アンブレラレビューを見てみよう!」シリーズその32です。
本日もヨアニナ大学のアンブレラレビューを見てみます。



CRP(C反応性タンパク)と健康リスクの関係についてアンブレラレビューを行ってみた…!

2020年のヨアニナ大学の研究によると、CRP(C反応性タンパク)と健康リスクの関係についてアンブレラレビューを行ってみたそうです。
慢性炎症(低レベルの炎症)は様々な慢性疾患と関係しておりまして、その炎症マーカーとしてよく使われるものの一つがCRP(C反応性タンパク)となっております。そんなCRPですが、1930年の研究で初めて見つかったそうで、2013年のアメリカ退役軍人省医療センターの研究なんかを見てみると、当時は感染症のバイオマーカーとして使用されていたらしい。また、2003年のロイヤルフリーユニバーシティカレッジの研究2001年のブリガム・アンド・ウィメンズ病院の研究によると、1990年代に高感度のCRP測定法が登場したらしく、数年後には心血管疾患と炎症の関係を調べた研究が行われたんだとか。その後CRPと心血管疾患リスクやがんリスク、代謝性疾患リスク、筋骨格系障害リスク、自己免疫疾患リスクなど様々な健康リスクとの関係が調べられたらしい。んがしかしCRPが本当に指標として役立つのか依然として不明とのこと。そこで今回研究者たちは、既存の研究結果をまとめてみることにしたみたい。
まず最初に2019年3月31日までに発表された該当する観察研究のメタ分析メンデルランダム化研究をPubMed、Scopus、コクランで検索してみたそうです。すると4,100件の研究がヒットしたそうな。続いてこの中で重複している物や質の低い物を除いていったとのこと。
最終的に選ばれた観察研究のメタ分析は55件でして、メンデルランダム化研究は37件だったそうです。
それでは結果の前に、観察研究のメタ分析でチェックしたCRPと健康リスクについての概要を抑えておきましょう。

  • 55件の研究には113個の関連性があった。
  • がん関係の関連性は52個だった。
  • 心血管関係の関連性は31個だった。
  • 腎臓関係の関連性は7個だった。
  • 骨格関係の関連性は6個だった。
  • 神経関係の関連性は3個だった。
  • 妊娠関係の関連性は2個だった。
  • 呼吸器関係の関連性は2個だった。
  • その他の関連性は10個だった。
  • コホート研究がかなりの割合(823件、86.5%)を占めていた。
  • コホート研究のうち前向きコホート研究は497件だった。
  • コホート研究のうち後ろ向きコホート研究は264件だった。
  • デザイン不明のコホート研究は62件だった。
  • 次に多かったのはケース・コントロール研究(115件、12.1%)だった。
  • 113個の関連性のうち95個(84.1%)は統計的に有意だった…!
  • 23個の関連性は結果が非常に大きくバラバラで質が低かった(20.4%)
  • 31個の関連性は結果が大きくバラバラで質が低かった(27.4%)
  • 113個中45個(39.8%)は小規模研究だった。
  • 113個中47個(41.6%)は過剰に有意な結果だった。

パッと見良さげな結果が多いけど良く見たら質の低い物が多かったみたいですね。
次にメンデルランダム化研究でチェックしたCRPと健康リスクについての概要を抑えておきましょう。

  • 37件の研究には196個の関連性があった。
  • 平均サンプル数は26,405人でサンプル範囲は134人~184,305人の間だった。
  • 最もチェックされていたものは心血管疾患(冠状動脈性心疾患と脳卒中)(19件、9.7%)で、次が2型糖尿病(8件、4.1%)、統合失調症(8件、4.1%)、BMI(6件、3.1%)と続いていた。

それでは結果です。
全体で見てみると、観察研究のメタ分析とメンデルランダム化研究の両方からエビデンスが得られたのは14個の関連性だったそうで以下のようになっておりました。

  • 対象者:メタ分析の結果・エビデンスレベル:メンデルランダム化研究の結果・エビデンスレベル
  • 一般人口:静脈血栓塞栓症・高い:静脈血栓塞栓症・証拠なし
  • 一般人口:全死亡率・非常に可能性アリ:全死亡率・証拠なし
  • 一般人口:冠状動脈性心疾患・非常に可能性アリ:冠状動脈性心疾患・証拠なし
  • 一般人口:2型糖尿病・非常に可能性アリ:2型糖尿病・限定的又は矛盾した証拠
  • 一般人口:高血圧・可能性アリ:高血圧・証拠なし
  • 一般人口:虚血性脳卒中・可能性アリ:虚血性脳卒中(全種類)・証拠なし
  • 心房細動患者:心房細動の再発・低い:心房細動・証拠なし
  • 一般人口:アルツハイマー病・低い:アルツハイマー病・限定的又は矛盾した証拠
  • 一般人口(女性):乳がん・低い:乳がん・証拠なし
  • 一般人口:結腸がん・低い:結腸がん・証拠なし
  • 一般人口:大腸がん・低い:大腸がん・限定的又は矛盾した証拠
  • 血管外科手術患者:心筋梗塞・証拠なし:心筋梗塞・限定的又は矛盾した証拠
  • 一般人口(男性):前立腺がん・証拠なし:前立腺がん・証拠なし
  • 一般人口:直腸がん・証拠なし:直腸がん・証拠なし

つまり113個の関連性のうち、本当にCRPと関係が強かった物は、

  • 一般人口における心血管疾患の死亡率と静脈血栓塞栓症の2つだけ…!

って感じ。
はっきり言える部分ってほとんどなくて、これからの研究に期待…!ってところが大きいみたいですね。またメンデルランダム化研究からはほとんどわからなかったみたいです(まぁ、最近できた研究デザインなんで仕方ないですが)



個人的考察

CRPと健康リスクについての研究はたくさんされておりましたが、大多数は観察研究であり、因果関係まで見ていくとまだよく分からないことが多いって感じでした。
但しだからと言って、慢性炎症が体に悪いのは間違いないので対策しておいて損はないかと思います。



参考文献