前回は恒常性プロセスの研究について見てみました。
今回は快楽的プロセスの研究を見ていきます。



運動は快楽的プロセスと関係があり、特に運動直後の食品全般への「好みと欲求」と、高脂肪の甘い食べ物への「好みと欲求」に作用する…!

2004年のルイジアナ州立大学ペニントン生物医学研究センターの研究によると、恒常性プロセスと快楽的プロセスについてレビューしてみたそうです。
現代社会は肥満や肥満に関係する健康リスクが急速に増えておりますが、そこには恒常性プロセスと快楽的プロセスの2つが関係しているとのこと。
具体的には、

  • 美味しくてカロリー密度の高い食品(ファストフードやジャンクフードなどの加工食品超加工食品)が手軽に入手できる環境になった
  • 運動不足が起きやすい環境になった

ことにより、飢餓の期間を生き延びるために進化したシステムが足を引っ張り、肥満を後押ししてしまっているんだとか。
確かに現代社会は簡単に食べ物が入手できる環境なんで、ちょっとした空腹感にも敏感になりすぐ食べてしまうし(恒常性プロセス)、しかもそれが旨くてカロリー密度が高い食品という報酬の高い食品なんで、食べ物に快楽(喜びや楽しみ)を求めちゃうのも納得ですな(快楽的プロセス)
しかもこれらは、報酬や認知、社会的側面を司る大脳辺縁系に影響を与えますんで、その結果、摂取カロリーと消費カロリーのバランスが崩壊、肥満へと進んでいくみたい。因みにこの辺は食事報酬の記事に書いた通りですね。

また2007年のタフツ大学の研究では、様々な運動量における体脂肪やカロリー摂取量、食品の好みに与える影響についてレビューしております。
なんでも食事による報酬は、食事の開始や維持、終了に重要な役割を果たしているそうで、食品や主要栄養素の好みの変化によって、快楽的プロセスが変化、その結果、カロリー摂取量を増加させる可能性があったんだとか。

そしてこの当たりを詳しく調べた研究として2010年のリーズ大学の研究というものがあります。この研究では、食事の「好みと欲求」の変化、味覚と栄養素の好みの変化をチェックしてみたんですよね。
実験は、運動不足の肥満の男女34人が参加したもので、研究者が見ている中で運動してもらったそうな。その際の運動は1日500kcal消費するよう設計され、これを週5日のペースで12週間行ってもらったらしい。また、運動でのカロリー消費量に対する体組成の変化から参加者を痩せやすい人(20人)と痩せづらい人(14人)に分けてみたそうです。更に運動の前後に食事の「好みと欲求」についても評価してみたんだとか。
最後にデータを比べてみた結果、

  • 痩せやすい人は、体脂肪が5.2±2.4kgも減っていた…!
  • 痩せづらい人は、体脂肪が1.7±1.4kgしか減っていなかった…。
  • 運動後、痩せやすい人は、全ての食品に対する「好みと欲求」に変化がなかった…!
  • 運動後、痩せづらい人は、全ての食品に対する「好みと欲求」が増えていた…。
  • 痩せづらい人は、高脂肪の甘い食品に対する「好みと欲求」が増えていた…。
  • 上記の違いは、12週間の定期的な運動と体重減少とは無関係だった…!

とのこと。
つまり、運動直後に食品全般への「好みと欲求」が増し、高脂肪の甘い食べ物への「好みと欲求」が増えた人は、減量効果が低かったってことですな。しかも上記の急性運動の効果は定期的な運動には影響を与えないと。
そのため、特定の方は運動による報酬に対する急性の影響をより受けやすい可能性があるみたい。そしてそういった方々が運動後に気軽に食べ物を食べられる環境にあるとついつい食べてしまうみたいです。



個人的考察

ということで快楽的プロセスも関係があるというお話でした。



参考文献