今回は、双極性障害の方の平均余命や損失生存可能年数を調べた初の系統的レビューとメタ分析を見てみます。



双極性障害の方の平均余命や損失生存可能年数を調べた初の系統的レビューとメタ分析

2022年の香港大学の研究によると、双極性障害における平均余命と損失生存可能年数(YPLL)について系統的レビューとメタ分析を行ってみたそうです。
双極性障害(躁うつ病)は、人口の1%以上が罹患する重度の精神障がいでありまして、一般人口に比べて約2~3倍死亡率が高いと先行研究で出ております。また、非自然死の主な原因として自殺の割合が高いことも分かっているんですね。
そんな双極性障害ですが、医療の進歩によって一般人口の平均寿命は延びているにも関わらず、ここ数十年で双極​​性障害の方の平均寿命は低下しているそうな。例えば双極性障害の方の平均余命と損失生存可能年数(YPLL)を調べた先行研究によれば、一般人口と比較して平均10~15年程寿命が短かったらしい。しかし、これまで双極性障害の方の平均余命や損失生存可能年数を調べた系統的レビューとメタ分析はなかったとのこと。そこで今回、初のメタ分析を行ってみることにしたんだとか。
まず最初に2021年3月31日までに発表された該当する研究をEmbase、Medline、PsycINFO、Web of Scienceで検索してみたそうです。すると合計18,412件の研究がヒットしたそうな。次にこの中で重複したものを除外、その後基準に従って各研究の質をチェックしたとのこと。
最終的に選ばれた研究は13件だったらしく、そのうちの11件では平均余命と損失生存可能年数を調べており、残りの2件では損失生存可能年数のみを調べていたんだとか。
また今回のメタ分析のサンプルに関しては、

  • 平均余命の総サンプル数:96,601人
  • 損失生存可能年数の総サンプル数:128,989人
  • サンプル数の範囲:345人~28,512人(中央値5,096人)

って感じだったらしく、国もアフリカ(エチオピア)、アジア(台湾、イスラエル)、ヨーロッパ(デンマーク、フィンランド、イギリス、スウェーデン)、北アメリカ(アメリカ)と割と世界中からピックアップしたみたい(残念ながら日本の研究はありませんでした)
それでは結果を見ていきます。

  • 双極性障害の方の平均余命:66.88歳
  • 双極性障害の男性の平均余命:64.59歳(女性より有意に低い)
  • 双極性障害の女性の平均余命:70.51歳
  • 地域における平均寿命:アフリカ54.12歳(最も低い)、アジア67.97歳、ヨーロッパ67.33歳、北アメリカ65.60歳
  • 調査期間ごとの平均余命:2000~2005年62.71歳(最も低い)、2006~2010年69.12歳、2011~2015年66.49歳
  • 双極性障害の方の損失生存可能年数:12.89年
  • 双極性障害の男性の損失生存可能年数:11.77年(女性よりわずかに多い)
  • 双極性障害の女性の損失生存可能年数:10.55年
  • 地域における損失生存可能年数:アフリカ29.00年(最も高い)、北アメリカ21.70年、アジア12.29年、ヨーロッパ12.05年
  • 調査期間ごとの損失生存可能年数:2000~2005年17.71年(最も高い)、2006~2010年12.76年、2011~2015年12.71年
  • 自然死の損失生存可能年数:5.94年
  • 非自然死の損失生存可能年数:5.69年

まとめると、残念ながら双極性障害の方は一般人口に比べて平均余命が短く、失われた寿命は約13年程だったみたいです。



個人的考察

以前に紹介した2017年のコペンハーゲン大学の系統的レビューとメタ分析によると、統合失調症における平均余命は64.7歳、損失生存可能年数は14.5年だったので、双極性障害の方は統合失調症の方よりも平均余命が高く、損失生存可能年数は低いみたいです。



参考文献