「天職」や「仕事のやりがい」について皆さんどう思いますか…?
今の仕事にやりがいを感じられない…。自分の天職は他にあるはずだ…!なんていう人もたまにいますが、どうやらそれは間違いらしいっていうのが分かってきている昨今。しかし一方で実際に天職に就いている方はいるのも事実…。
転職活動の企業選びや支援でも参考になると思いますので是非ご覧ください。



「天職」は偶然の産物だった…!

ジョージタウン大学のカル・ニューポート博士の書籍によると、天職についた人に話を聞いたら、彼らが天職を得たのはほとんどが偶然の産物だったそうな。つまり、初めから「これは天職だ…!」って思いや「この仕事をやりたい…!」って言う人は、その後、その仕事が天職にはならなかったらしいです。悲しい。

つまり、天職とは結果的になるものであって初めから天職だと分かることはほぼないということになりますね。じゃあ、結果的に天職になった人達はどうやって天職になるのかというと、ニューポート博士曰く「どうやって自分の仕事へ情熱を持つようになったか」で決まるらしい。天職に就いたから情熱を持てるのではなく、情熱をもって仕事をしていたら結果それが天職になったっていうのが真実みたい。この当たりは自分の経験からも非常に納得できる話。だって、初めから障がい福祉の仕事をしようなんて思っていなかったですしね~。大学の学部も福祉全く関係ないし(笑)



理想の自分を描いても弱効果だった…。

以前にも紹介したポジティブシンキング研究で有名なガブリエル・エッティンゲン博士の2011年の論文によると、理想の自分を思い描いても逆効果だったそうです。つまり、天職についたという理想の自分を描いても意味はなく、それどころか逆効果になってしまうみたいです。このことからも天職を追い求めるのはやめておいた方がいいような気がしますね~。



好きな仕事を選んでもダメ。何故かというと…。

ハーバード大学のダニエル・ギルバート博士の書籍によると、人間は自分の幸せを予測するのが非常に苦手らしい。そのため、好きで選んだ仕事でも嫌気がさすことが多いんだとか。これは学生時代の就職活動のときに第一志望の企業に行った人より第二志望の企業に行った人の方が離職しないって聞いたけど、あの話にはエビデンスがあったんですね~。今わかる真実(笑)
因みにギルバート博士は仕事の幸福感を決めるポイントを4つ挙げていまして、

  1. 自分の意志で行動できるか
  2. 社会に役立っているか
  3. 他人とのつながりを感じられるか
  4. スキルが向上する実感を得られるか

を挙げています。以前に紹介しましたが悪い職場かどうかを見分ける一番重要なポイントは権利が少ないかどうかでしたが、同じ内容である「自分の意志で行動できるか」が入っていますね~。改めてコントローラビリティの重要性を感じますね。因みに仕事の種類や内容は関係ないそうで作業を楽しめることが重要でもないみたいです。社会に役立つ仕事を選び、常にスキルを磨き続ける「職人気質」な仕事が幸福感を決めるそうなので、その辺を意識して仕事を選び、情熱をもって仕事をするのがよろしいかと思います。そうすれば気が付いた時にはそれが「天職」になっているのかもしれません。



結局「仕事のやりがい」とはなんなのか…?

次に「仕事にやりがい」について考えてみたいと思います。
どのような仕事でもやりがいを感じられるか…?ってのは非常に大事だと思います。もちろん障がい者支援などの対人援助職(ヒューマンサービス職)もこの辺は大事でして、仕事のやりがいを感じられないとバーンアウトや虐待、離職など様々なことが起こる可能性が増しますからねー。注意したいところ…。
では、そもそも「仕事のやりがい」とはなんなのか…?どうやったら感じられるのか…?について、超参考になる大規模研究から考えてみたいと思います。
2007年のフロリダ州立大学の研究によると、結局「仕事のやりがい」って何なの…?ってことについて調べてみたそうです。この研究は過去の仕事研究を259件もピックアップしたメタ分析になっておりまして、総サンプル数は219,625人となっております。まとめるのにかな~り大変だったでしょうなー。感謝。
んで、早速大枠の結論から申しますと、

  • 仕事のやりがいは、14の作業能力と19の働く態度と行動で大体43%を説明できる…!

とのこと。
仕事のやりがいを感じやすい項目をまとめてみると、以下の内容で大体半分弱は説明できる…!ってことですね。これは参考になりますなー。
では仕事のやりがいを感じるきっかけを見ていきましょう…!

  • 主観的なパフォーマンスの変動:25%
  • 売上高の認識:2%
  • 仕事の満足度:34%
  • 会社のコミットメント:24%
  • 自分の役割の認識と結果:26%

上記が仕事のやりがいを感じやすい項目とのこと。
また社会的な特徴としては、

  • 主観的パフォーマンスの変動:9%
  • 離職のきっかけ:24%
  • 仕事の満足度:17%
  • 会社のコミットメント:40%
  • 自分の役割の認識の結果:18%

によりアップする可能性があるみたいです。
更に職場環境については、

  • 仕事の満足度:4%
  • ストレス:16%

が関係しているそうな。
んで、このままだとイマイチよく分からんので、更にまとめてみます。
仕事のやりがいを感じるには、


みたいな感じ。
特に重要な「自分の仕事が社会(他の人々)にどれだけ役立っているか…?」は、私もかな~り意識していまして、シンプルルールで「その人(その障がい者)にとって良い人生を歩んでいるかどうか」を基準に支援方法や方向性を最終的に決めているほど。更に詳しくは、「障がい者支援について考える その2「障害福祉サービスの種類と全体の流れ、役割・やりがい」」の「就労支援事業所の役割とやりがい」をご参照ください。



「仕事のやりがい」は世界共通みたい…!

1996年のコーネル大学の研究によると、「仕事のやりがい」とは何か調べてみたそうです。この研究は、1982~1983年と1989~1992年のベルギー、ドイツ、日本、アメリカの労働者と、1991年~1992年の東ドイツ、ブルガリア、チェコ共和国、ハンガリー、ポーランド、スロバキア、中国の北京の労働者を対象に調査したとのこと。
つまり、今回の研究は様々な国からサンプルを集めて「仕事のやりがい」を調べた…!って違いがあります。因みに総サンプル数は18,673人とのこと。
結果はやっぱり似ていて、

  • 一番大事だったのは社会貢献(=人に役立っている感)だった…!

そうです。
つまり、国や人種、文化の違いなどは特に関係なく、「仕事のやりがい」は世界共通みたいです。



「仕事のやりがい」を感じるには社会貢献が大事…!では具体的にどうすべきか…?

世界共通で「仕事のやりがい」を感じるには社会貢献が大事だと分かりました。でも実際、自分の仕事が社会(他の人々)にどれだけ役立っているかを感じやすくするにはどうすれば良いのでしょうか…?
この問題について、具体的な対策を考えていきたいと思います。

まず参考にしたいのが名著「GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代」の著者であり、当ブログでも何度かご登場しているアダム・グラント教授の2007年の研究になります。この研究では、労働者の仕事で実際に利益を受けている人たちに直接会う機会を作ったら、労働者の働く意欲が維持・向上するのではないか…?という仮説を検証してみたそうです。つまり、生産者と消費者が直接会うとモチベーションが上がるのでは…?と思ったってことですね。
実験は全部で3つ行ったそうで、まず一つ目の実験では、以下の2つのグループに分かれてもらい、仕事のモチベーションがアップするか調べてみたとのこと。

  1. 大学の寄付金調達係(生産者)と大学生(消費者)に直接会ってもらい、簡単な対話をしてもらう。
  2. 大学生(消費者)からの手紙を大学の寄付金調達係(生産者)に読んでもらい、それについて話し合ってもらう。但し、生産者と消費者は直接会っていない。

1ヶ月後の仕事のモチベーションを比べてみた結果、直接会って対話をしたグループは、直接会わずに手紙を読んだグループに比べて、

  • 資金調達の為の電話時間が142%もアップした…!
  • 資金調達(職務遂行能力=仕事を最後までやり遂げようとする気持ち)が171%もアップした…!

そうです。
二つ目の実験と三つ目の実験では、実験室の中でモチベーションが上がる条件を詳しく調べてみたそうで、ポイントをまとめると、

  • 実験2:生産者と消費者がお互い尊敬する気持ちで会うことにより、仕事のモチベーション(上記で言うと電話時間)がアップした…!
  • 実験3:消費者と直接会って対話することにより、消費者の期待に応えたい(コミットメントしたい)と思うようになった。結果、仕事のモチベーション(上記で言うと電話時間)がアップした…!

とのこと。
どうやら、生産者(支援者)は実際の消費者(利用者さん)の助かっている…!という声を直接聞くことにより、社会に役立っている…!と強く感じ、「仕事のやりがい」をめちゃくちゃ感じるみたいですね。これは実体験からも非常に納得できる話で、支援をしていた利用者さんから、この事業所にきてよかった…!って言ってもらえた時の嬉しさは格別ですからね~。これは分かるな~。


また2008年の北米放射線学会プレスリリースでは15人の放射線科医に、318人の患者さんの顔写真を見てもらいつつ、CTスキャンをしてもらったそうです。その3ヶ月後、今度は顔写真なしで同じ放射線科医に盲検法を使ってCTスキャン画像のみを見てもらったそうな。
結果、CT画像のみの時に比べ、顔写真+CT画像の時は、

  • 放射線科医全員のモチベーションがアップした…!
  • レポートの長さが約29%もアップした…!
  • CT画像からの診断の正確性が約46%もアップした…!

とのこと。
自分に期待している人物の顔をみると、モチベーションがアップし、実際パフォーマンスも向上するみたいですね。確かにガラガラの球場と満員の球場では、モチベーションが違うでしょうし、自分に期待している人の顔を見ちゃうと、いっちょやったるか…!みたいな気持ちになりますよね(笑)

因みにこの「仕事のやりがい」を一番感じやすい「社会貢献」を具体的に味わうための「生産者と消費者が実際に会ってみる」戦略は、企業で実践しているところもあるそうです。
例えば、

  • フェイスブックの社員は、定期的にユーザーからの感謝を聞く機会を設けている
  • 世界最大の農業機械メーカーであるディア・アンド・カンパニーは、労働者・社員と購入者・使用者が直接会う機会を設けている

そうです。
是非「仕事のやりがい」を感じ、天職となれるようにしていきたいもんですねー。



より良い社会を作っている感覚と楽しさがあると良い…!

1997年のミシガン大学、ブリンマー大学、ペンシルベニア大学、スワースモア大学の共同研究によると、事務職や専門職など幅広い職種のある2つの職場の労働者196人を対象に、仕事が天職になり得る要件を調べてみたそうです。
すると明確な結果が出たとのこと。そしてこの結論は、24人の大学職員で調べても同様の結果が出たそうな。
では、気になる結論の前に、まずは、ほとんどの人が重きを置く要件を見てみましょう。
全部で3つあるそうです。

  1. 報酬・必要性重視タイプ:仕事の喜びや充実感よりも、金銭的な報酬や必要性に重きを置くタイプ
  2. キャリア重視タイプ:昇進に重きを置くタイプ
  3. 使命感重視タイプ:より良い社会を作っている感覚・楽しさがあるかに重きを置くタイプ

んで、天職になり得るタイプはどれだったかというと、

  • 使命感重視タイプ…!

だったそうです。
つまり、より良い社会を作っている感覚と楽しさがあると良いみたい。
因みにもし、社会を良くしている感覚や楽しさがない仕事でもそう思い込むのが大事らしい。まぁ、基本的に仕事ってのは誰かの役に立つことをしているので、意識することが大事とも言えますな。
上記研究は、組織心理学で有名なエイミー・レズネスキー教授のものなんで、信頼度は高めです。なんで皆さんも社会に役立っているぞ…!と意識して働いてみてはいかがでしょうか…?



マインドセット次第で天職になり得る…!

2015年のミシガン大学の研究によると、「仕事への情熱」がどのようにして生まれるのか調べてみたそうです。
そもそも、仕事への情熱は大事…!って話をよく聞きますが、相反する2つの方向性から生まれると考えている人が多いそうな。
その2つとは、

  1. 適合理論タイプ:仕事への情熱は自分がやりたい仕事に就くことで得られる…!
  2. 発展理論タイプ:仕事への情熱は時間をかけると得られる…!

って感じ。
要は、天職に就けると情熱が湧くか、仕事をしていると情熱が湧き天職になるかって話ですね。ではどっちが正しのか…?ってことで今回調べてみることにしたらしい。
実験は全部で4つ行われたそうで、いずれも上記タイプの考え方についての期待度や優先度、その結果なんかが調査されたみたい。
気になる結果は実にシンプルでして、

  • どちらも職業上の幸福と成功を促進できた…!

とのこと。
世間では天職に就くのが大事だと言われがちですがどっちも変わらないみたい。
というのも右から行っても左から行っても結局ゴールは同じって感じでして、適合理論タイプは天職に就くまで転職を繰り返すし、どこかは妥協しなければいけないし、反対に、発展理論タイプはやりたくない仕事でもグダグダ我慢してしまうけど、そのうち面白さに気付くチャンスがあるとも言えるしみたいな感じらしい。なるほど確かに言われてみればそうなりそうですな。

つまりどんな職場(よほどのブラックを除く)だろうとマインドセット次第で天職になり得る…!ってことで、別に好きな仕事に無理してつかなくても幸福も成功も同じぐらい得られるみたいです。
こう考えると、「やりたい仕事」にこだわるのも良いですが「出来る仕事」に就く方が良い気がしますね~。



個人的考察

天職を求めたり、好きな仕事を選ぶのも駄目ですが、以前に紹介した通りお金だけを追い求めるのも危険です。仕事を選ぶ際は上記の4つのポイントを踏まえ、情熱が持てそうか。続けられそうかを基準にして選ぶとよろしいのではないでしょうか…?
ぜひご参考にしてください。



参考文献

http://www.psych.nyu.edu/oettingen/Barry%20Kappes,%20H.,%20&%20Oettingen,%20G.%20(2011).%20JESP.pdf