今回は「地域差」に焦点を充てた研究です。



統合失調症における死亡リスクの地域差

2024年の欧州神経精神薬理学会(ECNP)の研究によると、統合失調症における死亡リスクの地域差について系統的レビューとメタ分析を行ってみたそうです。
まず先行研究により、統合失調症は一般人口と比較して平均寿命が約10~25年短くなると出ております。そして、2022年のザッカーヒルサイド病院などの系統的レビューとメタ分析では、1957年~2021年の間に発表された135件の縦断研究をまとめたそうで、結果、統合失調症の方の全死亡リスクは一般人口や他の対照グループと比べて約2.5倍も高かったとのこと。また原因別の死亡リスクもチェックしているんですが、

  • 自殺・外傷や中毒・原因不明の非自然的原因による死亡リスク:9.8倍
  • 肺炎による死亡リスク:7.0倍
  • 感染症・内分泌・呼吸器・泌尿生殖器・糖尿病による死亡リスク:3.2~3.8倍
  • アルコール・胃腸・腎臓・神経系・心脳血管・肝臓・その他の自然的原因による死亡リスク:2.1~2.9倍
  • 脳血管、乳房、結腸、膵臓、その他のがんによる死亡リスク:1.3~1.6倍

も高かったらしい。
更に向精神薬の使用は死亡リスクが低かったけど、物質使用障害は死亡リスクが高まっていたそうな。
但し今のところ、統合失調症の死亡リスクの軽減要因やリスク要因が地域によって異なるかは分かっていなかったみたい。そこで今回その辺をチェックしてみることにしたんだとか。
まず研究者たちは2021年9月9日までに発表された該当する研究をMedline、PubMed、PsycINFOで検索してみたそうです。すると合計8,345件の研究がヒットしたそうな。
続いてこの中で重複している物や質の低い物を除外していった後に、上記で挙げた2022年のザッカーヒルサイド病院などの系統的レビューとメタ分析で使われた135件の研究を併せたとのこと。総サンプル数は、

  • 統合失調症の方:4,136,128人
  • 対照グループの方:1,231,669,106人

となっておりました。
また選ばれた国と地域は、6大陸23か国でして、

  • ヨーロッパ:70
  • 北米:29
  • アジア:33
  • オセアニア:2
  • アフリカ:1

とのこと。
では結果を見てみますか。

  • 統合失調症の発症率と有病率を合わせると、全死亡率が最も高かったのはアフリカで約6倍(RR5.98)、最も低かったのは北米で約2.1倍(RR2.1)だった。
  • 統合失調症の方の自殺率が最も高かったのはオセアニアで13.5倍(RR13.5)、最も低かったのは北米で4.4倍(RR4.4)だった。
  • 自然死については大陸間の差はなかった。
  • 向精神薬と全死亡率・自殺率の低下の関係が最も大きかったのはヨーロッパだったのに対し、アジアでは最も小さいか有意差がなかった。
  • 自然死については差がなかった。

つまり、統合失調症の方の全死亡率や自殺率には有意な地域差があったってことですね。それに対して自然死は世界でみても同じだけど多いのは変わらないと。また、薬も効果はありそうな感じですが、こちらも地域差があるみたい。



個人的考察

住んでいるところで違うのは文化や食事スタイルが違うからですかねー。
いずれにしても主治医から処方された薬をちゃんと飲むことは死亡リスクの軽減になりそうです。



参考文献