アンブレラレビューを見てみよう!」シリーズの続きです。
今週の土日はセムナン医科大学のアンブレラレビューを見てみます。



魚の摂取と慢性疾患リスクについてアンブレラレビューを行ってみた…!

2020年のセムナン医科大学の研究によると、魚の摂取と慢性疾患リスクについてアンブレラレビューを行ってみたそうです。
皆さんご存知の通り、魚にはオメガ3脂肪酸(EPA、DHA)が豊富に含まれておりまして、これにより心血管疾患や高血圧、体内炎症、酸化ストレスなど、様々な健康リスクを下げてくれると先行研究で出ております。
んがしかし、それらがどの程度信頼できるエビデンスなのか、あんまりチェックされていないのが実情でした。そこで今回アンブレラレビューを用いてガッツリ見てみることにしたんだとか。
まず研究者たちは、2019年10月までに発表された該当する前向きコホート研究のメタ分析をPubMedとScopusで検索してみたそうな。すると3,265件の研究がヒットしたとのこと。次にこの中で重複している物や質の低い研究を除いていったそうで、最終的に残ったメタ分析は34件だったみたい。
それでは結果を見ていきましょう。
まずは魚の摂取と心血管代謝疾患や死亡リスクについてです。

  • 心筋梗塞:1日100g食べると25%(RR0.75)減る(エビデンスレベル:普通)
  • 心血管疾患による死亡リスク:1日100g食べると25%(RR0.75)減る(エビデンスレベル:普通)
  • 心不全:1日100g食べると20%(RR0.80)減る(エビデンスレベル:普通)
  • 脳卒中:1日100g食べると14%(RR0.86)減る(エビデンスレベル:普通)
  • 冠状動脈性心疾患:1日100g食べると12%(RR0.88)減る(エビデンスレベル:普通)
  • 全死亡率:1日100g食べると8%(RR0.92)減る(エビデンスレベル:普通)
  • 心不全(魚のフライを食べた場合):食べる頻度が高いと40%(RR1.40)増える(エビデンスレベル:低い)
  • 冠状動脈性心疾患による死亡率:1日100g食べると35%(RR0.65)減る(エビデンスレベル:低い)
  • 2型糖尿病(オメガ3脂肪酸が多い魚を食べた場合):食べる頻度が高いと11%(RR0.89)減る(エビデンスレベル:低い)
  • 冠状動脈性心疾患(オメガ3脂肪酸が多い魚を食べた場合):食べる頻度が高いと15%(RR0.85)減る(エビデンスレベル:低い)
  • 高血圧:1日100g食べると5%(RR1.05)増える(エビデンスレベル:低い)
  • 心房細動(不整脈):1日100g食べると40%(RR0.60)減る(エビデンスレベル:低い)
  • 2型糖尿病:1日100g食べると9%(RR1.09)増える(エビデンスレベル:低い)
  • メタボ:1日100g食べると40%(RR0.60)減る(エビデンスレベル:非常に低い)
  • 心不全(魚のフライ以外を食べた場合):食べる頻度が高いと31%(RR0.69)減る(エビデンスレベル:非常に低い)
  • 2型糖尿病(赤身魚を食べた場合):食べる頻度が高いと4%(RR0.96)減る(エビデンスレベル:非常に低い)
  • 冠状動脈性心疾患(赤身魚を食べた場合):食べる頻度が高いと2%(RR0.98)減る(エビデンスレベル:非常に低い)

次は魚の摂取とがんリスクについてです。

  • 肝臓がん:1日100g食べると35%(RR0.65)減る(エビデンスレベル:普通)
  • 骨髄性白血病:食べる頻度が高いと40%(RR1.60)増える(エビデンスレベル:低い)
  • 胃がん:1日100g食べると16%(RR1.16)増える(エビデンスレベル:低い)
  • 前立腺がんによる死亡率:食べる頻度が高いと63%(RR0.37)減る(エビデンスレベル:低い)
  • 膀胱がん:食べる頻度が高いと14%(RR0.86)減る(エビデンスレベル:低い)
  • 大腸がん:1日100g食べると7%(RR0.93)減る(エビデンスレベル:低い)
  • 全てのがん死亡率:1日100g食べると2%(RR0.98)減る(エビデンスレベル:低い)
  • 乳がん:1日100g食べると0%(RR1.00)と変わらない(エビデンスレベル:低い)
  • 前立腺がん:食べる頻度が高いと2%(RR1.02)増える(エビデンスレベル:低い)
  • 卵巣がん:食べる頻度が高いと4%(RR1.04)増える(エビデンスレベル:低い)
  • 膵臓がん:1日100g食べると6%(RR1.06)増える(エビデンスレベル:低い)
  • 食道がん:食べる頻度が高いと13%(RR0.87)減る(エビデンスレベル:非常に低い)
  • 多発性骨髄腫:食べる頻度が高いと6%(RR0.94)減る(エビデンスレベル:非常に低い)
  • 肺がん:食べる頻度が高いと5%(RR0.95)減る(エビデンスレベル:非常に低い)
  • 慢性リンパ性白血病:食べる頻度が高いと1%(RR0.99)減る(エビデンスレベル:非常に低い)
  • 子宮内膜がん(子宮体がん):1日100g食べると0%(RR1.00)と変わらない(エビデンスレベル:非常に低い)
  • 白血病:食べる頻度が高いと2%(RR1.02)増える(エビデンスレベル:非常に低い)
  • 口腔がん:食べる頻度が高いと3%(RR1.03)増える(エビデンスレベル:非常に低い)
  • 腎臓がん:食べる頻度が高いと7%(RR1.07)増える(エビデンスレベル:非常に低い)
  • 非ホジキンリンパ腫:食べる頻度が高いと8%(RR1.08)増える(エビデンスレベル:非常に低い)

最後は魚の摂取とその他についてです。

  • うつ病:食べる頻度が高いと12%(RR0.88)減る(エビデンスレベル:普通)
  • アルツハイマー病:1日100g食べると59%(RR0.41)減る(エビデンスレベル:低い)
  • 加齢黄斑変性(全体):1日100g食べると56%(RR0.44)減る(エビデンスレベル:低い)
  • 関節リウマチ:1日100g食べると25%(RR0.75)減る(エビデンスレベル:低い)
  • ウエスト周りの肥満:1日100g食べると17%(RR0.83)減る(エビデンスレベル:低い)
  • 股関節の骨折:食べる頻度が高いと8%(RR0.92)減る(エビデンスレベル:低い)
  • 加齢黄斑変性(後期):食べる頻度が高いと24%(RR0.76)減る(エビデンスレベル:非常に低い)
  • 加齢黄斑変性(前期):食べる頻度が高いと22%(RR0.78)減る(エビデンスレベル:非常に低い)
  • 認知症:1日100g食べると35%(RR0.65)減る(エビデンスレベル:非常に低い)
  • 喘息:食べる頻度が高いと10%(RR0.90)減る(エビデンスレベル:非常に低い)
  • 炎症性腸疾患:食べる頻度が高いと12%(RR1.12)増える(エビデンスレベル:非常に低い)

いずれも太字黄色の物は信頼して良い感じですね。その他の物は可能性アリって感じや関係ないものとなっております。
以上の結果をまとめると、

  • 魚の摂取は、全死亡率、心血管疾患による死亡リスク、冠状動脈性心疾患リスク、心筋梗塞リスク、脳卒中リスク、心不全リスク、うつ病リスク、肝臓がんリスクの低下に役立つ…!

って感じ。



個人的考察

因みに魚の摂取は、地中海式ダイエットDASHダイエットはもちろん、日本食でも主要な構成要素の1つとなっております。その辺も踏まえると今回の結果は納得できますし、積極的に食べていきたいと思いますね。



参考文献