【まとめ】テロメア・テロメラーゼってなに?守るにはどうすれば良いのか?
当ブログのいくつかの記事に「テロメア」ってのが出てきます。
テロメアってなに…?
テロメアは遺伝暗号の保護に役立つ染色体の先端のキャップのことを言いまして、もうちょい分かりやすく言いますと、遺伝子を守る保護キャップって感じです。
んでテロメアの長さで寿命が分かるかもと言われているんですな。2000年のカリフォルニア大学の研究や2012年のカリフォルニア大学の研究、2013年のオビエド大学の研究によりテロメアは、通常、年をとるにつれて短くなるみたいでして、ここからテロメアの短さは老化の指標になるみたいなんですよ。
またテロメアが短くなると糖尿病など慢性疾患リスクや癌リスクが高まるなどとも言われていたり。そういった健康リスクの高まりの原因ははっきりしていないものの、2011年のカリフォルニア大学の研究や2014年のニューカッスル大学の研究を見てみると、全身の酸化ストレスと炎症(慢性炎症)が関係あるかもしれないみたいです。
もうちょいこの当たりを詳しく知りたい方用に書いておくと、テロメア研究の始まりは、エリザベス・ブラックバーン博士の1978年の研究でして、テトラヒメナのテロメアの長さが様々であることから始まります。その後、テロメラーゼという酵素を発見、更にテトラヒメナだけでなく、ヒトを含む真核生物に見られると分かるんですよ。
そしてマウス実験により、テロメラーゼが存在しないマウスはテロメアの短くなるスピードがアップし、老化が加速、加齢による病気の発症スピードが速まったり、短命になったんだとか。
これらからテロメラーゼの増加は長寿のカギとなる可能性が示唆されております。因みにこのテロメア・テロメラーゼ研究により、ブラックバーン博士は2009年のノーベル生理学・医学賞を受賞しております(更に詳しく知りたい方は2010年のスペイン国立がん研究センター(CNIO)の研究をご覧ください)
テロメアを守るにはどうすれば良いのか…?
そんな大事なテロメアの短くなるのを防ぐにはどうすれば良いのでしょうか…?
1997年のコールド・スプリング・ハーバー研究所の研究によって、テロメアの短縮はテロメラーゼによって打ち消されることが分かっておりますが、実際どうしたらいいのか…?ってことですね。
現時点で可能性のありそうなものは以下な感じみたい。
テロメアの維持に関係なくやっておいて損はない物ばかりですね。
長いテロメアでがんリスクが逆に増えるかも…?って研究が発表された…!
2023年のジョンズ・ホプキンス大学の研究によると、長いテロメアのリスクについて調べてみたそうです。
そもそもテロメアは細胞分裂とともに短くなりまして、短くなったテロメアはDNAの損傷のシグナルとなります。つまり老化やアポトーシス(細胞の自殺)の指標になるんですな。そのためテロメアが短くなるのを防ぐのが長寿のカギ…!と言われておりました。
んがしかし、テロメアが長いと良いのかまではよく分かっていなかったんですよね。そこで今回、生まれつきテロメアが長い人を対象に調べてみることにしたらしい。
まず研究者たちは、テロメアの長さを制御する遺伝子「POT1」が変異した人、つまり、生まれつき長いテロメアを持つ人を探してみたそうな。
すると、血縁関係のない5組の家族から17人の変異した人と21人の変異していない人を見つけることが出来たとのこと。次にこの中で生存していた13人のテロメアの長さを計ってみたそうな。
すると、13人全員の平均のテロメアの長さは、21人の変異していない人よりも長かったみたい。その後、2年間にわたって、追跡調査を行い、健康リスクとの関連性をチェックしてみたんだとか。
その結果、生まれつきテロメアが長い人は、
- リンパ腫や骨髄がんなど様々ながんリスクが高かった…。
- その子孫はがんの発症リスクがますます早まっていた…。
- 但し、テロメアの長さは2年にわたって維持されていた。
とのこと。あれま~な結果ですね…。
ではなぜこんなにもガンリスクが高いかと言いますと、テロメアが長いことによって、本来消えるはずのガン化する細胞がそのまま消えずに生き残っちゃうから。つまり、テロメアが長いと細胞の寿命が長くなるけど、一方でそれは良い細胞も悪い細胞も寿命が長くなる事を意味し、結果としてガンリスクを高めてしまうと。う~ん。難しい…。
ということでテロメアが長すぎるのも考え物というお話でした。
今後の研究でこの辺が更に分かってくるのを注視していきたいですね~。
テロメアの長さで抗うつ薬(SSRI)の効果が変わるのか…?
2023年のカリフォルニア大学の研究によると、テロメアの長さで抗うつ薬の効果が変わるのか調べてみたそうです。
そもそもWHOによれば、うつ病(大うつ病)は世界の成人のおよそ5%に影響を及ぼしておりまして、また2018年のコロンビア大学の研究によれば、その生涯有病率は15%なんだとか。
そんなうつ病(大うつ病)は、メンタルを落ち込ませるだけでなく、糖尿病や心血管疾患、肥満などといった老化に伴う疾患リスクを上げたり、早期死亡率を上げたりもしているみたいです。これらの関係のメカニズムははっきり分かっていないものの、どうやらストレス調節の機能不全や代謝の調節機能不全が原因っぽい。
一方で、テロメアは染色体の先端にある保護キャップの事を言いまして、これは細胞分裂のたびに短くなる傾向があり、実際に短くなると、細胞の老化やアポトーシス(細胞の自殺)につながる可能性があるんですな。
また、細胞分裂で短くなるほかにも、DNAの損傷、精神的なストレス、食事と肥満、喫煙、炎症や酸化ストレスなんかでも短くなる傾向があるみたい。
これらうつ病とテロメアの長さの関係を調べた先行研究はいくつかありまして、
って感じなんですが、結果はバラバラだったりします。
また2011年のカリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究や2014年のアムステルダム自由大学の研究、2012年のブルゴーニュ大学の研究では、うつ病の人とそうでない人に差がなかったともでているんですな。ということでまだこの辺はよく分かっていないみたい。
ただうつ病とテロメアの関係は違う視点からも調べられておりまして、同研究チームが行った2016年の研究によると、テロメアが長いとSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に対する効きが良くなったそうです。
その後、
- 2015年の中南大学の研究:統合失調症における抗精神薬
- 2016年のスタンフォード大学の研究:大うつ病における補助薬としてのピオグリタゾン(アクトス)
- 2013年のカロリンスカ研究所の研究:双極性障害におけるリチウム(治療薬)
で、テロメアが短いと特定の精神薬の効きが悪くなるとも出たそうです。
但し抗うつ薬とテロメアの長さを前向きコホート研究で調べたものは今のところなかったらしい。そこで今回チェックしてみることにしたんだとか。
この研究は投薬治療を受けていないうつ病の患者さん48人が参加したもので、平均年齢は34.9歳、48人のうち女性は26人(女性の割合54.2%)、平均BMIは25.2だったそうな。また、喫煙の有無については、
- 一度もタバコを吸ったことがない:31人(64.6%)
- 以前にたばこを吸っていたが現在は吸っていない:13人(27.1%)
- 現在タバコを吸っている:4人(8.3%)
って感じ。
まずはこの方々のテロメアの長さを測り、次に抗うつ薬(SSRI)による治療を8週間行ったそうな。その後、再度テロメアの長さを測りつつ、また他の関係性も併せてチェックしたとのこと。
結果、
- 治療前におけるテロメア・テロメラーゼと治療前のうつ病の重症度・慢性度は有意な関係がなかった…。
- 治療前におけるテロメアの長さと治療前の不安スコアは有意な逆相関の関係があった…!
- テロメアが長い程、抗うつ薬(SSRI)の治療に対する反応が良かった…!
- 治療前におけるテロメアの長さとアロスタティック負荷(慢性ストレスのダメージ度)は有意な逆相関の関係があった…!
- 治療前におけるテロメアの長さと心血管疾患リスク因子(血圧やコレステロール値など)は有意な逆相関の関係があった…!
とのこと。
先行研究の結果同様、テロメアが長いと抗うつ薬(SSRI)の効きが良くなるみたいですね。
また慢性ストレスによるダメージが少ない人、心血管疾患リスクの低い健康な人もテロメアが長かったみたい。この辺も先行研究の結果と同様ですな。
因みに2004年のカリフォルニア大学の研究によると、うつ病でない人でも慢性ストレスの期間とダメージ度がテロメアの長さと有意に関係していたと出ております。
そのため、ストレス対策はここでも重要なポイントと言えそうです。
個人的考察
まだまだ分からないことが多いテロメアですが、引き続き注視していきたい分野ですね~。