今回は世界中の地域から1千万人以上のサンプルで調べたBMIと全死亡リスクの関係のメタ分析を見ていきます。



世界中の地域から1千万人以上のサンプルで調べたBMIと全死亡リスクの関係

2016年のGlobal BMI Mortality Collaborationの研究によると、BMIと全死亡リスクの関係について前向きコホート研究のメタ分析を行ってみたそうです。
そもそも今まで見てきた通り、過体重と肥満は世界中で急速に増えております。そして過体重や肥満は死亡リスクと関係ありそうと先行研究で出ていたものの、地域の違いや喫煙の有無、基礎疾患の有無によってこれらは大きく変わってしまうんでイマイチはっきりしたことが分からなかったんですな。そこで今回研究者たちは、非喫煙者・実験開始時基礎疾患がない人限定で5年間の追跡調査を行ってみることにしたらしい。
この研究は2013年に世界32か国にある300を超える研究機関、500人を超える研究者に協力をお願いしたと言うもの。まず始めに1970年1月~2015年1月までに発表された先行研究をMEDLINE、Embase、Scopusで検索してみたそうな。またこの際、サンプル数が100,000人以上のデータに絞って探してみたとのこと。
するとアジア、オーストラリア&ニュージーランド、ヨーロッパ、北米から239件もの前向きコホート研究が見つかったそうな。これらの研究の特徴は、

  • 追跡期間の中央値:13.7年
  • 総サンプル数:10,625,411人
  • 非喫煙者・実験開始時基礎疾患がない人限定で5年間の追跡調査ができた人:189件の研究に参加した3,951,455人が該当した。そのうち385,879人が亡くなった

って感じ。
4大陸、つまり世界中の地域から1千万人以上のサンプルで調べたってのは超大規模研究と言えますね。これは非常に勉強になる予感。
それではメタ分析にかけてみた結果を見てみましょう。
まずは全ての地域におけるBMIと全死亡リスクの関係から。

  • BMIが15.0~18.5kg/m2未満だと全死亡リスクが51%アップ(HR1.51)
  • BMIが18.5~20.0kg/m2未満だと全死亡リスクが13%アップ(HR1.13)
  • BMIが20.0~22.5kg/m2未満だと全死亡リスクが0%アップ(HR1.00)
  • BMIが22.5~25.0kg/m2未満だと全死亡リスクが0%アップ(HR1.00)
  • BMIが25.0~27.5kg/m2未満だと全死亡リスクが7%アップ(HR1.07)
  • BMIが27.5~30.0kg/m2未満だと全死亡リスクが20%アップ(HR1.20)
  • BMIが30.0~35.0kg/m2未満だと全死亡リスクが45%アップ(HR1.45)
  • BMIが35.0~40.0kg/m2未満だと全死亡リスクが94%アップ(HR1.94)
  • BMIが40.0~60.0kg/m2未満だと全死亡リスクが176%アップ(HR2.76)

つまりここから何が言えるのかと言いますと、

  • BMI=20.0~25.0kg/m2未満だと全死亡リスクが一番低くベスト…!
  • BMIが25.0kg/m2を超えると(つまり過体重・肥満ですな)、全死亡リスクとBMIが比例するように高くなっていた…!

といったところ。
やはり肥満が一番良くなくて、痩せすぎもダメ、ちょっと太っていても全死亡リスクは高くなるみたいで、やっぱり標準体型がベストみたいですねー。

続いて地域別におけるBMIと全死亡リスクの関係を見てみましょう。

【ヨーロッパ】
  • BMIが15.0~18.5kg/m2未満だと全死亡リスクが79%アップ(HR1.79)
  • BMIが18.5~20.0kg/m2未満だと全死亡リスクが25%アップ(HR1.25)
  • BMIが20.0~22.5kg/m2未満だと全死亡リスクが2%アップ(HR1.02)
  • BMIが22.5~25.0kg/m2未満だと全死亡リスクが0%アップ(HR1.00)
  • BMIが25.0~27.5kg/m2未満だと全死亡リスクが7%アップ(HR1.07)
  • BMIが27.5~30.0kg/m2未満だと全死亡リスクが21%アップ(HR1.21)
  • BMIが30.0~35.0kg/m2未満だと全死亡リスクが52%アップ(HR1.52)
  • BMIが35.0~40.0kg/m2未満だと全死亡リスクが99%アップ(HR1.99)
  • BMIが40.0~60.0kg/m2未満だと全死亡リスクが204%アップ(HR3.04)

【北米】
  • BMIが15.0~18.5kg/m2未満だと全死亡リスクが51%アップ(HR1.51)
  • BMIが18.5~20.0kg/m2未満だと全死亡リスクが9%アップ(HR1.09)
  • BMIが20.0~22.5kg/m2未満だと全死亡リスクが1%アップ(HR1.01)
  • BMIが22.5~25.0kg/m2未満だと全死亡リスクが0%アップ(HR1.00)
  • BMIが25.0~27.5kg/m2未満だと全死亡リスクが6%アップ(HR1.06)
  • BMIが27.5~30.0kg/m2未満だと全死亡リスクが17%アップ(HR1.17)
  • BMIが30.0~35.0kg/m2未満だと全死亡リスクが39%アップ(HR1.39)
  • BMIが35.0~40.0kg/m2未満だと全死亡リスクが93%アップ(HR1.93)
  • BMIが40.0~60.0kg/m2未満だと全死亡リスクが158%アップ(HR2.58)

【東アジア】
  • BMIが15.0~18.5kg/m2未満だと全死亡リスクが36%アップ(HR1.36)
  • BMIが18.5~20.0kg/m2未満だと全死亡リスクが11%アップ(HR1.11)
  • BMIが20.0~22.5kg/m2未満だと全死亡リスクが-1%アップ(HR0.99)
  • BMIが22.5~25.0kg/m2未満だと全死亡リスクが0%アップ(HR1.00)
  • BMIが25.0~27.5kg/m2未満だと全死亡リスクが7%アップ(HR1.07)
  • BMIが27.5~30.0kg/m2未満だと全死亡リスクが28%アップ(HR1.28)
  • BMIが30.0~35.0kg/m2未満だと全死亡リスクが54%アップ(HR1.54)
  • BMIが35.0~40.0kg/m2未満だと全死亡リスクが101%アップ(HR2.01)
  • BMIが40.0~60.0kg/m2未満だと全死亡リスクが138%アップ(HR2.38)

ここから何が言えるのかと言いますと、

  • 地域別に見てもBMI=20.0~25.0kg/m2未満だと全死亡リスクが一番低くベスト…!
  • 地域別に見てもBMI=25.0~35.0kg/m2未満の全死亡リスクの増加は大体同じ感じだった…!
  • 但しBMIが15.0~18.5kg/m2未満とBMIが40.0~60.0kg/m2未満の全死亡リスクは東アジアよりもヨーロッパがやや高かった…!

って感じ。
やっぱり標準体型がベストで、過体重・肥満の全死亡リスクは変わらないみたいですねー。ただ低体重と超肥満(WHOでいう肥満グレード3)はちょっとだけ違ったところもあったと。
因みにBMIが5kg/m2増えると全死亡リスク(HR=ハザード比)がどのぐらい増えるのかですが、

  • ヨーロッパ:39%アップ(HR1.39)
  • 北米:29%アップ(HR1.29)
  • 東アジア:39%アップ(HR1.39)
  • オーストラリアとニュージーランド:31%アップ(HR1.31)

とのこと。
大体30~40%全死亡リスクが増えるみたいですね。

次に年齢別におけるBMIと全死亡リスクの関係を見てみます。

  • 35~49歳:52%アップ(HR1.52)
  • 50~69歳:37%アップ(HR1.37)
  • 70~89歳:21%アップ(HR1.21)

つまり、若い人の方が高齢者よりも全死亡リスクが高いってことですね。

次は性別におけるBMIと全死亡リスクの関係を見てみます。
BMIが5kg/m2増えると全死亡リスク(HR=ハザード比)がどのぐらい増えるのかを見てみたそうなんですが、

  • 男性:51%アップ(HR1.51)
  • 女性:30%アップ(HR1.30)

とのこと。
どうやら男性の方が女性よりも全死亡リスクが高いみたいですね。

因みに、年齢・男女の結果はどの地域でも当てはまったってことで違いはないみたい。
それと年齢・男女の結果からみた場合の分かったこととして、

  • やっぱりBMIが20.0~25.0kg/m2未満が全死亡リスクが一番低くベスト…!
  • 低体重や過体重・肥満だと全死亡リスクは高くなっていた…!
  • 35~49歳ではBMI=22kg/m2だと全死亡リスクが一番低くベスト…!
  • 50~69歳ではBMI=23kg/m2だと全死亡リスクが一番低くベスト…!
  • 70~89歳ではBMI=24kg/m2だと全死亡リスクが一番低くベスト…!

だったそうです。
年齢が上がるにつれて若干ベストなBMIも高くなるみたいですね。

次はBMIと健康リスクの関係を見てみます。
BMIが25kg/m2を超える(つまり過体重・肥満になる)ことと、

  • 冠状動脈性心疾患(CHD)による死亡リスクには強い正の相関関係があった…!
  • 脳卒中による死亡リスクには強い正の相関関係があった…!
  • 呼吸器疾患による死亡リスクには強い正の相関関係があった…!
  • がんによる死亡リスクには中程度の正の相関関係があった…!

とのこと。
因みにこれらの結果はヨーロッパ、北米、東アジアで大体同じ感じだったみたい。但し、東アジアでは冠状動脈性心疾患による死亡リスクがBMI18.5~20.0kg/m2未満で最低となったそうでこれは他の地域よりも低いんだとか。
また、全ての地域におけるBMI15.0~18.5kg/m2未満(低体重)は、呼吸器疾患による死亡リスクの大幅な上昇と、冠状動脈性心疾患、脳卒中、がんによる死亡リスクの若干の上昇と関係があったらしい。やっぱり極端な痩せすぎも良くないみたいですね。

最後にその他の違いについても見ておきます。

  • 研究規模の大きさと健康リスク(HR)に大きな違いはなかった…!
  • BMIを測定した場合、自己申告した場合の健康リスク(HR)に大きな違いはなかった…!
  • 職業研究とその他の研究の間で健康リスク(HR)に大きな違いはなかった…!

上記を見るとこの辺は関係ないみたいですね。特にBMIの測定と自己申告に違いがあんまりないってのは意外ですな。

以上を全てまとめると、

  • 適正体重であるBMI=20.0~25.0kg/m2未満がベスト…!
  • 過体重・肥満であるBMI=25kg/m2以上で全死亡リスクがアップする…!
  • これは世界の全ての地域で同じ…!

って感じです。



個人的考察

ということで、国や地域に関係なく過体重や肥満はヤバいぞ…!って話でした。