腸内細菌・腸内環境は大事…!って話は、当ブログでも何度も書いている話題の一つと言えるでしょう。
その始まりについて2009年のヨーテボリ大学の研究によると、ヒトの腸内細菌・腸内環境ってのは出生時に他のヒトや動物、環境、食事を通じて定着することから始まるんですよね。
んがしかし、実は全然分かっていないことが多い分野だったりもします。その原因は色々あるんですが、最も大きな問題の一つとして、腸内細菌の60%以上は培養で分離できないところでしょう。そのため、腸内から取り出すことが出来ず、完全に特徴付けることも出来ないんですよね。困りますな~。
そこで非常に大事なのが狩猟採集民の腸内細菌・腸内環境をチェックすることです。これにより、現代人と比較することで見えてくることが多いんですな。
ということで今回は、狩猟採集民の腸内細菌・腸内環境をチェックした研究を見てみましょう。



未開拓の村に今も住み続けているベネズエラの狩猟採集民「ヤノマミ族」の腸内細菌・腸内環境

2015年のマウントサイナイ医科大学などの研究によると、ヤノマミ族の腸内細菌・腸内環境について調べてみたそうです。
そもそも腸内細菌の多様性が失われ、腸内環境が悪化している原因は西洋化された生活習慣
なんじゃないか…?という話がございます。今回、これが本当なのかヤノマミ族で検証してみることにしたらしい。
ということでまずはヤノマミ族について見てみましょう。1988年の研究によると、ヤノマミ族は祖先が南米に到達して以来、11,000年以上にわたり比較的孤立した状態を維持してきた狩猟採集民になります。
住んでいる場所はベネズエラのアマゾナス州でして、広大なジャングル(約80,000km2)の中に約15,000人のヤノマミ族がいるそうな。んで、ほとんどの村の近くには川があるそうですが、元々は山岳民族でして今も山岳地帯に孤立した村が残っているらしい。
そんなヤノマミ族は1960年代半ばに初めて発見され、アマゾンのジャングルで半遊牧の狩猟採集生活を送っているそうな。そしてベネズエラの開発から保護された地域に居住しており、その多くは未開拓の村に今も住み続けているんだとか。
また驚くべきことに2008年には、地図に載っていないヤノマミ族の村が軍のヘリコプターで発見されたんですよね。但し村人を保護するため、村の名前と座標は未発表とのこと。しかも近代化と接触のない村のヤノマミ族は狩猟採集民であり、農業や家畜の飼育は行っていないそうな。まさに太古の暮らしを今も続ける人たちと言えるでしょう。
つまりヤノマミ族という狩猟採集民は、人類の祖先と似た生活様式を送っており、抗菌作用をもたらすことが知られている現代社会とは無縁なんですな。
今回の研究では、そんなヤノマミ族の口腔(28人)、前腕皮膚(28人)、糞便(12人)の細菌を調べた貴重な研究となっております。因みにサンプルはこれまで地図に載っていなかったヤノマミ族の村人、54人中34人から入手したそうで、推定年齢は4歳から50歳の間だったそうな。また村人たちの食生活については、以下な感じだったらしい。これまた貴重な情報ですな。

【食べていたもの】
  • 野生のバナナ
  • 季節の果物
  • プランテン(グリーンバナナみたいな見た目の果物)
  • ヤシの芯
  • キャッサバ(タピオカの原料、いも)

【狩猟していたもの】
  • 小型の哺乳類
  • 小さなカニ(近くの小川で狩猟)
  • カエル(近くの小川で狩猟)
  • 小魚(近くの小川で狩猟)
  • ペッカリー(イノシシ)(時々)
  • サル(時々)
  • バク(時々)

【その他の情報】
  • 水は村から徒歩5分ぐらいの小川で汲んでいた。
  • 他のヤノマミ族から「医療・診療所」という言葉も聞いており知っていた。
  • 但し診療所までの距離は、山岳地帯を徒歩で少なくとも2週間かかると推定される。

食事は果物、根菜類、鳥、魚、たまに肉って感じですね。しかも現代医療とのアクセスはなしって感じ。
因みに今回比較対象として選ばれたのは、

  1. 南米ベネズエラのアマゾナス州プエルト・アヤクチョ近郊にある2つの村に住むグアヒボアメリカインディアンの家族
  2. アフリカマラウイの4つの農村(チャンバ村、マクウィラ村、マヤカ村、ムビザ村)

とのこと(2012年のワシントン大学の研究データを使用した) 
上記の村は、動物の家畜化、農業の実践といった農耕を行っており、また、ある程度の市場経済、医療アクセス、町へのアクセスなどを備えており、近代化への移行期にあったそうです。
それではヤノマミ族からもらった細菌をDNA解析した結果を見てみましょう。

  • ヤノマミ族の口腔、皮膚、糞便サンプルからは高い腸内細菌の多様性が発見された…!
  • この多様性はこれまで報告されたどの人類集団よりも高かった…!
  • また糞便の多様性は、グアヒボアメリカインディアンやマラウイ人よりもさらに高かった…!

現代に残る狩猟採集民の中でも特に太古の暮らしに近い人たちは、腸内フローラがハンパないんですね。
この結果に研究者曰く、

  • ここで説明するヤノマミ族は、前例のないレベルの細菌多様性を示している。この村の人口が少なく、サンプル数も限られているにもかかわらず、彼らはこれまで報告されている他のどの人類集団よりも、細菌的および機能的の両方で、糞便および皮膚の多様性が有意に高かったのだ

とのこと。
有り得ないレベルというのがひしひしと伝わってきますねー。



個人的考察

因みにこの結果から研究者は、やっぱ現代人の腸内細菌の多様性が少ないのは西洋化が大きく影響しているんじゃないかな~とおっしゃっておりました。特に抗生物質の影響が強いよね~とも言ってましたね。



参考文献