【加筆内容】運動は不安対策になるのか? その8「不安障害の患者さん・不安レベルが高い患者さんと運動強度編」
2018年のマンチェスター大学の研究によると、運動が不安に効くのか幅広い不安レベルの方を対象にしつつ、強度の違いもあるのかRCTの系統的レビュー・メタ分析で調べてみたそうです。
そもそも不安症の一般的な治療法は、薬物療法(SSRIなどの抗不安薬)又は心理療法(認知行動療法など)になりますが、多くの患者さんは薬物療法をしたがりません。理由は簡単で吐き気などの副作用が生じる可能性があるためです。そのため、まずは生活習慣の見直しと改善から行うことを望んでいたりします。
一方で、治療として運動を行う場合、副作用が比較的少ない上に、健康効果(体重減少や血圧低下など)がアップするというメリットがございます。また、病院を予約してわざわざ受診する必要がなく、治療プログラムに参加する必要もない為、費用対効果が高いだけでなく、患者さんにとっても気軽にできるという可能性があるんですよね。
んで、以前に見たとおり、診断を受けていない方が運動すると不安軽減効果を得られることが分かっております。
そこで今回は、不安障害の診断基準を満たす患者さんと不安レベルが高い患者さんを対象にして運動の効果を調べてみたらしい。また、高強度の運動と低強度の運動を比較してどちらがより効果的なのかも見てみたそうな。
そこで今回は、不安障害の診断基準を満たす患者さんと不安レベルが高い患者さんを対象にして運動の効果を調べてみたらしい。また、高強度の運動と低強度の運動を比較してどちらがより効果的なのかも見てみたそうな。
ということでまず研究者たちは、該当する先行研究をコクランやMEDLINE、EMBASEで検索してみたそうです。またその時、ランダム化比較試験であることや実験期間が2週間以上のものなどに絞って検索してみたそうな。
すると3,821件もの研究が見つかったみたい。続いてこの中から質の低い研究を除外していったそうで、最終的には15件の研究がピックアップできたんだとか。この15件の研究の総サンプル数は675人でして、これらのデータを基に系統的レビュー・メタ分析を行ったそうです。
気になる結果は、以下のようになっておりました。
- 運動グループは何もしないグループに比べて、不安スコアが改善(効果量-0.41)していた…!
- 高強度の運動グループは低強度の運動グループに比べて、不安スコアが改善(効果量-0.38)していた…!
つまり、不安障害の患者さんや不安レベルが高い患者さんに運動は効果的だった…!ってことですね。しかも運動強度は高い方が良いと…。
但し注意点として、高強度の運動グループに参加した人はドロップアウトの確率が高かったらしいんで、個人的には、強度よりも運動の継続に主眼を置いた方が良さそうな感じ。
そして、この研究では運動の効果の持続性についてもチェックしているんですが、
- 高強度の運動グループも低強度の運動グループも、運動による不安軽減効果はトレーニング後も3~7ヶ月にわたって維持されていた…!
- 2件の研究では、高強度の運動グループは低強度の運動グループに比べて、長期的にみた場合、より大きな不安軽減効果があった…!
- 1件の研究では、高強度の運動グループも低強度の運動グループも、長期的にみた場合、同じぐらい不安軽減効果があった…!
- 上記3件の研究の総合効果量は-0.30だった…!
とのこと。
研究数が少ないものの、とりあえず運動を止めても運動による不安軽減効果は続きそうですね。また、強度は高い方が良いのかも…?って感じでした。
では最後に、不安障害の患者さんと不安レベルが高い患者さんの効果量の違いも見ておきますかー。
不安レベルが高い患者さんの方が運動の効果がありそうですが、グループ間の有意差はないそうなんで、ここは気にしなくて良さそうですね。
- 不安レベルが高い患者さんの効果量:-0.46
- 不安障害の患者さんの効果量:-0.32
不安レベルが高い患者さんの方が運動の効果がありそうですが、グループ間の有意差はないそうなんで、ここは気にしなくて良さそうですね。
個人的考察
因みに高強度の運動グループと低強度の運動グループがどんな感じなのか見てみると、
- 高強度の運動グループ:最大心拍数の60~70%で、ジョギングやトレッドミル運動、ウォーキングなどの有酸素運動を行っていた
- 低強度の運動グループ:快適な状態ぐらいの負荷でのウォーキングやストレッチ、柔軟性運動など、それほど激しくない有酸素運動を行っていた
ってことなんで、運動習慣がない方はウォーキングから始めて徐々にランニングに移行していくとよろしいのではないでしょうか。