自閉症(発達障がい・自閉スペクトラム症・ASD)の方は歩き方や走り方で分かる!は本当か?
皆さんはこんなお話を聞いたことがございませんか…?
- 自閉症の方は歩き方や走り方に独特の特徴があるので分かる…!
自閉症(発達障がい・自閉スペクトラム症・ASD)の方は歩き方や走り方で分かる…!は本当か…?
軽くおさらいしておきますと、自閉症は、脳の発達や機能に影響が出る神経発達障害の一つ。主に行動やコミュニケーション、社会性において支障が出てしまうんですな。そんな自閉症の方は、独特な歩き方や走り方をすると言われております。
これが本当なのか、まずは精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)の現最新版であるDSM-5-TRを見てみましょう。
これの自閉スペクトラム症(ASD)のページを見てみると、「ASDを診断する上でのサポート関連機能」って見出しがございます。
その文章を見てみますと、
- 自閉スペクトラム症の方々は、独特な歩行、不器用さ、その他の特徴的な運動徴候(例:つま先歩き)など、運動機能障害がしばしば見られる
とのこと。
つまり、DSM-5-TRでは独特な歩き方や走り方は自閉スペクトラム症の診断基準の補助的な物として使えるとなっているんですな。
これを踏まえると、自閉症の方は歩き方や走り方に独特の特徴があるので分かる…!ってのは全くのデタラメではないと言えましょう。一方で、独特な歩き方や走り方のみで、自閉症があるぞ…!とはっきりと言えないのもまた事実でしょう。
いずれにしても、可能性の一つ、参考の一つって程度の特徴と言えるのではないでしょうか…?
では、独特な歩き方や走り方ってのは具体的にどんな感じのことを言うんでしょうか…?
モナシュ大学の教授の記事によれば、自閉症の方に見られる歩行の最も顕著な違いは以下とのことです。
- つま先で歩く。
- 足の指の付け根で歩く。
- 内股で歩く。
- 片足や両足を内側に向けて歩く。
- つま先を外側に向けて歩く。
- 片足や両足を外側に向けて歩く。
また、2020年のディーキン大学の研究によると、自閉症の方の特徴的な歩行についてメタ分析を行ってみたそうです。
この研究では18件の研究をピックアップし、メタ分析を行ったんですが、結果、自閉症は、
- 歩幅が広くなる
- 歩行スピードが遅くなる(ゆっくり歩く)
- 歩行周期(右足が地面から離れる→右足が地面につく→左足が地面から離れる→左足が地面につく…っていう歩行のサイクルのこと)が長くなる
- 立脚時間(片足が地面についている時間)が長くなる
- (同じ距離でも)歩く時間が長くなる
って特徴があったみたい。
但し、歩幅や歩行スピード、歩く時間は個人差が大きかった様子。それと、歩調と歩行周期に於いては、年齢とともに顕著になるという特徴があったんだとか。
更に2010年のフロリダ大学のメタ分析によると、83件の研究をピックアップし、
- 体を動かすときの動作が滑らかに出来るか…?
- 腕の動きのバランスはどうか…?
- 歩行のバランスはどうか…?
- 姿勢のバランスはどうか…?
ってのを見てみたそうな。
すると上記のいずれも有意だったそうです。
理由として研究者は、
- 自閉スペクトラム症の方は、発達性協調運動障害(発達性協調運動症:神経疾患や練習不足じゃないのに運動スキルの獲得・使用が困難で学校生活や遊び、日常生活活動に支障が出る状態)の診断を受けるケースが多く、従って、自閉スペクトラム症の根本的な特徴と言える
としておりました。
なぜ独特な歩き方や走り方になってしまうのか…?
では、なぜこのような特徴的な歩き方や走り方になってしまうんでしょうか…?
具体的には、
- 大脳基底核:動作の順序付けを行っており、歩行を楽々と滑らかに自動的に行えるようにしてくれている(2004年のベス・イスラエル・ディーコネス・メディカル・センターの研究)
- 小脳:視覚情報と体の位置と動きの情報を用いて、姿勢の安定性を維持するための動きを調整、タイミングを計っている(2004年のジョンズ・ホプキンス大学の研究)。これにより、動作が制御され、目や耳からの情報で、体を滑らかに連携させて動かすことができる(2007年のジョンズ・ホプキンス大学の研究)
って感じらしい。
また2024年のモデナ・レッジョ・エミリア大学の研究によれば、これらの特徴的な歩き方や走り方は、運動能力や言語能力、認知能力にも関連しているそうです。
独特な歩き方や走り方は直すべきなのか…?
最後に、自閉症の方が独特な歩き方や走り方をしているときに直すべきなのか考えてみましょう。
モナシュ大学の教授の記事によれば、基本的に治療の必要はないとのこと。歩行の違いがあっても、日常生活への参加に影響がないのであれば、特別な支援は必要ないんだとか。
但し、日常生活に支障を来たしている場合は別。例えば、独特な歩き方や走り方により、
- 転倒リスクが大きくなっている
- 頻繁に転倒している
- 楽しんでいる運動に参加できない、参加が難しくなる
- 筋肉の緊張が出る
- 体に痛みが出る
って時は、医師に相談した方が良いそうです。
最後にモナシュ大学の教授が良い事を書いておりましたので引用しておきます。
- 地域共生社会というモデルは、自閉症の子どもたちが、特徴的な動き方を修正すべき問題と捉えるのではなく、自身の動き方を自分で考え選べるように支援することである。
個人的考察
「知的障がいの方やダウン症の方の運動効果を調べた研究を見てみましょう!」で、色々な研究を見てきた通り、障がいの有無にかかわらず、運動した方が良いのは間違いなさげ。
これらを見ても、本人が独特な歩き方や走り方を変えたいと思っていなければそのまま元気に楽しく運動したらいいな~と思いました。
参考文献
https://jamanetwork.com/journals/jamaneurology/article-abstract/592653
