【加筆内容】精神障がいの方の平均寿命は本当に短いのか? その2
精神疾患と死亡率の関係についての系統的レビューとメタ分析
2015年のエモリー大学の研究によると、精神疾患と死亡率の関係について系統的レビューとメタ分析を行ってみたそうです。
そもそも先行研究では精神疾患を持つ方々は一般集団と比較して死亡率が高いと報告されております。例えば1937年の研究によると、精神科の入院患者さんの死亡率はニューヨークの一般人口の6倍であったそうな。
他にも精神疾患と死亡率の関係を調べた研究はありまして、
って感じで、レビューが何度も行われていたり、
- 統合失調症(2007年のクイーンズランド大学の研究)
- うつ病(2002年のトリンボス研究所の研究、2014年のアムステルダム自由大学の研究)
- 双極性障害(2009年のワシントン大学の研究)
と特定の診断を受けた場合もチェックしております。
但し、これだけ調べているにもかかわらず謎な部分が多かったりするみたい。
なんでかというと、精神疾患と死亡率の関係は変数や因果関係がめっちゃ複雑なんだとか。
例えば、
- 精神疾患を持つ人の多くは、精神疾患そのもので死亡するのではなく、心疾患やその他の慢性疾患、感染症、自殺などで亡くなるケースが多い
- 精神疾患を持つ人は、喫煙、違法薬物の使用、運動不足、不健康な食事などの割合が高い。これらが慢性疾患の割合の高さにつながっている
からとのこと。
確かにこう考えていくと複雑に絡み合っていると言えるんで判断が難しいですね。
そのため今回、系統的レビューとメタ分析を行い、現時点での結論を出して見ることにしたんだとか。
まず研究者たちは2014年5月7日までに発表された該当する先行研究をEMBASE、MEDLINE、PsychINFO、Web of Scienceで検索してみたそうな。
すると、
- EMBASE:114件
- MEDLINE:509件
- PsychINFO:143件
- Web of Science:1,715件
の合計2,481件の研究がヒットしたらしい。
更に手作業で研究を探したり、Google Scholarで検索した結果、追加で71件の研究が見つかったんだとか。次にこの中で質の低い研究や重複している研究を除外し、最終的に203件の研究に絞り込んだそうです。
因みにこの203件の中には日本の研究もいくつかありまして、
とのことでした。気になる方は各リンクからご覧ください。
話しを戻しまして、この203件の研究は6大陸29か国を対象にしており、そのほとんどの研究はヨーロッパ(125件)だったみたい。また追跡期間は1年~52年の間でして中央値は10年だったそうです。
では気になる結果を見てみましょう。精神疾患と死亡率の関係はこのようになっておりました。
- 精神疾患の全死亡率:2.22倍(RR2.22)高い。
- 精神病の死亡率:2.54倍(RR2.54)高い。
- 気分障害の死亡率:2.08倍(RR2.08)高い。
- うつ病の死亡率:1.71倍(RR1.71)高い。
- 双極性障害の死亡率:2.00倍(RR2.00)高い。
- 不安障害の死亡率:1.43倍(RR1.43)高い。
- 自然死の死亡率:1.80倍(RR1.80)高い。
- 自然死以外の死亡率:7.22倍(RR7.22)高い。
6倍とまでは行きませんが、やはり精神障がいは死亡リスクを高めてしまうみたいですね。
更にこの研究では、失われた寿命がどのぐらいかも計算しているんですが、
- 精神疾患の全死亡率では、平均寿命が1.4年~32年(中央値10.1年)短くなると出ていた
- 自然死の死亡率では、平均寿命が3年~26.3年(中央値9.6年)短くなると出ていた
- 自然死以外の死亡率では、平均寿命が8.4年~41.2年(中央値21.6年)短くなると出ていた
とのこと。
全体と自然死は約10年、自然死以外は約20年、寿命が短かったみたいです。
因みにこの研究によれば毎年世界中で約800万人が精神疾患で亡くなっているそうなんで、良く聞く死因と同じぐらい対策が必要だと言うことでした。