【加筆内容】アンブレラレビューを見てみよう! その26「卵と健康リスク」
今回は卵のアンブレラレビューを見てみます。
軽く復習しておきますと、卵は栄養価の高い食品ですが、一方でコレステロール含有量が高い食品です。卵黄はコレステロールが多く1個当たり大体141~234mgもコレステロールが含まれているんですよね。そのため、卵は食べ過ぎたらヤバい…!と昔から言われておりました(アンセル・キーズの影響が大きい)。しかし、食事で摂取するコレステロールと総コレステロールや悪玉コレステロールは別であり、関係あるのは飽和脂肪酸だったりトランス脂肪酸だったりするんですよね。因みに卵の飽和脂肪酸含有量は少なくて、大きな卵1個当たり1.56gぐらいしかありません。
そのため最近では、卵黄はコレステロールが高いけど卵は栄養価が高い食品だしタンパク質も豊富だから積極的に食べて行こうぜ…!って風潮になっております。
卵と健康リスクのアンブレラレビューを見てみた…!
2019年のBiofortisの研究によると、卵と健康リスクの関係についてアンブレラレビューを行ってみたそうです。
まず研究者たちは、2018年10月3日までに発表された該当する先行研究をPubMed(MEDLINE)で検索してみたそうな。更に2019年4月29日に再度検索を実施、その際に追加でWeb of Science、コクラン、Nutrition Evidence Systematic Review(NESR)、Agency for Healthcare Research and Quality(AHRQ)EPC Evidence-Based Reportsでも検索してみたらしい。
すると全部で1,098件の研究が見つかったそうな。続いて各論文の質をチェックし最終的に23件の研究をピックアップしたそうです。
この23件の内訳は、
- 系統的レビュー(メタ分析なし):7件
- 系統的レビュー(メタ分析あり):16件
って感じでした。
では結果をバーッと見てみましょう。
- 心臓病:冠状動脈性心疾患や虚血性心疾患に及ぼす影響はゼロ…!
- 心不全:1日1個以上又は140gの卵の摂取と最低摂取量を比較したら心不全リスクが25%(RR1.25)高かった。一方で週6個以上の卵を摂取する男性にのみ関連性が見られ女性や糖尿病患者は関連性がなかったとする研究もあり、心不全との関係はよく分からなかった。
- 脳卒中:週7個以上食べている人は週1個未満の人に比べて脳卒中リスクがわずかながら有意に減少していた(HR0.91)。但し脳卒中による死亡リスクには有意差はなかった(HR0.88)。一方で1日の卵の摂取量が約75gから約0gの人をチェックしたが脳卒中リスクとは関連性がなかったという研究もあった(RR0.99)まとめると脳卒中リスクに対する卵は、効果がないかわずかに良い効果があるという感じだった…!
- 糖尿病リスク:古い研究によれば卵の摂取量が多いと2型糖尿病リスクが上がるみたいだった。但しこの結果はアメリカ人限定の話である可能性が高い。というのも全体でみたら週4個未満の摂取は2型糖尿病リスクと関係なかったがアメリカの研究のみでみたら週3個以上で2型糖尿病リスクがアップしていたという研究がある。また別の研究でも週3食摂取と2型糖尿病は全体的に関係なかったがアメリカの研究のみでみると週3食摂取と2型糖尿病リスクは正の相関関係があるという研究がある。更に別の研究では1日30gの摂取と2型糖尿病に有意な関係はなかったがアメリカの研究では1日30gの摂取と2型糖尿病リスクに正の相関関係がありアジアやヨーロッパは関係なかったとする研究もある。全体的に見ると1日1個食べる量が増えると2型糖尿病リスクが13%(RR1.13)高くなるが、アメリカの研究のみだと1日1個で2 型糖尿病リスクが47 %高くなるが他の地域では統計的に有意ではなかったとする研究もある。
- 2型糖尿病患者における心血管疾患リスク:卵の摂取量が多いと心血管疾患リスクが高くなる様子だった。糖尿病を伴う方の卵の摂取量が多いと冠状動脈性心疾患リスクが54%(RR1.54)も高くなっていた。但し、心臓の健康促進ガイドラインに沿った食事と組み合わせて週6~12個の卵を摂取した場合は、糖尿病発症リスクのある人や2型糖尿病の既往歴のある人の主要な心血管疾患リスク要因に悪影響を及ぼさないとする研究結果もあった。
- 心血管疾患の危険因子:心血管疾患の危険因子と卵の摂取をしっかり調べているものは血中脂質と高血圧のみだった。卵の摂取は総コレステロール、悪玉コレステロール、善玉コレステロールの増加と有意に関係していたが中性脂肪や総コレステロールと善玉コレステロール比、悪玉コレステロールと善玉コレステロール比とは関係がなかった。卵の摂取と高血圧症リスクは逆相関していた。1日約23gの卵を食べている人と一番食べていないグループを比較したら高血圧リスクが46%(RR0.54)も低く1日50gの卵を食べている人だと75%(RR0.25)も低かった。別の研究では最も卵を食べていたグループと最も卵を食べていなかったグループを比較したら高血圧リスクが21%(RR0.79)も低かった。
- ウエスト周りの脂肪:卵を最も多く摂取する人は最も少なく摂取する人に比べて3%(RR0.97)低く、1日50g摂取するごとに5%(RR0.95)低くなっていた。但しエビデンスレベルは非常に低い。
色々書いていますが、まとめておきますと以下のようになります。
- 卵は栄養価の高い食品…!
- だけどコレステロール含有量が高いため、これまで心疾患などの健康リスクが懸念されていた…!
- 今回見てみたら、卵の摂取と心臓病と脳卒中は関係なし…!
- 心不全リスクはもしかしたら上がるかも…?
- 高血圧リスクはむしろ下がる…!
- 高血圧は心不全の主なリスク要因だから矛盾している…!
- 2型糖尿病リスクは関係なし(アメリカを除く)…!
やっぱ卵は素晴らしい食品なんではないかと思いました。
個人的考察
因みに同時期に卵のアンブレラレビューはもう一つ発表されておりまして、それが2019年のIRCCSなどの研究になります。
結論だけさっと見てみますと、
- 卵の摂取と、がん、心血管疾患(CVD)、代謝疾患などの多くの健康問題との間に関係性はなかった…!
- 逆に卵の摂取で脳卒中リスクが下がっていた…!
とのこと。
やっぱり同じような結論だったんですねー。