【加筆内容】地中海式ダイエットの質の高い研究を見ていく!47「腸内細菌の関係について調べた初の系統的レビュー」
地中海式ダイエットと腸内細菌の関係について調べた初の系統的レビュー…!
そもそも2018年のノッティンガム大学の研究を見てみると、過去数十年にわたって、腸内フローラ(消化管内にいる非常に複雑で多様な腸内細菌の集まり)は、人間の健康と病気に深く関わっていそうだと注目を集めておりました。例えば、2001年のワシントン大学の研究や2017年のレディング大学の研究、2018年のノッティンガム大学の研究により、腸内細菌がビタミンの生成や短鎖脂肪酸の生成、胃や腸の健康維持、免疫機能の調節など、人間の健康に重要な役割を果たしていることも分かってきております。
また2019年のニューイングランド大学の研究では、腸内環境が乱れると、炎症性腸疾患(IBD)や大腸がん、糖尿病、肥満、心血管疾患(CVD)、認知症など、いろんな健康への悪影響が出てしまうらしい。
そんな腸内細菌ですが2018年のノッティンガム大学の研究によると、食事や運動、喫煙などのライフスタイルによって影響を受けるそうです。また、2018年のワイツマン科学研究所などの研究によれば、これらライフスタイルの影響は遺伝的要因を上回るそうな。つまり日々の健康的な食生活が一番のポイントということですね。
んで、2017年のカリフォルニア大学の研究を見てみると、やっぱ一番大事なのは食事っぽくて、なんでも食事は特定の腸内細菌や腸内フローラの成長と活動を促進できるみたい。また、2019年のニューイングランド大学の研究や2018年のノッティンガム大学の研究から潜在的な健康へのメリットを及ぼす可能性もあるんだとか。
一方で、地中海式ダイエットは、食物繊維やポリフェノールなどの栄養素が豊富で有名な食事スタイルです。そして2012年のエドモンドマッハ財団の研究によると、食物繊維とポリフェノールは、健康面の影響が大きい可能性が高いプレバイオティクス(腸内細菌のエサ)になるんですよね。
もうちょい詳しく見ておくと、
- 食物繊維:2021年のワーゲニンゲン大学の研究により、腸内細菌によって発酵され、全身の抗炎症作用がある短鎖脂肪酸になる…!
- ポリフェノール:2019年のキングス・カレッジ・ロンドンの研究により、腸内細菌によって代謝され、吸収がアップ、その後、腸内粘膜と肝臓の酵素によって、複数の生理学的効果を持つ代謝物が生成される…!
って感じ。
更に2020年のワシントン州立大学の研究では、一部のポリフェノールは抗菌作用もあるぞ…!なんて話もあったり。
となると、
- 地中海式ダイエット(食物繊維やポリフェノールが豊富)を行う
- 腸内細菌・腸内環境・腸内フローラが良くなる
- 健康になる…!
って流れがあるんじゃないかとなる訳ですな。
んがしかし、これを調べた先行研究では、矛盾した結果が出ているんですよね。
そこで今回研究者たちは、以前に発表された該当する観察研究とRCTを集めて、初の系統的レビューを行ってみることにしたそうです。
まず最初に2021年2月7日までに発表された該当研究をPubMed、The Cochrane Library、MEDLINE、SPORTDiscuss、Scopus、CINAHLという6つのデータベースを用いて検索してみたそうな。
因みにこの時、ランダム化比較試験(RCT)と観察研究のみを検索しつつ、更に18歳以上の成人を対象とした研究のみを選んだらしい。続いて検索にヒットした研究の中で被っている物を除外、結果、1,249件の研究があったんだとか。
更に一つ一つの研究の質をチェックして精査、最終的に34件の研究をピックアップしたそうです。この34件のうち、17件がRCTで、残りの17件が観察研究ということでした。では結果の前にRCTと観察研究の特徴を見ておきましょう。
まずはRCTの特徴からです。
- 17件中5件はクロスオーバーデザインを採用していた。
- 総サンプル数は1,882人だった。
- サンプル数の中央値は79人でサンプル範囲は10~612人の間だった。
- 年齢の中央値は60歳で年齢範囲は22~79歳の間だった。
- 介入期間の中央値は26週間で介入期間の範囲は1週間未満~156週間の間だった。
次は観察研究の特徴です。
- 17研究14件は横断研究で3件は縦断研究だった。
- 総サンプル数は4,526人だった。
- サンプル数の中央値は119人でサンプル範囲は20~1,735人の間だった。
- 年齢の中央値は60歳で年齢範囲は22~95歳の間だった。
- 17件中10件は健康な参加者を対象にしていた。
それでは結果を見てみましょう。
- 全体的に、地中海式ダイエットが腸内細菌の多様性に影響を与えるという証拠はほとんどなかった。
- しかし、地中海式ダイエットが短鎖脂肪酸の生成を調整する可能性があるという証拠がいくつかあった…!
- 但し、研究の設計や結果にばらつきがあり、はっきりしたことは言えなかった。
ということで、影響がなさそうだけどありそうだけど…よく分からん…!って感じ。なんとも煮え切らない結論ですね~。
しかしこれも無理からぬ話でして、というのも、
- 地中海式ダイエットの食事スタイルを守っているか評価する方法がバラバラ
- 地中海式ダイエットの食事スタイルがざっくりで多様性に富んでいる
- 地中海式ダイエットで食べられる食品や食事を補助的に提供したか、単に食事スタイルを地中海式ダイエットに替えるよう指示したかの違いがある
- 介入期間がバラバラ
- 食事が腸内環境に影響を与える主な原因なのは分かっているけど、因果関係が不明(=食事を変えたから腸内環境が変わるのか、腸内環境が変わったから食事スタイルが変わったのか不明)
- 元々疾患のある人と健康な人で効果が違いそう
- 年齢や性別、地理、人種によっても変わりそう
- 現在の腸内細菌の量や多様性に対する地中海式ダイエットの効果を調べた研究がほぼない
って感じで、まだまだ今後の研究に期待というところが大きいみたいなんですよね。
個人的考察
ということで、もしかしたら可能性があるかも…?ぐらいしか今は分からない感じです。