「アンブレラレビューを見てみよう! その28」です。
今回は、抗うつ薬の服薬と健康リスクの関係を調べたアンブレラレビューを見てみます。



抗うつ薬の服薬と健康への悪影響についてアンブレラレビューを行ってみた…!

2019年のリンショーピング大学の研究によると、抗うつ薬の服薬と健康への悪影響についてアンブレラレビューを行ってみたそうです。
そもそも抗うつ薬の服薬は世界中で急増しておりまして、なんでもアメリカ成人の最大8~10%が少なくとも1種類の抗うつ薬を飲んでいるんだとか。また処方薬の中では3番目、販売薬の中で4番目にランクインされているとのこと。因みにご存知の方も多い通り、抗うつ薬は様々な精神障がいの方に使われておりまして、うつ病や不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)強迫性障害(OCD)摂食障害などで使われております。
そんな抗うつ薬ですが、安全面について心配される声が挙がっておりまして、今回アンブレラレビューを用いてガッツリチェックしてみることにしたそうな。
まず研究者たちは、2019年4月5日までに発表されている抗うつ薬と健康への悪影響の観察研究のメタ分析・系統的レビューをPubMedとScopus、PsycINFOで検索してみたそうです。すると合計4,471件もの研究が見つかったんだとか。次にこの中で重複しているものを除きつつ、質の高い研究を選んで行ったらしい。
最終的に選ばれた研究は45件でして、120個の関係ありそうな項目があったそうな。因みにチェックした抗うつ薬の66.7%はSSRI又はSNRIだったみたいで、7.5%が三環系抗うつ薬(TCA)、25.8%が混合又はその他って感じだったとのこと。
では結果を見てみますかー。
まずは大枠についてですが、

  • 120個の関係ありそうな項目のうち74個(61.7%)は名目上統計的に有意だった

とのこと。
約6割は可能性アリって感じだったんですね。
続いてエビデンスレベル別に見てみますか。

【説得力のあるエビデンス】
  • 120個の関係ありそうな項目のうち3個(2.5%)のみ説得力のあるエビデンスだった(以下)
  • SSRIの服薬と子どもや青年における自殺リスクの増加がみられた。
  • 妊娠前の抗うつ薬の服薬と妊娠中のSSRIの服薬における子どもの自閉症スペクトラム障害の増加がみられた。

【非常に可能性のあるエビデンス】
  • 120個の関係ありそうな項目のうち11個(9.2%)のみ非常に可能性のあるエビデンスだった(以下)
  • 抗うつ薬の服薬における、子どものADHDの増加、白内障発症リスクの増加、あらゆる部位での重度の出血リスクの増加、上部の消化管出血リスクの増加、産後出血の増加、早産リスクの増加、5分後のアプガースコアの低下、骨粗鬆症による骨折リスクの増加、股関節骨折リスクの増加がみられた。
  • 一方で成人における自殺リスクの低下がみられた。
  • 上記の健康への悪影響の効果サイズは小さく、有病率も平均して低かった(範囲が0.1%~9.7%だった)

【可能性のあるエビデンス・低いエビデンス・エビデンスなし】
  • 120個の関係ありそうな項目のうち21個(17.5%)が可能性のあるエビデンスだった。
  • 120個の関係ありそうな項目のうち39個(32.5%)が低いエビデンスだった。
  • 120個の関係ありそうな項目のうち46個(38.3%)がエビデンスなしだった。
  • つまり、90%弱の項目はエビエンスレベルの裏付けがなかった。

これらの結果から研究者は以下のポイントを述べられておりました。

  • 抗うつ薬の服薬に関係ありそうな健康への悪影響のほとんどは説得力のあるエビデンスがない可能性があった…!
  • つまり抗うつ薬との因果関係ではなく、基礎疾患に関係する形で健康への悪影響が出ている可能性が高かった…!
  • そのため抗うつ薬の服薬は精神疾患の治療に安全であると思われる…!

従来から言われてきた抗うつ薬で健康リスクに影響が…!ってのはかなり怪しいみたいですね。これは勉強になりますなー。



個人的考察

ということで、主治医の指示通り抗うつ薬を服薬すれば健康リスクへのダメージは気にしなくて良さそうです。



参考文献