先週の続きです
今回は「知的障がい以外の障がいを持つ方の平均寿命は短いのか? 眼疾患・視覚障害の方編3」でご紹介した研究チームがブルーマウンテンズ眼科研究を更新して再度調べ直してみた研究を見てみます。



シドニー西部に住む人を11年間追いかけ眼疾患・視覚障害と平均寿命を調べてみた…!

2007年のシドニー大学の研究によると、ブルーマウンテンズ眼科研究を用いて眼疾患・視覚障害と平均寿命の関係を調べてみたそうです。
この研究は以前に登場したブルーマウンテンズ眼科研究を使ったもので、始まりは1992年~1994年となっております。サンプル数は3,654人でして、2003年12月31日までの死亡率と死因をチェックしたそうな。つまり以前の研究をアップデートしてみたってことですね。
最後にデータを統計処理してみたところ、

  • 追跡期間:累積追跡期間は11年、中央値は10.7年だった
  • サンプル数:最終的なサンプル数は3,633人だった
  • 亡くなった方:1,051人(28.9%)の方が亡くなっていた。そのうち483人(13.3%)は血管系が原因で亡くなっていた
  • 亡くなった方の特徴:高齢、男性、喫煙者、低体重、糖尿病歴あり、高血圧歴あり、狭心症歴あり、急性心筋梗塞歴あり、脳卒中歴ありだった
  • 視覚障がい者の割合:視覚障がい者は132人(3.6%)だった。そのうち24人は75歳未満の参加者だった。108人はスタート時点で75歳以上だった

という特徴があったみたい。
では結果を見てみましょう。

  • 年齢調整死亡率(年齢別死亡率)で見てみると、全死亡率は視覚障がいのある人が54.0%、視覚障がいのない人が34.0%だった。
  • 視覚障がいと生存率低下の関係を見てみると、年齢と性別を調整した場合、40%(HR1.4)高かった。
  • 視覚障がいと生存率低下の関係を見てみると、全ての変数を調整した場合、30%(HR1.3)高かった。但し有意差はなかった。
  • 75歳未満だと、視覚障がいで全死亡率が高くなりそうだった(HR2.9)
  • 75歳未満でも視覚障がいで全死亡率が高くなりそうだったが、変数(中性脂肪やフィブリノゲン、学歴、歩行障害)を調整すると低くなった(HR1.97)
  • 年齢調整死亡率(年齢別死亡率)で見てみると、加齢黄斑変性による死亡率は視覚障がいのある人が45.8%、視覚障がいのない人が33.7%だった。
  • 加齢黄斑変性と生存率低下の関係を見てみると、全ての変数を調整した場合、有意差はなかった(HR1.0)
  • 75歳未満だと、加齢黄斑変性で全死亡率が高くなりそうだった(HR1.7)
  • 75歳未満における加齢黄斑変性の全死亡率は、変数(中性脂肪やフィブリノゲン、学歴、歩行障害)を調整した後も、変わらなかった(HR1.6)
  • 75歳未満で、早期に加齢黄斑変性になった場合の全死亡率(HR1.5)、後期に加齢黄斑変性になった場合の全死亡率(HR2.5)ともに有意に高くなっていた。
  • 年齢調整死亡率(年齢別死亡率)で見てみると、全白内障による死亡率は視覚障がいのある人が39.2%、視覚障がいのない人が29.5%だった。
  • 白内障による全死亡率は30%(HR1.3)高かった。
  • 皮質白内障による全死亡率は20%(HR1.2)高かった。
  • 核白内障による全死亡率は20%(HR1.2)高かった。
  • 後嚢下白内障による全死亡率は30%(HR1.3)高かった。

つまりまとめると、

  • 視覚障がいと死亡率は関係なさそう
  • 加齢黄斑変性は49歳から74歳の人の死亡率と関係ありそう
  • 白内障は49歳以上の人の死亡率と関係ありそう

という形みたい。
また研究者曰く、

  • 視覚障害、加齢黄斑変性、白内障、死亡率の関係は互いに独立しているようだ

とのこと。
つまり眼疾患・視覚障害と平均寿命の関係は別々に考えた方が良さそうだと…。



個人的考察

これらを見るに、眼疾患は平均寿命と関係ありそう、視覚障害は平均寿命と関係なさそうって感じですね。
次回は眼疾患・視覚障害の方編の最終回で系統的レビューとメタ分析を見てみます。



参考文献