【加筆内容】皮肉・ブラックジョークで創造力がアップする?
「イヤなやつほど仕事がデキる なぜルールに従わない人が成功するのか」で有名なハーバードビジネススクールのフランチェスカ・ジーノ教授。
なかなか役立つ研究を発表して下さる教授でして、当ブログでも何度も登場しております。
なかなか役立つ研究を発表して下さる教授でして、当ブログでも何度も登場しております。
皮肉・ブラックジョークはクリエイティブ性をアップさせる…!
ハーバードビジネススクールのフランチェスカ・ジーノ教授の2015年の研究によると、皮肉・ブラックジョークはクリエイティブ性をアップさせるのか調べてみたそうです。そもそも皮肉を言うと、対人関係やグループ関係、組織に亀裂が入る可能性があり、コミュニケーションに悪影響を及ぼす可能性がございます。またネガティブな感情もアップさせ、パフォーマンスを低下させる可能性もあるんですよね。
一方で皮肉な言い方は、それが批判的な内容であっても、もっともらしい批判をするより面白く、記憶に残る可能性があり、これが創造性のアップに役立つ可能性もあったんですな。でもあんまりこの部分に焦点を充てて調べてこなかったんで謎なんだとか。そこで今回ジーノ教授らは皮肉・ブラックジョークとクリエイティブ性の関係をちゃんと調べてみることにしたらしい。面白い視点での研究ですよね~。
それでは具体的な実験の確認の前にまずは皮肉・ブラックジョークの定義を確認しておきましょう。本研究における皮肉・ブラックジョークってのは、
- 反対の意味を持つ言葉を使って、自分の考えをユーモラスに伝えること
としています。まぁ、皆さんがイメージする通りっすね。
次にこの研究に載っていた皮肉の例なんですが、部下が仕事中ネットサーフィンをしているのを上司が見つけた時に上司が部下に「そんな頑張りすぎるな…!」と言う感じとなっておりました。頑張りすぎるな…!=適切に行動しなさい…!ってことで、その流れは、
- ストレートに言うと、適切に行動しなさい…!
- つまり仕事を、もっと頑張れ…!
- これを考えと矛盾する言い方にすると、そんな頑張りすぎるな…!
てプロセスを通っているみたい。
これらを言う側は考える、受け取る側は理解しなければいけないんで、クリエイティブ性がアップするって感じです。なるほど確かに皮肉を考える、理解するってこんな感じかも…。
これらをまとめた結果、ジーノ教授らが考えた仮説はこんな感じ。
- 仮説1:皮肉は他の言い方よりも、対立感が増す…!
- 仮説2:皮肉を言ったり、受け取ったりすると、創造性(クリエイティブ性)がアップする…!
- 仮説3:皮肉を言ったり、受け取ったりすると、抽象的思考がアップする…!
- 仮説4:皮肉の創造性アップ効果は、抽象的思考の増加によって媒介される。
- 仮説5:皮肉で対立しないためには信頼関係の度合いが大事である…!
これらを調べるために4つの実験を行ったそうです。
因みに各実験と仮説の検証はこのようになっておりました。
- 実験1と実験2:仮説1と仮説2を検証
- 実験3:仮説3と仮説4を検証
- 実験4:仮説5を検証
では各見ていきましょう。
実験1:皮肉で対立感、言う人受け取る人の創造性
実験1では、アメリカ人112名(男性66人、女性46人、年齢21~62歳)を対象に以下の5グループにランダムに振り分けて会話をしてもらったそうです(因みに参加者には相手の会話スキルを評価してくださいとだけ伝えた)
- 皮肉を言う人
- 皮肉を受け取る人(言われる人)
- 誠意をもってストレートに言う人
- ストレートに受け取る人(言われる人)
- コントロール群
続いて参加者全員に遠隔連想課題(RAT)を行ってもらったとのこと。これは3つの無関係な単語(例えば「時間」、「髪」、「ストレッチ」など)から、共通する言葉(「長い」など)を考えるテストでして、創造性テストの定番となっております。
更に対立感(つまりイラッとしたか)や気分(ポジティブ・ネガティブ)もチェックしたそうです。
結果、
- 皮肉を言う側も言われる側も対立感が増していた…!
- 皮肉を言う側も言われる側も創造性が活性化されていた…!
とのこと。
つまり仮説1と仮説2は合っていたみたい。また、意外なのが皮肉による気分(ポジティブ・ネガティブ)は創造性に影響を及ぼさなかったらしい。別物なんですね。
実験2:皮肉を思い出す事と、対立感、言う人受け取る人の創造性
実験2では、アメリカ人107名(男性43人、女性62人、未報告2人、年齢18~64歳)を対象に実験1と同じ5グループにランダムに振り分けたそうです。
その際、実際に会話をしてもらうのではなく、言っているところ、言われているところを想像してもらいつつ、何が起こったのか、何を言ったのか、何を考えていたのか、どう感じたのかなど詳細を詳しく説明してもらったそうな。因みにコントロール群の参加者は、道を尋ねてきた人、自分が道を尋ねた時の最後の会話を思い出してもらったらしい。
結果、
とのこと。
どうやら、実際に会話をしなくても皮肉を言う言われるところを思い出すだけで、創造性がアップしたみたい(ついでに対立感も)
- 実験1と同じ結果だった…!
とのこと。
どうやら、実際に会話をしなくても皮肉を言う言われるところを思い出すだけで、創造性がアップしたみたい(ついでに対立感も)
実験3:皮肉は抽象的思考アップ効果で創造性がアップしているのか
実験3では、東海岸大学生114名(男性43人、女性71人、年齢18~34歳)を対象に実験1と同じ5グループにランダムに振り分けたそうです。また実験2と同じようにそれぞれを想像してもらったそうな。
更にこの時、抽象的思考や認知的複雑性(認知的柔軟性)、創造性、気分なんかもチェックしたそうです。
結果、
- 皮肉を言う人は抽象的思考がアップしていた…!
- 皮肉を言われる人も抽象的思考がアップしていた…!
- 認知的複雑性(認知的柔軟性)に有意な変化はなかった
とのこと。
こちらも仮説通り、皮肉による抽象的思考アップ効果で創造性がアップしていたみたいですね。
実験4:皮肉と対立感、信頼関係
実験1,2,3により、間違いなく皮肉は言う人も言われる人も創造性がアップすると分かりました。そしてそのプロセスは抽象的思考のアップが大事だと言うことも分かったかと。但し、予想通り対立感もアップすることも分かりまして、皮肉の諸刃の剣としての性質があることもはっきりしました。
では、グループや組織で、皮肉のデメリットである対立感を上げることなく、創造性のみ上げることはできないのかが重要になります。その一つの可能性は、皮肉は信頼し合う組織やグループのメンバーの間で使うことが良いと言う可能性です。信頼関係のある相手からの皮肉ならばポジティブな解釈につながる可能性がありますからね。ということで実験4ではそこん所をチェックしたみたい。
実験4では、アメリカ人258名(男性131人、女性127人、年齢19~75歳)を対象に実験1と同じ5グループにランダムに振り分けたそうです。また信頼関係については、参加者に最も信頼する人の事を思い出してもらい、その人のイニシャルを書きつつ、簡単な似顔絵を描いたり、信頼する理由を説明してもらったらしい。逆は最も信頼しない人で行ったって感じです。後は今までの実験と同じ流れで各項目をチェックしていったんだとか。
その結果、
- 皮肉を言う人が相手に信頼関係を抱く場合、対立感を和らげていた…!
- 皮肉を言われる人が相手に信頼関係を抱く場合、対立感を和らげていた…!
- 但し皮肉を言う人言われる人の信頼関係の度合いに関わらず創造性はアップしていた…!
とのこと。
やっぱ信頼関係の度合いによって皮肉のダメージは和らぐんですねー。それと面白いのがその信頼関係に関係なく創造性がアップするということ。ここでも皮肉のメリットって他の影響を受けないんですね。
個人的考察
まとめると、- 皮肉・ブラックジョークは言う人言われる人のクリエイティブ性をアップさせる…!
- この効果はポジティブネガティブや信頼関係に関係ない…!
- 皮肉は信頼している人同士で言うと、デメリットを最小限に抑えつつ、クリエイティブ性をアップさせられる…!
- 皮肉を言う言われるを思い出すだけでもクリエイティブ性がアップする…!
って感じかと。
まぁ、相手との信頼関係ってのは難しい部分にもなるんで、皮肉を言う言われるところを想像してクリエイティブ性をアップさせるのがデメリットのない使い方かもしれませんね。