【まとめ】知的障がいを持っていると「老化・認知症になるのが早い」は本当か?どれぐらい早いのか?
日本の高齢知的障がい者の老化・認知機能低下について調べてみた…!
まずは日本国内の研究からチェックしていきます。
2013年の独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園の研究によると、日本の障害者支援施設における高齢知的障害者の身体・認知機能等について調べてみたそうです。
この研究は全国2,597か所の障害者支援施設を対象に行ったもので、2012年8月15日~9月30日までの間にアンケートを郵送し答えたもらったそうな。アンケートの回収率は58.0%(1,506事業所)だったそうで、このアンケートを基に、高齢の知的障がい者の身体機能や認知機能なんかのデータをまとめていったらしい。この1,506か所の障害者支援施設に入所している方は全員で82,126人いたそうで、そのうちの
この研究は全国2,597か所の障害者支援施設を対象に行ったもので、2012年8月15日~9月30日までの間にアンケートを郵送し答えたもらったそうな。アンケートの回収率は58.0%(1,506事業所)だったそうで、このアンケートを基に、高齢の知的障がい者の身体機能や認知機能なんかのデータをまとめていったらしい。この1,506か所の障害者支援施設に入所している方は全員で82,126人いたそうで、そのうちの
- 50歳以上の知的障がいの方:26,251人(32%)
- 65歳以上の知的障がいの方:8,340人(10.2%)
だったとのこと。
また65歳以上の入所者がいると回答したのが1,230か所の事業所だったそうで、そのうち65歳以上の知的障がい者がいると回答した事業所は1,093か所だったみたい。この1,093か所のうちで、個別アンケートをゲットできたのが、65歳以上の知的障がい者8,323人だったということでした。
んで、アンケート結果のポイントをまとめると、以下のようになったそうです。
- 65歳以上の知的障がい者の方で、日中も車いすやベットで過ごしている人は23.6%(4人に1人)もいた…!
- 65歳以上の知的障がい者の約20%(5人に1人)は、認知症のような症状があり、日常生活に支障を来していた…!
- 認知症の疑いのある人を含めると、65歳以上の知的障がい者全体の約45%(2人に1人)に認知機能の低下がみられた…!
- 65歳以上の知的障がい者の方は、身体機能や認知症の症状(認知機能の低下)、食事や排泄の状態において、年齢が高い程、重症化していた…!
更に、
- 65~69歳の知的障がい者のうち16.4%に明らかな認知症の症状が出ていた…!
とのこと。
厚生労働省によれば、2013年時点での日本の65~69歳の認知症の有病率は1.5%、65歳以上の人口全体では8~10%なんで、明らかに認知機能の老化が早い傾向にありますね。
因みに、首相官邸のホームページをみると、2012年の認知症年齢別有病率は、
- 80~84歳の人のうち16.8%の方が認知症を発症していた…!
ってことなんで、15歳ぐらい認知機能低下が早いことになりますね。
となると、冒頭で書いた「平均で10~20歳ぐらい老化が早い」ってのも、概ね正しいのかもしれません。
知的障がい者の高齢化は障がいのない人よりも早く、大体45歳ぐらいから始まると思われる…!
2022年の独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園の研究によると、障がい者の高齢化に関係者がいち早く気づき、連携して支援できる為のモデル開発を行ってみたそうです。んで、この中には知的障がい者の加齢・認知機能の低下・身体機能の低下についての記述がいくつかございまして、ポイントを抜き出してみると以下のようになります。
- 上記で紹介した2013年の独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園の研究では、全国の障害者支援施設を対象に知的障がい者の認知機能の低下について調べていた。結果、65~69歳の知的障がい者のうち16.4%に明らかな認知症の症状があった。一般人口の高齢者の認知症罹患率は8~10%のため、知的障がい者が早期に認知症となる可能性は高い。
- 知的障がい者の場合、40~50代になると認知症などの認知機能の低下がみられるようになる。
- 一般高齢者に比べて知的障がい者は身体機能の低下が10年程早い。しかも急速に進む傾向があり、40代、50代から老化の兆しが出てくる。
- 40代では生活リズムの変化や体力の低下により、疲れやすくなる。結果、動きがゆっくりになってくる。
- 50代では視力や聴力など感覚器官の低下が起きる。また身体機能の低下に伴う歩行の不安定さや転倒リスクも高まってくる。
- 60代では運動機能の低下や食事や排泄など以前はできていた日常生活動作が出来なくなってくる。
- 他にも一般高齢者に比べて知的障がい者は早期に様々な病気にかかりやすい。
- 知的障がい者の高齢化は、障がいのない人よりも早く、大体45歳ぐらいから始まると思われる。
知的障がい者の認知機能の低下、身体機能の低下ともに40~50代から始まるみたいですねー。またこの研究では45歳を一つの境界線と考えているみたいです。
知的障がい者の老化スピードは早い…!と感じている台湾の知的障がい者施設の管理者は90%以上…!
2011年の国防医学院の研究によると、知的障がい者の早期老化とそのサービスの準備について施設管理者側の視点から調べてみたそうです。
そもそも知的障がいのある高齢者の寿命は延びているんですが、その方々の老化スピードの情報は限られております。そこでサービスの準備を含め、施設管理者にどんな感じか聞いてみよう…!となったのが今回の研究になります。
そもそも知的障がいのある高齢者の寿命は延びているんですが、その方々の老化スピードの情報は限られております。そこでサービスの準備を含め、施設管理者にどんな感じか聞いてみよう…!となったのが今回の研究になります。
まず研究者たちは、台湾で知的障がいのある方を支援している施設に所属する54人の管理者にアンケートを実施したそうな。因みにアンケートは2009年11月に行われたとのこと。
次に回答されたアンケートを集計し、ポイントをまとめてみたらしい。つまり、この研究は横断研究ってことですね。
んで、集計結果を見てみますとこんな感じ。
- 女性の回答率は70.4%、男性の回答率は29.6%だった。
- 回答者の平均年齢は42.2歳(範囲22歳から66歳)だった。
- 障害福祉サービスの平均経験年数は11.0±7.8年だった。
- 現在の施設での平均勤続年数は6.7±6.5年だった。
- 障がい者施設の勤務者が70.4%、福祉財団系の施設の勤務者が13.0%だった。
- 50人以下の小さい施設が多かった。
- 知的障がい者の早期老化はある…!と答えた管理者は90%以上だった…!
- 一方で、アンケートに回答した管理者のほぼ全員が台湾政府の政策は不十分だ…!と答えていた。
- 管理者の半分以上は、高齢知的障がい者のサポートが満足できるものではない…!と答えていた。
- 知的障がい者に対する台湾政府の高齢化対策の優先順位について、医療面、経済面、日常生活介護面の順番で重要度が高いと回答していた。
まぁ、あくまで管理者視点から見た結果なんでエビデンスレベルは低いんですが、やはり知的障がい者の老化スピードは早いと感じる方は多いみたいですね。
ということで、台湾でも状況は似ているみたいですね。
日本も超高齢化社会まっただ中であり、高齢の知的障がい者の方も増えていますんで、この分野の福祉を考えて行かないといけないのかな~と思いました。
ダウン症のない知的障がいのある高齢者を対象に認知症の発症率を調べてみた…!
2013年のユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの前向きコホート研究によると、高齢知的障がい者の認知症発生率について調べてみたそうです。
そもそも以前から知的障がいのある高齢者は健常者に比べ、認知症になるのが早いのでは…?って話があったんですよね。また一方で、ダウン症の方のアルツハイマー病リスクが高いこと、ダウン症を持つ方の認知機能低下が多いことは先行研究で明らかになっておりました。
…っとここで一応ダウン症について復習しておきましょう。
ダウン症(21トリソミー)は、皆さんご存知ダウン博士が見つけた病気でして、通常、ヒトの染色体は2本で対になっており、1~23番までの合計46本となっております(余談ですが、23番目の染色体がXXだと女性、XYだと男性です)。しかし、ダウン症の方は21番目の染色体が2本ではなく、1本多い3本になっているんですよね。
そのため、ダウン症を持つ知的障がいの方の認知症リスクについては研究が進んでいるんですが、ダウン症のない知的障がいの方の認知症については、あんまよく分かっていなかったりしたんですよね。
そこで今回研究者たちは、ダウン症のない知的障がいのある高齢者を対象に認知症の発症率を調べ、健常者と比べてみたんだとか。
まず研究者たちはロンドンの5つの区に住んでいるダウン症のない60歳以上の知的障がい者に協力を依頼したそうな。結果、222名の方がOKしたとのこと。因みに参加者の平均年齢は68.8歳で年齢の範囲は下は60、上は94歳だったらしい。平均追跡期間は2.9年だったそうで、その間、国際疾病分類(ICD)とDSM-IVの基準に従って認知症と診断されたかどうか見てみたとのこと。最後に集められたデータから、十分な情報を得られなかった方や死亡した方、ドロップアウトした方なんかを除外していったそうです。
では結果を見てみましょう。
- スタート時の調査で認知症のなかった高齢知的障がい者のうち、生存していた方は134名だった。134名中、21名(15.7%)が認知症と診断された…!
- 65歳以上の知的障がいの方の認知症発症率は、一般の高齢者と比較して約5倍(4.98)だった…!
- 一般の高齢者は90歳を超えても認知症発症率は増加しているのに対し、高齢者の知的障がいの方の発症ピークは70~74歳だった…!
ダウン症の方を除いた知的障がいの方を見てみた結果もやっぱり同じ感じで、認知機能低下のスピードは早いみたいですねー。
しかもそのスピードが5倍っていうんだから驚きです。また、認知症の発症率は通常、右肩上がりになるはずなのに70~74歳がピークってのも気になりますな。これは単に認知機能低下が早いからなのか、平均寿命との関係なのか…。
いずれにしてもやはり知的障がいの方の認知機能低下スピードは早そうです。
ダウン症の有無に関わらず、知的障がいの方の認知症の可能性には注意を払って支援した方が良さそう
2018年のニューサウスウェールズ大学の研究によると、オーストラリアのお医者さんに対する知的障がいの方の認知症ガイドラインっていうのを作ってみたそうです。
この中に知的障がいにおける認知症発症率等についてのレビューがあるんですよね。早速そのレビュー部分のポイントを記してみますとこんな感じ。
- 知的障がいのある方は、知的障がいのない方に比べて、認知症リスクが明らかに高い。
- ダウン症は認知症、特にアルツハイマー病のリスクが高い。しかも比較的若いときから発症する事が多い。
- 例えば2000年のイリノイ大学シカゴ校の研究によると、60歳以上のダウン症の方のうち、大体50~70%の方が認知症の症状があった(因みに一番多い診断はアルツハイマー型認知症)
- ダウン症のない知的障がいの方の認知症に関する研究は非常に少なく、真逆の結果が出ていることもある。
- 例えば、1997年のセント・メアリーズ病院の研究では、ダウン症のない知的障がいの方は一般集団と比較して、認知症の発症率が高かった。
- 一方で、2004年のニューヨーク州立発達障害基礎研究所の研究では、ダウン症のない知的障がいの方は一般集団と比較して、認知症の発症率が同等又はそれ以下だった。
- 更に2014年のグロスターシャーヘルスアンドケアNHS財団トラストの研究によると、ダウン症のない知的障がいの方は一般集団と比較して、認知症の発症率が平均で10歳程若かった。
上記の2014年のグロスターシャーヘルスアンドケアNHS財団トラストの研究をもうちょい詳しく見てみると、一般集団、知的障がいの方、ダウン症の方の認知症発症率は以下のようなグラフになっております(クリック又はタップで拡大できます)
一般集団は60歳ぐらいから認知症リスクが上がっていっておりますが、知的障がいの方は50歳ぐらい、ダウン症に至っては30歳ぐらいから徐々に上がっております。このグラフを見ても、やはり知的障がいの方の老化・認知症は健常者に比べ10~20歳ぐらい早そうですね。
上記の結果から研究者曰く、
- ダウン症の有無に関わらず、知的障がいの方の認知症の可能性には注意を払っていく必要があるだろう
としています。
年を取るにつれて誰しも認知機能は落ちてしまいますが、知的障がいの方を支援する場合は特に認知機能の低下、認知症を意識していった方が良さそうですね。
まずダウン症の方は加齢に伴い
- 視覚障害
- 聴覚障害
- てんかん
- アルツハイマー病
の早期発症リスクが高いそうです。
やはり認知機能の低下(アルツハイマー病)は健常者より早そうですね。
また寿命についての記載もありまして、なんでもダウン症の方は健常者に比べて10~20年程短い傾向にあるんだとか。
認知症・認知機能低下は40歳ぐらいから始まるみたい
次に具体的なダウン症の方の認知症・認知機能低下のリスクについて見ていきましょう。
まず1984年の研究によると、ダウン症とアルツハイマー型認知症の関連性についてまとめてみたそうです。
なんでもこの研究によれば、アルツハイマー型認知症は40歳以降のダウン症の方のほぼ全てに現れるとのことでして、ここが一つの基準となるそうな。
この40歳って基準は他の研究でも出てきます。例えば、2000年のカンミス病院の研究によると、ダウン症とアルツハイマー病の関係について調べてみたそうです。
40歳以上のダウン症の方の脳を見てみますと、アルツハイマー病と同様の状況が見られ、また3分の1には認知症も見られたそうな。
また2018年のキングス・カレッジ・ロンドンなどの研究によると、ダウン症の方のアルツハイマー病の発症率は、
- 35歳~49歳:9%~23%
- 50歳~59歳:55%
- 60歳~:75%~100%
といった感じとのことです。
因みにグラフにすると以下な感じらしい。
上記によれば、ダウン症の方が認知症と診断を受けるのは平均年齢で55歳ってことになるんですが、物体記憶力テストをした研究によると、認知機能の低下はおよそ40歳以降から始まっている感じだったそうです。因みにそのグラフがこちら。
つまり認知症と診断される15年前からすでにその予兆は観察できる可能性があるとのこと。
認知症の検査って基本的に60歳ぐらいにならないとしないんで、55歳が平均ってのも納得できますな。また実際のところは15年前、つまり40歳から出てくるってのも先行研究と同様の結果なんで、やはりこの当たりが一つの基準っぽいですね。
ダウン症の方の認知機能低下は40歳ぐらいからスタートする…!最初に低下するのは記憶力と注意力…!
2019年のキングス・カレッジ・ロンドンの研究によると、ダウン症の方の加齢とアルツハイマー病の認知の変化を調べてみたそうです。
この研究はイングランドやウェールズ地方に住んでいる16歳以上のダウン症の方312人を対象に行ったとのことで、様々な認知テストや参加者について詳しい方(親族や介護者など)からの情報を集めたんだとか。次にそれらのデータを統計処理し、認知機能低下の年齢や具体的にどの認知機能から落ちてくるのかチェックしたとのこと。
61歳以上のダウン症の方15人のデータは不足が多く使えなかったそうで、最終的なサンプル数は、16歳~60歳までの範囲の297人のダウン症の方だったらしい。
気になる結果は以下のようになったそうです。
- ほぼ全てのテストの結果で、年齢と認知機能低下は有意な関係性があり、年齢が高くなるほど認知機能が低下していた…!
- 16歳~30歳のグループと比較してみると、41歳〜45歳のグループから認知機能が著しく低下し始めていた…!
- 大部分の認知機能は、46~50歳で著しく低下していた…!
- 51歳~55歳までにほぼ全ての認知テストのパフォーマンスが著しく低下していた…!
- 最も早く低下していたのは、記憶力と注意力だった…!
- これらの変化はアルツハイマー病の進行によるものだと考えられた…!
やはり認知機能低下は40歳ぐらいからスタートし始め、50歳ぐらいで全体のパフォーマンスが低下するみたいですね。また、その40歳ぐらいのスタートで落ちる認知機能が記憶力と注意力ってことでした。認知症のキーになる記憶力の低下が入っているのはポイントでしょうね。
ダウン症の方の認知機能は記憶力や実行機能、運動計画から低下していく…!
2020年のウィスコンシン大学マディソン校などの研究によると、ダウン症の成人の睡眠・認知・アミロイドβの関係について調べてみたそうです。
この研究は、認知症になっていない26~56歳のダウン症の方47人に協力をお願いしたものでして、
- 睡眠:手首に装着した加速度計と本人+介護者が記録した7日間の睡眠日記で調べた
- アミロイドβ(脳内の老廃物):陽電子放射断層撮影法を用いて脳内を調べた
- 認知:様々な認知テスト、記憶力テストを行い調べた
って感じで各項目をチェックしたそうな。次に集まったデータを統計処理し、最後に共通点を照らし合わせて行ったとのこと。
んで、気になる結果は以下な感じ。
- 47人中7人(15%)の方が軽度の認知障害だった。
- 47人中40人(85%)の方は認知的に問題なかった。
- 睡眠障害、特に夜間の覚醒時間が長い人ほど、アミロイドβが明らかに高かった…!
- 睡眠障害、特に夜間の覚醒時間が長い人ほど、記憶力、実行機能、運動計画(動こうと思って動くまでの準備や反応時間)といった認知機能が明らかに低下していた…!
睡眠の質の低下によって認知機能が落ちるのは以前に紹介した通りですが、どうやらダウン症の方は記憶力、実行機能、運動計画から落ちてくるみたいですね。またこちらも以前に挙げたとおり、睡眠不足・アミロイドβの上昇がアルツハイマー病と深く関わっていそうですな。
ということで上記の研究結果と合わせると、ダウン症の方の認知機能は、
- 記憶力・注意力
- 実行機能・運動計画
の順で低下していきそうですね。
これらは40歳ぐらいを一つの基準として予兆を見つつ、適切に支援していきたいですねー。
ダウン症の方の認知症の特徴や発症する年齢を20年間追跡調査してみた…!
2017年のトリニティ・カレッジ (ダブリン大学)の研究によると、ダウン症の方の認知症の特徴や発症する年齢を調べてみたそうです。
…っとこう書くと、これと似た研究はもう紹介しているじゃん…!と思いたくなるんですが、この研究の強みはその期間。なんと20年間も追跡調査してくれているんですよね。この手の研究でこの期間の長さは非常に貴重と申せましょう。因みに14年間の追跡調査の時点で一度まとめて研究を発表しているんですが、その後も追跡調査は続けていまして、そのアップデート版が今回ご紹介している研究です。
この研究は、35歳以上のダウン症の方77名を対象としておりまして、スタートは1996年になります。その後、2015年までの20年間、追跡調査し続けたとのこと。んで、この期間に参加者が認知症の診断を受けたかどうか、何歳で受けたかなどをチェックし続けたらしい。
その結果がこちら。
- 20年間で77人中75人、つまり97.4%の方が認知症を発症していた…!
- 認知症と診断された時の平均年齢は55歳、中央値は56歳だった…!
- 50歳までの認知症リスクは23%だった…!
- 65歳以上の認知症リスクは80%だった…!
- 知的障がいの程度による違いは見つからなかった…!
20年間でほぼ全ての方が認知症を発症しているってのはまことに残念ですね。しかも認知症の発症は平均55歳で、50歳の時点でのリスクが23%ってのも高いですな。
個人的考察
それでは、今まで見てきた研究結果をまとめてみましょうか。
- 日本の研究では、65歳以上の知的障がい者の約20%(5人に1人)は、認知症のような症状があり、認知症の疑いのある人を含めると65歳以上の知的障がい者全体の約45%(2人に1人)に認知機能の低下がみられた。また65~69歳の知的障がい者のうち16.4%に明らかな認知症の症状が出ており、健常者の場合は80~84歳の人のうち16.8%の方が認知症を発症していたので、15歳ぐらい認知機能低下が早いことになる。更に知的障がい者の場合、40~50代になると認知症などの認知機能の低下がみられるようになり、身体機能の低下は10年程早く、40~50代から老化の兆しが出てくる。以上から、知的障がい者の高齢化は大体45歳ぐらいからは始まると思われる。
- 台湾の研究でも知的障がい者の早期老化はある様子。
- ダウン症の方を除いた65歳以上の知的障がいの方の認知症発症率は、一般の高齢者と比較して約5倍(4.98)であり、60歳以上のダウン症の方のうち、大体50~70%の方が認知症の症状があった(因みに一番多い診断はアルツハイマー型認知症)。ダウン症のない知的障がいの方は一般集団と比較して、認知症の発症率が平均で10歳程若い。知的障がいの方は50歳ぐらい、ダウン症に方は30歳ぐらいから徐々に上がっており、知的障がいの方の老化・認知症は健常者に比べ10~20歳ぐらい早そう。
- ダウン症の方の認知症(アルツハイマー病認知症)は40歳ぐらいから始まる様子。例えば、40歳以上のダウン症の方の脳を見てみると3分の1には認知症が見られたという研究や発症率をみた研究では、35歳~49歳で9%~23%、50歳~59歳で55%、60歳以上で75%~100%といった結果が出ていた。但し認知機能の低下は40歳ぐらい始まっている感じで、最初に低下するのは記憶力と注意力、次いで実行機能や運動計画などと思われる。20年間追跡調査した結果も上記と似ており、参加者のほぼ全ての人が認知症を発症してしまったこと、認知症と診断された時の平均年齢が55歳だったことを踏まえると、この当たりが一つの基準と思われる。
もうちょいざっくり結論をまとめますと、
- ダウン症のない知的障がい:認知機能低下は15歳(45歳)、認知症は10歳(50歳)ほど早く来る。そのため、老化・認知機能低下・認知症は健常者に比べ10~20歳ぐらい早そう。
- ダウン症のある知的障がい:ダウン症がある場合、更に老化・認知機能低下・認知症は早そう。30歳ぐらいから認知症になることもあり、40歳ぐらいではっきりと出始め、平均で55歳の時に発症する様子。また最終的にほぼ全ての方が認知症を発症する様子。
といったところ。
いずれにしても、ダウン症の有無に関わらず、知的障がいを持つ方の認知機能低下・認知症発症が早いのは間違いなさそうなんで、踏まえて支援していきたいですねー。