【加筆内容】脳のセットポイント理論について改めて復習しておきますかー
これを調べた研究は結構ありまして、その辺については2011年のアバディーン大学などの研究がとても参考になります。
まずこの研究に載っている2007年のニューヨーク市保健精神衛生局の研究によると、20歳から78歳の健康な男性761人を対象に体重の変化を調べてみたそうです。6年間追い続けた結果、1年間で平均0.5kgの体重増加が見られたんだとか。
んで、この0.5kgが脂肪だったと仮定した場合、約350gとなります。つまり、1年間の消費カロリーよりも摂取カロリーが13.8MJ≒3,300kcal高いだけなんですな。3,300kcalって聞くと多そうな感じがしますが、1日わずか9kcal多いだけなんで、150m歩くか、普通の無糖ミルクコーヒー1杯分とほぼ同じとのこと。
これらをみると、体ってのが、如何に体重をほぼ一定に維持するために、信じられない精度でカロリー摂取量とカロリー消費量を絶妙に調整しているかと思わされますよね。恐るべきシステムです。
そんなセットポイント理論ですが、その始まりは1953年の研究にまで遡るんだとか。その後、40年以上が経ち、レプチン(食欲抑制ホルモン)が発見されます。この発見により、セットポイント理論が最注目され出します。
その結果、2011年のシンシナティ大学の研究や2007年の研究、2011年のテキサス大学の研究、2010年のペンシルベニア大学の研究、2011年のテキサス大学の研究、2009年のポルト大学の研究と様々な研究がなされ、体重増加や減少に関係しているか、摂食行動とカロリー消費を直接変化させることが分かったらしい。
また、1998年のケンブリッジ大学の研究や1999年のアデンブルック病院の研究、2001年のアデンブルック病院の研究、2002年のアデンブルック病院の研究、2007年のアデンブルック病院の研究により、遺伝子的にレプチンに問題がある人(レプチン欠乏症の人)は極度の過食症や肥満だったということも分かります。但し、1996年のロックフェラー大学の研究や2010年のマサチューセッツ総合病院などの研究から、ほとんどの人の肥満はレプチン欠乏症とは関係ないそうです。
そして最もセットポイントが起動しているのが分かる状況は、ダイエット(減量)と過食です。
例えば、
の研究なんかにより、実際に体重が増減することは分かっているんですが、しかし1996年のラヴァル大学の研究や2001年の研究を見てみると、一旦そのダイエットや過食をやめると、減った脂肪を取り戻すかのように、又は、蓄積された脂肪をなくすかのように、元のレベルに戻る傾向があるんですよね。つまりセットポイントが起動したと言えるでしょう。
また、1992年のラヴァル大学の研究や2007年のラヴァル大学の研究、2010年のコロンビア大学の研究、2008年のコロンビア大学の研究、2003年のテキサスA&M大学健康科学センターの研究、1997年のロックフェラー大学の研究、1984年のロックフェラー大学の研究と数多くの研究で、ダイエットと過食による増減のバランスをとるため、体はカロリー摂取量とカロリー消費量を調節していることも分かっているんだとか。
これにより、2001年の研究によれば、急激なダイエット(減量)でなぜリバウンドが起こるのか、ダイエットが失敗するのか、ダイエットは長期的に行った方が良いのかの説明ができるとのことです。
個人的考察
但し、これだと、なぜ太るのか説明が付きませんよね…?
だって、本来皆さん普通体型であり、セットポイントが発動するのなら、食べ過ぎても元に戻るので太りようがないはずじゃないですか…?
また、2003年のユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究なんかを見てみると、なぜ肥満は西洋諸国の中で裕福でない人ほど多いのか…?とか、2013年の研究や2010年のノースカロライナ大学チャペルヒル校の研究によれば、なぜ発展途上国では裕福な人ほど、肥満が多いのか…?っていう説明もつかないんですよね。
実は、本来ちゃんと機能するはずのセットポイントが狂う要素・環境が、現代社会にはたくさんあるんですよ。
それによって「太る」という現象が起きていたんですよねー。
参考文献
https://faseb.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1096/fasebj.4.15.2253845
https://journals.biologists.com/dmm/article/4/6/733/3137/Set-points-settling-points-and-some-alternative
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https://www.biologicalpsychiatryjournal.com/article/S0006-3223(10)00912-1/abstract
https://dom-pubs.onlinelibrary.wiley.com/toc/14631326/9/6
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https://www.jci.org/articles/view/45888
https://www.cell.com/cell-metabolism/fulltext/S1550-4131(09)00335-0?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS1550413109003350%3Fshowall%3Dtrue
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