毎週月曜日に「知的障がい以外の障がいを持つ方の平均寿命は短いのか?」と題して様々な障がいと平均寿命の関係の研究を見てきました。
今回は聴覚障害の方編です。ただ残念ながら聴覚障害の研究は数が少なく視覚障害とセットで調べることが多いんですよね。理由は加齢により視覚・聴覚がほぼ同時に衰えていき、それが障害の発症や死亡リスクと関係あるのか調べることが多い為です。
その辺を踏まえてご覧ください。



視覚障害のみ・聴覚障害のみ・視覚障害と聴覚障害、それぞれの死亡リスク

2006年のマイアミ大学の研究によると、視覚障害のみ、聴覚障害のみ、視覚障害と聴覚障害のそれぞれの死亡リスクについて調べてみたそうです。
そもそも視覚障害と聴覚障害は加齢とともに増加し高齢者によく見られる現象です。そして70歳以上のうち18%が片目または両目の失明やその他の視覚障害を報告し、また33%が聴覚障害を報告、9%が視覚障害と聴覚障害の両方の問題を報告しているんだとか。
そして視覚障害と聴覚障害の死亡リスクについてはいくつか先行研究がありまして、

  • 1992年のブラウン大学の研究:65歳以上の高齢者1,408人を対象に障害のない参加者と視覚障害のみ、聴覚障害のみ、視覚障害と聴覚障害のある参加者を比較した。1年後の死亡リスクは、視覚障害の方が34%(RR1.34)高く、聴覚障害の方が30%(RR1.30)高く、視覚障害と聴覚障害の方が18%(RR1.18)高かった
  • 1999年のカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究:55歳から74歳の成人5,444人を対象に障害のない参加者と視覚障害のみ、聴覚障害のみ、視覚障害と聴覚障害のある参加者を比較した。変数を調整後、平均追跡期間10.1年での死亡リスクは、視覚障害の方が20%(RR1.20)高く、聴覚障害の方が12%(RR1.12)高く、視覚障害と聴覚障害の方が10%(RR1.10)高かった

とのこと。
但し、これらはいずれもサンプル数が少なく、また視覚障害と聴覚障害の両方を持っている方が少ないと言う弱点があったんだとか。そこで今回その辺を踏まえて調べてみることにしたらしい。
この研究はアメリカ国民健康インタビュー調査(NHIS)のデータセットを使ったと言うもの。1986年~1994年にかけてNHISに参加し、インタビュー時に18歳以上だった116,796人を対象にデータを統計処理して視覚障害のみと聴覚障害のみ、視覚障害と聴覚障害の方のそれぞれの死亡リスクを計算してみたそうな。
そこでまず分かったこととして、116,796人のうち、

  • 3,620人(3.1%)の方が視覚障害のみを持っていた
  • 12,330人(10.6%)の方が聴覚障害のみを持っていた
  • 1,461人(1.3%)の方が視覚障害と聴覚障害を持っていた

とのこと。
また平均追跡期間は7.0年で、その間に亡くなった方は8,949人だったみたい。そこから年齢、婚姻、教育などの変数を調整し、死亡リスクを出してみた結果、以下のようになったそうです。

【男性】
  • 障害の有無:アフリカ系アメリカ人:白人:その他の人種
  • 障がいなし:1.00:1.00:1.00
  • 視覚障害あり:1.04:1.08:1.10
  • 聴覚障害あり:1.31:0.99:0.64
  • 視覚障害と聴覚障害あり:1.50:1.23:2.47

【女性】
  • 障害の有無:アフリカ系アメリカ人:白人:その他の人種
  • 障がいなし:1.00:1.00:1.00
  • 視覚障害あり:1.62:1.31:3.74
  • 聴覚障害あり:0.94:1.09:2.03
  • 視覚障害と聴覚障害あり:0.92:1.63:2.23

ちょっとポイントをまとめてみると、

  • 女性における視覚障害のみの方の死亡リスクは人種に関係なく高かった
  • 聴覚障害のみの方は男女ともに人種によって違いが結構あった
  • 視覚障害のみ、聴覚障害のみよりも視覚障害と聴覚障害の方が死亡リスクが高かった

といったところでしょうか。
視覚障害と聴覚障害の両方があると死亡リスクは高まりそうですが、視覚障害のみ、聴覚障害のみの方はイマイチよく分からない感じですね。



個人的考察

ということで聴覚障害の方の平均寿命についてはあんまりよく分からない感じでした。



参考文献