を働かせアイディアを求めているとき人は目が動きまくってまばたきも増える…!

2015年のミラノ・ビコッカ大学の研究によると、目の動きとまばたきをチェックして創造性との関係を調べてみたそうです。
この研究は、ノースウェスタン大学の学生38名(平均年齢20.12±3.04歳、女性22名、男性16名)が参加したそうで、モニターの画面を見ながら、単語問題を答えてもらったそうです。
因みに単語問題ってのは、同時に3つの単語を提示して共通点を答えるみたいなものだったそうな。
例としては、

  • カニ・マツ・ソース
  • クラブアップル・パイナップル・アップルソース

ってのが表示されて、それの共通点を15秒以内に答えるって感じだったらしい。
また、回答を導く際に、考えて答えたか(分析的解決)…?パッと思いついて答えたか(ひらめき的解決)…?も聞いたんだそうな。同時に目の動きとまばたきもチェックしたとのこと。
結果、

  • ひらめき的解決(2秒)をしたときは分析的解決(4秒以上で回答)をしたときに比べて、まばたきの回数が多くなった…!問題から目をそらすことも多くなった…!

そうです。
創造性を働かせアイディアを求めているとき、人は目が動きまくって、まばたきも増えるみたいですね~。逆にじっくり考えて集中しているとき、人は一点を見つめていることが多く、瞬きも減るみたい。
ではなんでこんなことが起きるのか…?ですが、研究者によれば、


ってことです。
ドーパミンレベルが上がったり活動が増加すると、まばたきの回数が増えるそうで、逆にドーパミンの減少はまばたきの回数を減少させるんだとか。そしてドーパミン機能は、注意力と認知制御に深く関わっているので、これが関係しているんじゃないかとのことです。

この結果をどう利用するかはいろいろ考えられるな~と思いました。
例えば、相手方の目の動きとまばたきをチェックしてじっくり考えているorひらめきを求めているってのを推察したりもできるし、逆に自分がアイディアが欲しいときはきょろきょろした方がいいのかな~とかですね。
それと最後に研究者が、

  • 比喩的に、そしてこの場合は文字通り、枠の外で考えるということは、枠の外を見ることと関係している

と述べており、昔書いた額縁を外した考え方(クリティカル・シンキング)っていう自分と同じようなことを言っているな~と思いました。ちょっと親近感が(笑)



ひらめき・問題解決・思い出すなら目を閉じる…!何もない壁を見つめる…!窓の外を眺める…!

2008年のエディンバラ大学の研究によると、何も見ていない、つまりボーっとすることの効果についてレビューしてみたそうです。
では早速ポイントを見ていきましょう。

  • 長期記憶を思い出そうとする時、気を散らす刺激から視線をそらす傾向が人間にはある。
  • 創造的なアイディアは、目を閉じたり、何もない壁を見つめたり、窓の外を眺めたりするときにしばしばひらめく。
  • また困難な問題を解決しようとしたり、忘れかけた記憶を思い出そうとするときにも目を閉じたり、何もない壁を見つめたり、窓の外を眺めたりするときが多い。

確かに思い出そうとするとき無意識に上を向いたり目をつぶったりしますよねー。あとアイディアを練っているときなんかもなんかヒントはないかな~と色々見たりしますな。
これらの共通点を考えてみると、意図的にマインドワンダリングを起こそうとしているのかな~と思いました。となると、やはりポイントなのは意識してボーっとするってことになるんでしょうかね。



皮肉・ブラックジョークはクリエイティブ性をアップさせる…!

ハーバードビジネススクールのフランチェスカ・ジーノ教授の2015年の研究によると、皮肉・ブラックジョークはクリエイティブ性をアップさせるのか調べてみたそうです。
そもそも皮肉を言うと、対人関係やグループ関係、組織に亀裂が入る可能性があり、コミュニケーションに悪影響を及ぼす可能性がございます。またネガティブな感情もアップさせ、パフォーマンスを低下させる可能性もあるんですよね。
一方で皮肉な言い方は、それが批判的な内容であっても、もっともらしい批判をするより面白く、記憶に残る可能性があり、これが創造性のアップに役立つ可能性もあったんですな。でもあんまりこの部分に焦点を充てて調べてこなかったんで謎なんだとか。そこで今回ジーノ教授らは皮肉・ブラックジョークとクリエイティブ性の関係をちゃんと調べてみることにしたらしい。面白い視点での研究ですよね~。
それでは具体的な実験の確認の前にまずは皮肉・ブラックジョークの定義を確認しておきましょう。本研究における皮肉・ブラックジョークってのは、

  • 反対の意味を持つ言葉を使って、自分の考えをユーモラスに伝えること

としています。まぁ、皆さんがイメージする通りっすね。
次にこの研究に載っていた皮肉の例なんですが、部下が仕事中ネットサーフィンをしているのを上司が見つけた時に上司が部下に「そんな頑張りすぎるな…!」と言う感じとなっておりました。頑張りすぎるな…!=適切に行動しなさい…!ってことで、その流れは、

  1. ストレートに言うと、適切に行動しなさい…!
  2. つまり仕事を、もっと頑張れ…!
  3. これを考えと矛盾する言い方にすると、そんな頑張りすぎるな…!

てプロセスを通っているみたい。
これらを言う側は考える、受け取る側は理解しなければいけないんで、クリエイティブ性がアップするって感じです。なるほど確かに皮肉を考える、理解するってこんな感じかも…。
これらをまとめた結果、ジーノ教授らが考えた仮説はこんな感じ。

  • 仮説1:皮肉は他の言い方よりも、対立感が増す…!
  • 仮説2:皮肉を言ったり、受け取ったりすると、創造性(クリエイティブ性)がアップする…!
  • 仮説3:皮肉を言ったり、受け取ったりすると、抽象的思考がアップする…!
  • 仮説4:皮肉の創造性アップ効果は、抽象的思考の増加によって媒介される。
  • 仮説5:皮肉で対立しないためには信頼関係の度合いが大事である…!

これらを調べるために4つの実験を行ったそうです。
因みに各実験と仮説の検証はこのようになっておりました。

  • 実験1と実験2:仮説1と仮説2を検証
  • 実験3:仮説3と仮説4を検証
  • 実験4:仮説5を検証

では各見ていきましょう。


実験1:皮肉で対立感、言う人受け取る人の創造性

実験1では、アメリカ人112名(男性66人、女性46人、年齢21~62歳)を対象に以下の5グループにランダムに振り分けて会話をしてもらったそうです(因みに参加者には相手の会話スキルを評価してくださいとだけ伝えた)

  1. 皮肉を言う人
  2. 皮肉を受け取る人(言われる人)
  3. 誠意をもってストレートに言う人
  4. ストレートに受け取る人(言われる人)
  5. コントロール群

続いて参加者全員に遠隔連想課題(RAT)を行ってもらったとのこと。これは3つの無関係な単語(例えば「時間」、「髪」、「ストレッチ」など)から、共通する言葉(「長い」など)を考えるテストでして、創造性テストの定番となっております。
更に対立感(つまりイラッとしたか)や気分(ポジティブ・ネガティブ)もチェックしたそうです。
結果、

  • 皮肉を言う側も言われる側も対立感が増していた…!
  • 皮肉を言う側も言われる側も創造性が活性化されていた…!

とのこと。
つまり仮説1と仮説2は合っていたみたい。また、意外なのが皮肉による気分(ポジティブ・ネガティブ)は創造性に影響を及ぼさなかったらしい。別物なんですね。


実験2:皮肉を思い出す事と、対立感、言う人受け取る人の創造性

実験2では、アメリカ人107名(男性43人、女性62人、未報告2人、年齢18~64歳)を対象に実験1と同じ5グループにランダムに振り分けたそうです。
その際、実際に会話をしてもらうのではなく、言っているところ、言われているところを想像してもらいつつ、何が起こったのか、何を言ったのか、何を考えていたのか、どう感じたのかなど詳細を詳しく説明してもらったそうな。因みにコントロール群の参加者は、道を尋ねてきた人、自分が道を尋ねた時の最後の会話を思い出してもらったらしい。
結果、

  • 実験1と同じ結果だった…!

とのこと。
どうやら、実際に会話をしなくても皮肉を言う言われるところを思い出すだけで、創造性がアップしたみたい(ついでに対立感も)


実験3:皮肉は抽象的思考アップ効果で創造性がアップしているのか

実験3では、東海岸大学生114名(男性43人、女性71人、年齢18~34歳)を対象に実験1と同じ5グループにランダムに振り分けたそうです。また実験2と同じようにそれぞれを想像してもらったそうな。
更にこの時、抽象的思考や認知的複雑性(認知的柔軟性)、創造性、気分なんかもチェックしたそうです。
結果、

  • 皮肉を言う人は抽象的思考がアップしていた…!
  • 皮肉を言われる人も抽象的思考がアップしていた…!
  • 認知的複雑性(認知的柔軟性)に有意な変化はなかった

とのこと。
こちらも仮説通り、皮肉による抽象的思考アップ効果で創造性がアップしていたみたいですね。


実験4:皮肉と対立感、信頼関係

実験1,2,3により、間違いなく皮肉は言う人も言われる人も創造性がアップすると分かりました。そしてそのプロセスは抽象的思考のアップが大事だと言うことも分かったかと。但し、予想通り対立感もアップすることも分かりまして、皮肉の諸刃の剣としての性質があることもはっきりしました。
では、グループや組織で、皮肉のデメリットである対立感を上げることなく、創造性のみ上げることはできないのかが重要になります。その一つの可能​​性は、皮肉は信頼し合う組織やグループのメンバーの間で使うことが良いと言う可能性です。信頼関係のある相手からの皮肉ならばポジティブな解釈につながる可能性がありますからね。ということで実験4ではそこん所をチェックしたみたい。
実験4では、アメリカ人258名(男性131人、女性127人、年齢19~75歳)を対象に実験1と同じ5グループにランダムに振り分けたそうです。また信頼関係については、参加者に最も信頼する人の事を思い出してもらい、その人のイニシャルを書きつつ、簡単な似顔絵を描いたり、信頼する理由を説明してもらったらしい。逆は最も信頼しない人で行ったって感じです。後は今までの実験と同じ流れで各項目をチェックしていったんだとか。
その結果、

  • 皮肉を言う人が相手に信頼関係を抱く場合、対立感を和らげていた…!
  • 皮肉を言われる人が相手に信頼関係を抱く場合、対立感を和らげていた…!
  • 但し皮肉を言う人言われる人の信頼関係の度合いに関わらず創造性はアップしていた…!

とのこと。
やっぱ信頼関係の度合いによって皮肉のダメージは和らぐんですねー。それと面白いのがその信頼関係に関係なく創造性がアップするということ。ここでも皮肉のメリットって他の影響を受けないんですね。


まとめ

まとめると、

  • 皮肉・ブラックジョークは言う人言われる人のクリエイティブ性をアップさせる…!
  • この効果はポジティブネガティブや信頼関係に関係ない…!
  • 皮肉は信頼している人同士で言うと、デメリットを最小限に抑えつつ、クリエイティブ性をアップさせられる…!
  • 皮肉を言う言われるを思い出すだけでもクリエイティブ性がアップする…!

って感じかと。
まぁ、相手との信頼関係ってのは難しい部分にもなるんで、皮肉を言う言われるところを想像してクリエイティブ性をアップさせるのがデメリットのない使い方かもしれませんね。



個人的考察

もう皆さんお気づきの通り、クリエイティブ=才能ではなく、クリエイティブ=心の状態です。そして、心の状態はテクニックによりカバーできます。ぜひ皆さんもアイディアを欲した際はテクニックをふんだんにご使用ください。
またアイディアは消すのは一瞬だけど生み出すのは大変難しいものです。そのため、アイディアは常にメモするよう心がけていくと良い感じ。



参考文献