先週の続きです。
前回は、炎症・急性炎症・慢性炎症についてチェックをしました。
今回は食事スタイルが炎症マーカーに与える影響を調べた非常に質の高い研究を見てみましょう。



食事スタイルがCRP(C反応性タンパク)に与える影響についてメタ分析のアンブレラレビューを行ってみた…!

2024年のドンナイ工科大学の研究によると、食事スタイルがCRP(C反応性タンパク)に与える影響についてメタ分析のアンブレラレビューを行ってみたそうです。
CRP(C反応性タンパク)は代表的な炎症マーカーでして、低レベルの炎症をチェックする際に良く使われるんですよね。また今まで見てきたとおり、この慢性的な低レベルの炎症(=慢性炎症)は、2型糖尿病や脂質異常症、脳卒中、心血管疾患(CVD)、いくつかのがん、全死亡率など、多くの慢性疾患に関係しているんですな。
一方で食事スタイルは腸内細菌・腸内環境、酸化ストレス、カロリーバランスなどを調節し、それによって慢性炎症や慢性疾患リスクに影響をもたらします。そして健康的な食事スタイルはこれらを抑制します。例えば地中海式ダイエットなんかですな。
ということで、健康的な食事スタイルは、慢性炎症と慢性疾患を防ぐ最初のステップとなるんですが、その効果がどれぐらいのものか分かっていない部分もあったそうです。そこで今回研究者たちは、成人のCRPレベルと食事スタイルの関係をまとめてみたんだとか。
まず最初に2023年11月15日までに発表された該当する観察研究とRCTのメタ分析をPubmed、Scopus、Epistemonikosで検索してみたそうな。すると全部で4,850件の研究がヒットしたとのこと。次にこの中で重複しているものや質の低い研究を除外していったらしい。
最終的に残ったメタ分析は27件だったそうで、特徴は以下な感じでした。

  • 観察研究のサンプル範囲:56人~7,099人
  • RCTのサンプル範囲:介入グループが28人~3,779人・コントロールグループが28人~5,041人
  • 平均年齢範囲:18歳~77歳
  • 地域:主要な研究は6大陸(アフリカ、アジア、ヨーロッパ、北米、オセアニア、南米)にまたがり、合計30ヶ国をカバー

また、今回ピックアップされた食事スタイルは以下の7つのカテゴリーに分類したそう。

それではアンブレラレビューの結果を見てみましょう。
まずはRCTのメタ分析をまとめた結果です。

  • 地中海式ダイエットはCRPレベルの低下(MD=-0.71mg/l)に最も効果があった…!
  • ベジタリアン・ビーガンはCRPレベルの低下(MD=-0.55mg/l)に2番目に効果があった…!
  • カロリー制限ダイエットはCRPレベルの低下(MD=-0.09mg/l)が見られたがエビデンスレベルが低かった。
  • プチ断食、ケトジェニックダイエット、北欧ダイエット、パレオダイエットは、CRPレベルと逆相関の関係になかった。

お次は観察研究のメタ分析の結果です。

  • メタ分析が限られていたため、MD値はベジタリアン・ビーガンとケトジェニックダイエットしかチェックできなかった。
  • ベジタリアン・ビーガンはCRPレベルの低下(MD=-0.37mg/l)が見られたがエビデンスレベルが低かった。
  • ケトジェニックダイエットはCRPレベルの低下(MD=-0.21mg/l)が見られたがエビデンスレベルが低かった。

最後にRCTのメタ分析と観察研究のメタ分析を合わせた結果を見てみましょう。

  • 地中海式ダイエットは成人におけるCRPレベルの低下(MD=-0.61mg/l)に最も顕著な効果を示した…!
  • ベジタリアン・ビーガンも成人におけるCRPレベルの低下(MD=-0.43mg/l)を示したが、それほど顕著ではなかった。
  • これらの調査結果は全て低いエビデンスレベルによって裏付けられている。
  • ケトジェニックダイエットは成人におけるCRPレベルの低下に限られた効果しか示さなかった。

CRPレベルの低下(=炎症レベルの低下)に地中海式ダイエットとベジタリアン・ビーガンが使えそうな感じですね。ただ質の高いエビデンスがないため、今後の研究で覆る可能性アリって感じ。今後の研究に期待ですねー。



個人的考察

やっぱり地中海式ダイエットはここでも出てきたかーと思いましたね。



参考文献

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39364652/