【加筆内容】高血圧に最も良い食事法「DASHダイエット」の研究を見てみる! その3「2023年時点における最大規模の血圧と食事研究の話」
2023年時点における最大規模の血圧と食事研究の話
2023年のキングサウード大学の研究によると、高血圧の予防と血圧管理における食事の役割についてRCTと観察研究のメタ分析のアンブレラレビューを行ってみたそうです。
そもそも2017年の米国心臓病学会(ACC)とアメリカ心臓協会(AHA)のガイドラインによれば、高血圧は収縮期血圧が130mmHg以上で拡張期血圧が80mmHg以上と定義されております(日本と若干違う)。そして2021年のNCD-RisCの研究により、2019年の30~79歳における高血圧の世界的有病率は、女性32%、男性34%だったそうな。つまり3人に一人は高血圧ってことで、世界的な問題の一つと言えるでしょう。
そのため、高血圧に対する様々な食事の役割を調べた研究がいくつも発表されておりました。但し個々の食生活パターンや食品グループ、特定の食品の効果、飲料、主要栄養素、微量栄養素を調べた研究は発表されてきたものの、これらを一元的・網羅的に血圧との関係を調べた研究は存在していなかったらしい。
そこで今回研究者たちはRCTと観察研究のメタ分析をまとめたアンブレラレビューを行い、ガッツリ調べてみることにしたんだとか。
ということで、まず最初に2021年10月31日までに発表された該当するRCTのメタ分析又は観察研究のメタ分析をPubMed(MEDLINE)、Embase、Web of Science、コクランで検索してみたそうな。また、手動でもチェックしてみたらしい。
その結果、
- PubMed(MEDLINE):7,420件
- Embase:5,561件
- Web of Science:7,676件
- コクラン:8件
- 手動検索:2件
と言った感じで、合計20,677件ものメタ分析が見つかったそうです。
続いてこの中で重複している研究や質の低い研究を除外していったそうで、最終的に175件の研究がピックアップできたんだとか。
この175件の研究の内訳は、
- RCTのメタ分析:145件、うちメタ分析の数は341件
- 観察研究のメタ分析:30件、うちメタ分析の数は70件
だったそうで、主要な研究地域は、ヨーロッパ(119件)、北アメリカ(106件)、アジア(87件)って感じ。その他も一応見ておくと、中東(61件)、オーストラリアとニュージーランド(50件)南米(36件)、アフリカ(10件)って感じでした。世界中から選ばれている感じでかなりの規模ですよね。
続いて、RCTのメタ分析と観察研究のメタ分析の特徴もチェックしておきましょう。
【RCTのメタ分析の特徴】
- メタ分析に含まれる研究数の範囲:2件~91件
- サンプル数の範囲:69人~36,806人
- 期間の範囲:1時間~7年
【観察研究のメタ分析の特徴】
- 高摂取と低摂取の比較:30件
- 上記のうち高摂取と低摂取の比較と用量反応関係の報告:9件
- 用量反応関係の報告のみ:3件
- メタ分析に含まれる研究数の範囲:2件~41件
- サンプル数の範囲:5,560人~640,525人
- 期間の範囲:1.3年~38年
それでは、2023年時点における最大規模の血圧と食事研究の結果をじっくり見ていきましょうか…。
結果①:食事スタイル(食事パターン)
まずはどのような食事スタイル(食事パターン)が血圧に良いのかです。
RCTのメタ分析をアンブレラレビューしてみた結果、
【エビデンスレベルが高かった食事スタイル】
- DASHダイエット:収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に低下していた…!
- 超糖質制限ダイエット(ケトジェニックダイエット):拡張期血圧が有意に低下していた…!
【エビデンスレベルが中程度の食事スタイル】
- 低ナトリウム食&高カリウム食:収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に低下していた…!
- カロリー制限ダイエット:収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に低下していた…!
- 低脂肪食:収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に低下していた…!
- 糖質制限ダイエット(低炭水化物食):収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に低下していた…!
- 地中海式ダイエット:収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に低下していた…!
- 高一価不飽和脂肪酸(MUFA)食:収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に低下していた…!
- ベジタリアン食:収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に低下していた…!
とのこと。
その他の食事法は、有意ではない低下やエビデンスレベルが非常に低い物だったそうです。
続いて、観察研究のメタ分析をアンブレラレビューしてみた結果なんですが、
- エビデンスレベルが高かった、中程度の食事スタイルはなかった…。
とのこと。
どれもエビデンスレベルが低い又は非常に低い物のみだったみたい。
結果②:肉・卵・魚
次は肉・卵・魚と血圧の関係についてです。
それぞれのメタ分析をアンブレラレビューしてみた結果がこちら。
もしかしたら卵と魚は良いのかも…?って感じで、あんまり参考にならない感じですね。
結果③:乳製品
次は乳製品と血圧の関係についてです。
それぞれのメタ分析をアンブレラレビューしてみた結果がこちら。
- RCTのメタ分析:エビデンスレベルが高い、非常に低い物はなかった。エビデンスレベルが中程度な物として、ラクトトリペプチドの摂取は収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に低下していた。成分無調整乳製品と低脂肪乳製品はエビデンスレベルの低い研究があった。
- 観察研究のメタ分析:エビデンスレベルが高い物はなかった。エビデンスレベルが中程度な物として、成分無調整乳製品、低脂肪乳製品、牛乳、発酵乳製品の摂取は高血圧が有意に低下していた。成分無調整乳製品、ヨーグルト、チーズ、液体乳製品はエビデンスレベルの低い研究があった。
乳製品もパッとしない結果ですねー。
こちらも参考にはなりそうにないです。
結果④:果物と野菜
次は果物と野菜と血圧の関係についてです。
それぞれのメタ分析をアンブレラレビューしてみた結果がこちら。
果物については、ブルーベリー(ベリー類)が一番可能性がありそうですね。野菜については特定の物ってことはなさそうな感じ。
結果⑤:でんぷん質の食品(穀物とジャガイモ)
次はでんぷん質の食品(穀物とジャガイモ)と血圧の関係についてです。
それぞれのメタ分析をアンブレラレビューしてみた結果がこちら。
- RCTのメタ分析:エビデンスレベルが高い、中程度、非常に低い物はなかった…。エビデンスレベルが低い研究のみあった。
- 観察研究のメタ分析:エビデンスレベルが高い、中程度、低い物はなかった…。エビデンスレベルが非常に低い研究のみあった。
こちらは参考になりませんねー。
結果⑥:豆類
次は豆類と血圧の関係についてです。
それぞれのメタ分析をアンブレラレビューしてみた結果がこちら。
- RCTのメタ分析:エビデンスレベルが高い、非常に低い物はなかった。エビデンスレベルが中程度な物として豆類で収縮期血圧が有意に低下していた。エビデンスレベルが低い研究もあった。
- 観察研究のメタ分析:エビデンスレベルが高い、中程度、低い物はなかった…。エビデンスレベルが非常に低い研究のみあった。
こちらも参考になりませんねー。
結果⑦:ナッツ類と種子類
次はナッツ類と種子類と血圧の関係についてです。
それぞれのメタ分析をアンブレラレビューしてみた結果がこちら。
- RCTのメタ分析:エビデンスレベルが高い物として亜麻仁(アマニ)の摂取で収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に低下していた…!エビデンスレベルが中程度の物として、ゴマ、ニゲラの種の摂取で収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に低下、クルミの摂取で収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意ではない低下をしていた。エビデンスレベルが低い、非常に低い研究もあった。
- 観察研究のメタ分析:エビデンスレベルが高い、中程度、低い物はなかった…。エビデンスレベルが非常に低い研究(ナッツ類)のみあった。
亜麻仁の種のみ良さそうですが、なかなか実践していくとなると難しそうですねー。
- RCTのメタ分析:エビデンスレベルが高い、低い、非常に低い物はなかった。エビデンスレベルが中程度な物としてココアの摂取で収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に低下していた…!
- 観察研究のメタ分析:エビデンスレベルが高い、中程度、低い物はなかった。エビデンスレベルが非常に低い研究のみあった。
ココアがまぁまぁ良さそうって感じですね。
結果⑨:ハーブ・スパイス・調味料
次はハーブ・スパイス・調味料と血圧の関係についてです。
メタ分析をアンブレラレビューしてみた結果がこちら。
- RCTのメタ分析:エビデンスレベルが高い物はなかった。エビデンスレベルが中程度な物としてシナモンの摂取で収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に低下していた…!エビデンスレベルが低い、非常に低い研究もあった。
シナモンもまぁまぁ良さそうって感じですね。
結果⑩:飲料
次は飲料と血圧の関係についてです。
それぞれのメタ分析をアンブレラレビューしてみた結果がこちら。
紅茶、緑茶、アルコールがまぁまぁ良さそうって感じですね。
結果⑪:炭水化物・食物繊維・糖質
次は炭水化物・食物繊維・糖質と血圧の関係についてです。
それぞれのメタ分析をアンブレラレビューしてみた結果がこちら。
- RCTのメタ分析:エビデンスレベルが高い物はなかった。エビデンスレベルが中程度な物としてサイリウム(オオバコ)、イノシトールの摂取で収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に低下していた…!またエビデンスレベルが中程度な物としてイヌリンの摂取で収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意ではない低下をしていた。エビデンスレベルが低い、非常に低い研究もあった。食物繊維はエビデンスレベルが低い物のみだった。エビデンスレベルが中程度な物として糖質の摂取で収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に増加していた…。またエビデンスレベルが中程度な物として果糖の摂取で拡張期血圧が有意に低下していた…!
- 観察研究のメタ分析:エビデンスレベルが高い、中程度、低い物はなかった。エビデンスレベルが非常に低い研究はあった。
オオバコとイノシトール(米ぬかとか)が良さそうなのと糖質は良くなさそうな感じでしたねー。
結果⑫:タンパク質
次はタンパク質と血圧の関係についてです。
それぞれのメタ分析をアンブレラレビューしてみた結果がこちら。
- RCTのメタ分析:エビデンスレベルが高い、非常に低い物はなかった。エビデンスレベルが中程度な物としてソイプロテインの摂取で収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に低下していた…!エビデンスレベルが低い研究もあった。
- 観察研究のメタ分析:エビデンスレベルが高い、中程度、低い物はなかった。エビデンスレベルが非常に低い研究はあった。
ソイプロテインがまぁまぁ良さげですねー。
結果⑬:脂質・油(オイル)
次は脂質・油(オイル)と血圧の関係についてです。
それぞれのメタ分析をアンブレラレビューしてみた結果がこちら。
- RCTのメタ分析:エビデンスレベルが高い物はなかった。エビデンスレベルが中程度な物としてEPAとDHAの摂取で収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に低下していた…!またエビデンスレベルが中程度な物としてオリーブオイルの摂取で収縮期血圧が有意ではない低下をしていた。エビデンスレベルが低い、非常に低い研究もあった。
- 観察研究のメタ分析:エビデンスレベルが高い、中程度、低い物はなかった。エビデンスレベルが非常に低い研究はあった。
どうやらオメガ3脂肪酸のサプリはまぁまぁ効果がありそうですねー。
尿中カリウム濃度が高い場合はかなり信頼できるみたいですね。また、減塩、塩の代替品の使用、マグネシウムサプリも効果がありそうな感じ。
ビタミンについてはマルチビタミンがかなり良さそうか感じで、ビタミンC、マルチビタミン、ビタミンDも期待して良いかもって感じですね。
結果⑭:ミネラル
次はミネラルと血圧の関係についてです。
それぞれのメタ分析をアンブレラレビューしてみた結果がこちら。
- RCTのメタ分析:エビデンスレベルが高い物として尿中カリウム濃度が高い場合、収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に低下していた…!エビデンスレベルが中程度の物として、低ナトリウム又は塩の代替品、マグネシウムの摂取で収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に低下、クロムの摂取で収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意ではない低下をしていた。エビデンスレベルが低い、非常に低い研究もあった。
- 観察研究のメタ分析:エビデンスレベルが高い、中程度の物はなかった。エビデンスレベルが低い、非常に低い研究はあった。
尿中カリウム濃度が高い場合はかなり信頼できるみたいですね。また、減塩、塩の代替品の使用、マグネシウムサプリも効果がありそうな感じ。
結果⑮:ビタミン
次はビタミンと血圧の関係についてです。
それぞれのメタ分析をアンブレラレビューしてみた結果がこちら。
ビタミンについてはマルチビタミンがかなり良さそうか感じで、ビタミンC、マルチビタミン、ビタミンDも期待して良いかもって感じですね。
- RCTのメタ分析:エビデンスレベルが高い物としてニュートリグレード製品の摂取で収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に低下していた…!エビデンスレベルが中程度の物として、ラクトバチルスプランタルムサプリメントの摂取で収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に低下、発酵乳の摂取で収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意ではない低下をしていた。
プロバイオティクスも物によっては効果がありそうですね。
結果⑰:ポリフェノール
次はポリフェノールと血圧の関係についてです。
メタ分析をアンブレラレビューしてみた結果がこちら。
- RCTのメタ分析:エビデンスレベルが高い物としてブドウの摂取で収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に低下していた…!エビデンスレベルが中程度の物として、ブドウ種子抽出物とアントシアニン(ベリー類、赤ブドウ、赤ワイン)で収縮期血圧がケルセチンで拡張期血圧が、フラバノール、プロアントシアニジンの摂取で収縮期血圧・拡張期血圧がそれぞれ有意に低下、アントシアニンサプリメントの摂取で収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意ではない増加、レスベラトロールサプリメント、ブドウ種子抽出物の摂取で収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意ではない低下をしていた。エビデンスレベルが低い研究もあった。
- 観察研究のメタ分析:エビデンスレベルが高い、中程度の物はなかった。エビデンスレベルが低い、非常に低い研究はあった。
ポリフェノールもブドウやベリー類は良さそうですし、ケルセチン、フラバノールも期待できそうですね。
結果⑱:植物化学物質
次は植物化学物質と血圧の関係についてです。
メタ分析をアンブレラレビューしてみた結果がこちら。
植物ステロール、グリーンコーヒー抽出物、緑茶抽出物、クロロゲン酸が良い感じみたいですね。
- RCTのメタ分析:エビデンスレベルが高い物として硝酸塩で収縮期血圧が有意に低下していた…!エビデンスレベルが中程度の物として、硝酸塩で拡張期血圧が有意に低下していた…!
葉物野菜に多い硝酸塩も良い感じなんですね。
- RCTのメタ分析:エビデンスレベルが高い物としてステビオール(ステビア)で拡張期血圧が有意に低下していた…!エビデンスレベルが中程度の物として、ステビオシド(ステビア)の摂取で収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意に低下していた…!
意外にもステビアは血圧低下に役立つんですねー。
結果:その他
最後はその他と血圧の関係についてです。
メタ分析をアンブレラレビューしてみた結果がこちら。
- RCTのメタ分析:エビデンスレベルが中程度の物として、アスタキサンチンサプリメントの摂取で収縮期血圧・拡張期血圧ともに有意ではない低下をしていた…!
こちらはオマケ情報みたいな感じですね。
まとめ
これらのデータを見た結果のまとめを確認して終わりにします。
- DASHダイエットは血圧を下げるのに最も効果的な食事スタイルだった…!
- DASHダイエットは高血圧の薬の治療に匹敵する効果があり、これは地中海式ダイエットでも同様の結果が得られた…!
- DASHダイエット、超糖質制限ダイエット(ケトジェニックダイエット)(拡張期血圧のみ)、亜麻仁、硝酸塩(収縮期血圧のみ)、尿中カリウム濃度、マルチビタミン・マルチミネラル(拡張期血圧のみ)、ステビオール(拡張期血圧のみ)、プロバイオティクス、硝酸塩(収縮期血圧のみ)、ブドウとその製品は、エビデンスレベルが高く、信頼性が変わることはなさそうだった…!
ということで高血圧対策には、やっぱりDASHダイエットがオススメです…!
個人的考察
血圧にお悩みの方はぜひ参考にしてみてください…!