• 記憶の宮殿
  • メモリーパレス
  • 記憶の劇場
  • 座の方法
  • ローマン・ルーム法
  • Method of loci
  • マインドパレス

これら(以下、記憶の宮殿という。)は全て同じテクニックのことを指しています。
ということで、今回は世にある記憶術の最高峰である記憶の宮殿について書いていこうと思います。



記憶の宮殿は実在する…!

記憶の宮殿と聞いて映画好きならまず真っ先に思い出すのが、レクター博士シャーロック・ホームズが使っているシーンでありましょう。
と、こう書くと大体の人は、あれは物語の話で実在する訳ないでしょ…?ってことを言います。それが違うんですよね~(笑)
実は記憶の宮殿は魔法のような架空の技術ではなく、現実的に存在するテクニックなんです…!



記憶の宮殿の歴史

記憶の宮殿は約2500年前にギリシャで発明された古代のテクニック。詩人シモーニデース(シモニデス)はあるパーティーに参加した際、たまたま部屋を出ました。その時、建物の天井が崩落し、客たちが全員押しつぶされて死んでしまったそうです。運よく部屋を出ていたシモーニデースは死なずにすんだそうな。瓦礫で押しつぶされてしまって誰が誰だかわからない状況の中、家族たちはこの事故の生存者であるシモーニデースに家族はどこにいたのか聞いてきたそうです。
パーティーに参加した人たちはたくさんいたそうで、普通ならどこに誰が座っていたかなんて覚えていない物です。しかし、シモーニデースは目をつぶり、当時のパーティーの様子を思い出してみました。すると、座(loci)の記憶から誰がどこにいたのか思い出せたのです。
後に、シモーニデースはこの経験を基に「記憶の宮殿(memory palace)」、「記憶の劇場(memory theatre)」、「座の方法(Method of loci)」などと呼ばれる記憶術を編み出しました。
このことから、シモーニデースは古代の記憶術の方法を発明したとされています。

この記憶の宮殿は中世の学者たちが本を丸ごと暗記する為に使ったり(昔は紙が貴重だったり、持ち出し・複製厳禁の本があったため、皆その場で必死に覚えたみたい)、キケロが演説の内容を暗記する際に使ったそうな。
つまり、記憶の宮殿とは古代から使われてきた歴史ある記憶術ということです。



現在でも記憶の宮殿は使われている…!

記憶の宮殿の使用者で代表的な実在する人物は、ジョシュア・フォアさんでしょう。この方は全米記憶力バトルで優勝したすごい方で名著「ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由」なんかで有名な方ですね。この本にも書かれていますがフォアさんが優勝した時、使用したテクニックが記憶の宮殿になります。ぜひ身に付けたいと思いませんか…?
と、こう書くとまた皆さんは、フォアさんという人が特別で凡人には無理ではないか…?ってことを思いませんかね~?
安心してください…!記憶の宮殿のやり方はそんなに難しくはなく凡人(私)でも少しずつできるようになりました。つまり、誰でも訓練と継続しだいで記憶の宮殿を使うことは可能ということです。



記憶の宮殿のやり方

では、記憶の宮殿のやり方について書いていきたいと思います。
まずは下記の動画をご覧ください。






上記はどちらともフォアさんが記憶の宮殿について解説してくれている動画になります。特に1個目の動画では円周率を100ケタまで覚える方法を分かりやすく教えてくれているので良い感じ(字幕がないのがきついですが…)


んで、記憶の宮殿のやり方を一言でいうと頭の中に架空の空間を思い描き、そこに記憶したいものを配置していくって感じ。より具体的に言うと、

  1. 自分が完全に思い出すことができる具体的な場所を思い浮かべる(自宅や職場、学校、通勤・通学路など慣れ親しんだ場所が良い)
  2. 上記で思い浮かべた場所に覚えたいものを配置していく(例えば玄関に覚えたいものを置いたりなどする)

という2ステップのみです。最初は自分の家や自分の部屋を使うのがオススメということ。

因みに1個目の動画では数字にアルファベットを割り振って単語にし、その単語のオブジェを玄関から自分の部屋までのルートに沿って、置いていっておりました。



記憶の宮殿を使えば簡単に記憶選手権出場レベルクラスの記憶術を持てるようになる…!それだけではなく…。

2017年のニューロンによると、過去に記憶選手権に出た記憶術マスター17人と一般人51人を、

  • 1日30分間、記憶の宮殿のトレーニングをした
  • 1日30分間、ワーキングメモリのトレーニングをした
  • 何もしなかった

という3グループに分けたんだそうな。
これを6週間ほど続けた後に記憶力テストと脳のスキャンを行ったら、記憶の宮殿のトレーニングをした一般人が記憶選手権に出た記憶術マスターと同じぐらいテストの成績が良くなったそうです。因みに具体的にはトレーニング前に比べ記憶力が2倍になったということ。すばらしい…!

そして、この研究で分かったのは記憶の宮殿のトレーニングをすることにより脳の構造自体が変わるということ。どういうことかというと、デフォルトモードネットワークが強化されていたらしいんですよね。
デフォルトモードネットワークは以前にご紹介しましたが、復習しておくと何も考えないでいる時に活性化する脳のエリアのことです。脳全体が活性化するんで、

  • 問題解決能力がアップ…!
  • 記憶の定着がアップ…!
  • 価値判断がアップ…!
  • 正しい判断をする確率がアップ…!
  • 良いアイディアを作れる可能性がアップ…!

など様々な素晴らしい効果があります。
更に最近では鬱病の人はデフォルトモードネットワークが小さいって知見もあるそうで、脳全体のコントロールに必須のエリアっぽい感じみたい。つまり、記憶の宮殿はメンタル改善・安定・強化にも有効の可能性あり…!ってことですね。う~ん。ますますトレーニングしたくなる…!

因みに記憶力の良い人は、例外なく、数ヶ月から数年にわたるトレーニングを積んでいるそう。更に、いったん記憶の宮殿に慣れてしまえば、無意識で高パフォーマンスを出すことが可能になるそうです。要は数ヶ月から数年のトレーニングは必要だが、その分記憶の宮殿の効果を長期間得られるようになるということ。脳の構造が変わるんだからそりゃ時間はかかるだろうし長期間の効果は得られますよね~。納得。

最後に当たり前ですが記憶に留めるのはポジティブな体験が良いです。じゃないとずっと嫌な記憶を覚えておくことになりますからね(戒めの為に覚えておくとかは有りですが…。)



個人的考察

まとめると、1日30分間の記憶の宮殿のトレーニングを行い、脳の構造自体を変え、記憶力をアップさせる。更に長期間トレーニングを行えばその分効果も長期間得られるよ~って感じになります。実験期間は6週間だったんで、まずは1ヶ月半試してみるのがよろしいかと思います。

記憶の宮殿は個人的にも非常にオススメで、一生モノのスキルになります。
というのも、私はその昔今よりずっと記憶力がダメダメだったんですが、高校の時、同じクラスにめっちゃ頭の良い人がいて友だちになったんですよね~。その時教えてもらったのが記憶の宮殿のやり方で、そこから学校のテストの点数があり得ないほど良くなったんですよ~。それから大学に行き、社会人になった今でもずっと使い続けていますが、あの時教えてもらってよかったな~って本当に感謝しています。
今考えると、当時は「記憶の宮殿」なんて名前は言っておらず、ただ自分はこうやってるよ~って教えてくれたんですが、もし、その友だちが自力でこのやり方を見つけたんだとしたらすごいよなって思います。
そういえば全然連絡取ってないけど、元気かな~?



参考文献

https://www.youtube.com/watch?v=mI96Ph-yHcA
https://www.ted.com/talks/joshua_foer_feats_of_memory_anyone_can_do?language=ja#t-1192474
https://www.cell.com/neuron/fulltext/S0896-6273(17)30087-9?_returnURL=http%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0896627317300879%3Fshowall%3Dtrue