ダイエットをするなら、まずはタンパク質の摂取量を増やそう…!みたいな方法を推奨している当ブログ。タンパク質の摂取量を増やすと満腹感がアップし、自然とカロリー摂取量が減るみたいなんですよね。
一方で1993年の研究により、食事によるタンパク質の摂取は、腎臓機能を調節する役割があることが分かっております。
では腎臓機能への悪影響はどうなのか…?ってのが今回のお話です。
皆さんも聞いたことがあるかと思いますが、高タンパク質の摂取は腎臓にダメージを与え、健康を損なうというんですな。ダイエットに成功しても不健康になったら意味がないので、これが本当なら高タンパク質摂取はやめた方が良いことになりますが、果たしてどうなのか…?
今回はそこんところを見ていきます。



ブレナー仮説ってなに…?

そもそも食事による高タンパク質の摂取が腎臓機能に悪影響を及ぼす…!って話は、ブレナー仮説から引用され、広まったとされています。
ブレナー仮説1982年のブレナー医師の研究のことでして、

  • 糸球体濾過と糸球体内圧の増加が、腎臓にダメージを与え、最終的に腎臓病の発症や進行をアップさせる…!
  • 習慣的にたくさんのタンパク質を摂取していると、糸球体濾過と糸球体内圧が常に上昇して腎臓の濾過機能がオーバーヒートし、腎臓機能に悪影響を与える…!

という仮説となっております。
そして上記に書いた糸球体濾過と糸球体内圧を知る方法として、GFR(糸球体濾過量:しきゅうたいろかりょう)というものがあります。体の老廃物は血液と一緒に糸球体っていうフィルターを通って濾過され、尿として外へ排泄されます。これが1分間でどれぐらい行われているのかを表した数値がGFRです。因みに、GFRの数値が高い程、腎臓の働きが良い(頑張っている)となり、低いほど腎臓機能の働きが悪い(サボっている)となります。
そして2013年のジョンズ・ホプキンズ大学の研究でも出ていますが、高タンパク食をとると間違いなくGFRの数値は上がるんですよね。
つまり、まとめると、

  1. 毎日高タンパク質の食事を取る
  2. GFRが常に高くなる
  3. 腎臓がオーバーヒートを起こす
  4. 腎臓病の発症や進行が起きる…!

って感じです。
但し、1982年のブレナー医師の研究には弱点がありまして、ここで引用した研究の大部分は動物実験だったり、腎臓病が併発しそうな人・すでに腎臓病の人のものだったんですよね。
なんで、正常な腎臓機能を持つ健康な方でも本当に慢性的なGFRの増加により腎臓がオーバーヒートを起こすのかは謎だったんですよ。
因みに2000年のドイツ栄養研究所の研究など、その後の研究でもブレナー仮説を支持するものはあるのですが、健康な方への影響は謎な感じが残ったままでした。



タンパク質の摂取量と腎機能の関係について見直ししてみた…!

2005年のコネチカット大学レビュー論文によると、タンパク質の摂取量と腎機能の関係について見直ししてみたそうです。
そもそも高タンパク食を意識したダイエットは、習慣的に推奨摂取量を超えてタンパク質を摂るんで、安全面が疑問視されているそうなんですよ。特にGFR(糸球体濾過量)の慢性的な上昇はオーバーヒートを引き起こし、腎臓病の発症・促進する可能性があるとされているんだとか。
んがしかし、これは元々腎機能に問題があった人などの話で、健康な人の場合はどうなのか…?ってのは謎のままだったんですよね。そこで今回、先行研究を見直しし、2005年時点の結論を出して見よう…!となったみたいです。
では、具体的な中身を見ていく前に、このレビュー論文の中での高タンパク質食ってのがどのぐらいのタンパク質量なのかを見ておきましょう。研究者によれば、

  • 高タンパク質食=1日のタンパク質摂取量(g)=体重(kg)×タンパク質1.5g以上の摂取量

と定義したそうです。以前の記事で、1日のタンパク質摂取量(g)=体重(kg)×タンパク質1.6gがベスト…!とご紹介しましたがほぼ同じ感じっすな。
因みに、慢性腎臓病(CKD)の定義については、腎臓損傷又は3ヶ月以上に亘ってGFR(糸球体濾過量)の低下(=腎臓の働きが悪い)している場合と定義したみたいです。


まずはレビューのポイントから

ではこれらを基準にレビューのポイントをバーッと見ていきます。

  • 高血圧は、健康な腎臓機能を持つ男性において、腎臓機能の早期低下と関係していた…!
  • 食事から摂取するタンパク質の摂取量と血圧との間には逆相関関係があることが一貫して証明されていた…!つまり高タンパク質食は高血圧対策になる…!
  • 動物性タンパク質の摂取量の増加と腎臓機能の低下には関係があり、1日のタンパク質摂取量が多くなればなるほど腎臓病が促進され、また、腎臓機能の低下にもつながる可能性があった…!
  • んがしかし、正常な腎臓機能を持つ健康な女性1,135人を調べたコホート研究によれば、タンパク質の摂取量とGFRの変化との間に関係性はなかった…!

つまり、元々腎臓病の方や予備軍などの場合に高タンパク質食を食べると確かに良くなさそうなんですが、健康な人の場合は問題ないみたいです。それどころか高血圧対策にもなりそうな感じ。


高タンパク質食以外でGFRが高止まりするケースの研究

また、この研究では高タンパク質食以外でGFRが高止まりするケースの研究もレビューしておりまして、例えば、


ということです。
更に、

  • 2000年の琉球大学の研究によると、腎臓摘出手術を受けて腎臓が1つしかない方は腎臓が肥大化し、それに伴って腎臓機能が変わってくる…!
  • そして腎臓が1つしかない為、長期間にわたって腎臓はフル回転する…!
  • しかし1990年の東京大学の研究1998年のローザンヌ大学の研究によると、腎臓が1つしかない状態で20年以上経っている方を調査してみたが、腎臓機能は正常のままであり、悪化していなかった…!

そうです。
う~ん。どうやら健康な場合はブレナー仮説は当てはまらないみたいですね。

因みに腎臓病の方は、1日のタンパク質の摂取量が少ない程、腎不全になるリスクが低下したり、腎臓病の進行が遅くなるってのは間違いないみたいなんですが、だからといって正常な腎臓機能を持つ健康な人を同じように危険とするのは過剰なんじゃないの…?と研究者はおっしゃっておりました。ごもっともですな。

それと間接的なパターンについても触れておりまして、高タンパク質食によって脱水症状が起き、それによって腎臓機能にダメージが…!みたいな話はどうなのかも書いておりました。研究者によれば、現在のところ、正常な腎臓機能を持つ健康な人を対象とした研究はないとしています。
ここでも腎臓病のある方などの場合は有り得るけど、健康な方は関係なさそうですねー。


高タンパク質食によるダイエット(減量)の場合はどうなのか…?

では次に高タンパク質食によるダイエット(減量)の場合はどうなのか…?についてみていきます。
早速結論から書きますと、研究者によれば、


らしいんですよ。
なんとダイエットで使った場合は腎臓病リスクありの人ですら問題ないとは面白いですね~。
まずチェックしておきたいのが、1999年の王立獣医農業大学の研究になりまして、この研究では、肥満だけど健康な65人の方を対象に低タンパク質食か高タンパク質食を6ヶ月間続けてもらったそうな。
すると、

  • 高タンパク質食を食べた人たちは、腎臓が肥大化し、GFRも大幅に高くなっていた…!
  • にもかかわらず、両グループ共にアルブミン排泄量(タンパク質が尿として排出される量)の変化はなかった…!

みたい。
この結果に研究者は、腎臓機能と腎臓サイズの急激な変化はあるが、健康な人には高タンパク質食の悪影響はないと結論付けていたとのこと。また2005年のテンプル大学などの研究でも似たようなことを調べているんですが、結果は同じ感じだったそうです。
これらをみていると、腎臓に問題がない健康な方であれば高タンパク質食によるダイエット(減量)は行っても健康リスクは損なわずに済みそうですね。


アスリートは高タンパク質食になりがちだがどうなのか…?

お次はアスリートの場合の高タンパク質食についてみていきます。
というのも、アスリートやトレーニー(普段からジムなどに通い筋トレなどをしている人)など普段から運動をしている人は、兎角、高タンパク質食になりがちなんですよね。特に筋力やパワーを必要とするスポーツのアスリートは、タンパク質の摂取量が超多かったりします。
例えば1989年の北京医科大学の研究によると、アスリートの多くは1日のタンパク質摂取量(g)が体重(kg)×タンパク質2.0g以上だったそうです。しかし1996年のケント州立大学の研究によると、このようなアスリートが腎臓病や腎臓機能低下といった健康リスクが高いという証拠はなかったんだとか。
また2000年のブリュッセル自由大学の研究によると、アスリート37名を対象に1日のタンパク質摂取量(g)を体重(kg)×タンパク質1.4以下〜1.9gの範囲で摂取してもらったらしい。すると、推奨されているタンパク質摂取量の170〜243%のタンパク質摂取量でも腎臓機能は損なわなかったそうです。
これらの結果からレビューの研究者は、普段から運動している健康な男女が高タンパク質食を摂取した場合、腎臓病リスクが増加するというデータは見つからなかったとしています。
運動している人は更に高タンパク質食になるけど、こちらも問題なさそうですね~。


動物実験で更に超高タンパク質食をチェックしてみると…。

更に動物実験では超高タンパク質食をチェックしております。
まず大前提として、2003年のクイーンズ大学の研究なんかでヒトに限らず、哺乳類は高タンパク質食を急に大量に食べても、ずーっとたくさん食べ続けても、GFRがアップすることが分かっております。
この前提を踏まえて、動物を使った超高タンパク質食の実験を見てみましょう。

  • ラットのエサの50%をタンパク質にした研究があるが、腎臓機能の異常は見られなかった…!
  • ラットのエサの60%をタンパク質にした研究があるが、2年間食べ続けてもらい硬化性糸球体(糸球体が固くなる現象)の割合が変化しなかった場合、腎臓機能に悪影響を及ぼさなかった…!
  • 腎臓の75%をとっちゃった犬を対象に高タンパク質食をチェックした研究があるが、食事の19%、27%、56%のタンパク質を含むエサを4年間食べ続けてもらっても、食事と腎臓の構造変化との間の関係性は見当たらなかった…!

つまり、人間では試せない、超高タンパク質食を動物実験でやってみたけど、問題なさそうだったってことですね。



腎臓がオーバーヒートを起こさないのはプロテインレバレッジのおかげ…!

2012年のペニントン生物医学研究センターの研究によると、タンパク質摂取における生体恒常性(環境の変化があっても生理機能が一定に保たれること)についてレビューしてみたそうです。
このレビュー論文によれば、高タンパク質食と低タンパク質食の摂取を行うと以下の状況が起きるそうな。


高タンパク質食の影響

  • 高タンパク質食が、短期的に食欲を抑制する働きがあることは、ヒトの実験でも動物実験でも何度も報告されている。
  • その理由は、タンパク質がカロリー当たりで最も満腹感のある主要栄養素だから。
  • その結果、高タンパク質食は低タンパク質食よりも、空腹感とカロリー摂取量の両方を大幅に減少させる。
  • ヒトを対象とした研究では、高タンパク質食が体重と体脂肪の減少に役立つことが、かなりの数で証明されている。
  • その理由は、カロリー摂取量の減少、筋肉量(≒除脂肪体重)の維持、カロリー消費量の増加によるものと考えられる。
  • 上記データはヒトを含む動物は、一般的に過剰なタンパク質の摂取を避けるようなメカニズムが備わっていることを示唆している。つまりプロテインレバレッジですな。


低タンパク質食の影響

  • 高タンパク質食は食欲や体重などに影響を及ぼすという研究は数多く存在するが、その逆、つまり低タンパク質食が及ぼす影響についての研究はほとんどない。
  • 但しデータによると、ラットに低タンパク質食を与えると、タンパク質摂取量を増やそうとして、カロリー摂取量が増える傾向にある。
  • カロリー摂取量を同じにして、低タンパク質プラス脂肪又は炭水化物の量を増やしてみた研究では、脂肪や炭水化物のバランスに関係なく、一貫してカロリー摂取量が多くなっていた。
  • 中程度の低タンパク質食まで減らすとカロリー摂取量は増えたが、更に減らして超低タンパク質食にすると、カロリー摂取量が減少した。


以上をまとめると、

  • タンパク質量によるカロリー摂取量は、超少ないと減る…!低タンパク質だと増える…!高タンパク質だと減る…!
  • 高タンパク質だと、満腹感アップ…!空腹感ダウン…!カロリー摂取量ダウン…!カロリー消費量アップ…!体重ダウン…!体脂肪ダウン…!筋肉量アップ…!
  • 理由は、過剰なタンパク質の摂取を避けるメカニズム=プロテインレバレッジ)があるから…!

って感じです。



ドイツ栄養学会がタンパク質の摂取と尿路結石・腎疾患リスクの関係についてアンブレラレビューしてみた…!

2023年のドイツ栄養学会の研究によると、タンパク質の摂取と尿路結石・腎疾患リスクの関係についてアンブレラレビューで調べてみたそうです。
そもそもタンパク質の摂取は腎機能に影響を及ぼしますが、長期間高タンパク質を摂取した場合の腎機能への悪影響ってのはよく分かっていなかったんですよね。そこで今回、2019年のドイツ栄養学会の研究の高タンパク質基準に則り、尿路結石・腎疾患リスクをチェックしてみたんだとか。
因みにこの基準での高タンパク質の摂取量は、

  • 1日のタンパク質摂取量(g)=体重(kg)×タンパク質0.8g以上

となっております。それでは実験を見ていきましょう。
まず研究者たちは、2008年2月から2022年12月までに発表された該当する系統的レビューをPubMed、Embase、コクランで検索してみたそうな。すると合計7,486件の研究がヒットしたらしい。
続いてこの中から、重複している物や質の低い研究を除外していったそうで、最終的に9件の系統的レビューが基準を満たしていたみたい。
この9件の系統的レビューの内訳は、


って感じ。
それと実験期間はRCTが4日~24か月、観察研究は6~26年の間だったそうです。また参加者は健康な男女の場合が多く、年齢は18歳以上だったそうな。
これらのデータを基に系統的レビューをまとめてみた結果、

  • アルブミン尿(タンパク質が尿として排出される量):上昇しない、つまり関係ない…!
  • 尿PH:低下しない、つまり関係ない…!
  • GFR(糸球体濾過量):低下しない、つまり関係ない…!
  • 尿中カルシウム排泄量:生理学的に(調節するために)上昇していた。但し、それ自体は病気とは関係ない…!
  • 血清尿酸値:生理学的に(調節するために)上昇していた。但し、それ自体は病気とは関係ない…!

とのこと。
つまりまとめると、

  • 高タンパク質食は、尿路結石や腎疾患リスク(慢性腎臓病(CKD))と関係がない可能性が高い…!
  • 腎機能のパラメータに変化があっても、それは生理学的に(調整するために)反応しているだけ…!

ってことになりましょう。
やっぱブレナー仮説はヒトには当てはまらないみたいですな。

因みに2003年のボン大学の研究2012年のカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究なんかを見てみますと、一般人口における尿路結石の発症率は4.7%~8.8%とのこと。まぁまぁな確率でなる人がいるみたいなんで、食事や生活習慣には気を付けていきたいですな。



個人的考察

全てのまとめとして、

  • ブレナー仮説は確かに存在するが、腎臓病の人・腎臓病予備軍の人・腎臓病が併発しそうな人など腎臓機能に問題がある、ありそうな人に限った話みたい…!
  • つまり、正常な腎臓機能を持つ健康な人であれば高タンパク質食は問題なさそう…!
  • 正常な腎臓機能を持つ健康な人が問題ない理由は、そもそも腎臓・GFRは長期間高止まりしてもオーバーヒートしづらいから…!
  • 更に、プロテインレバレッジのおかげでオーバーヒートを予防するメカニズムが人体に備わっているから…!

となりましょう。
なんで、私は安心して高タンパク質食を続けています。



参考文献