チーズは健康に良いのか悪いのか?
「アンブレラレビューを見てみよう!」シリーズその78です。
チーズの健康効果についてアンブレラレビューを行ってみた…!
2023年の中山大学の研究によると、チーズの健康効果についてアンブレラレビューを行ってみたそうです。
皆さんご存知の通り、チーズは一般的に栄養価が高い発酵乳製品です。しかしこれが健康に良いのかどうかってなると意見が分かれるところなんですよね。
というのもチーズは、
って感じなんですよ。
じゃあ、実際のところどうなんだ…?ってことで今回ガッツリ調べてみることにしたんだとか。
まず研究者たちは、2022年8月31日までに発表された該当する前向きコホート研究のメタ分析をPubMed、Embase、コクランで検索してみたそうな。すると全部で437件の研究がヒットしたとのこと。また、上記3つのデータベースで最近発表されたオリジナルの前向きコホート研究も検索してみたらしい。するとこちらでは25件の研究が見つかったんだとか。
これらの研究から重複している物を除きつつ、更に質の高い物を選んで行ったそうです。これにより選ばれたメタ分析は54件でして、この中には合計124件のオリジナルの前向きコホート研究があったとのこと。ここから新たに質の高い63件の研究も加えたそうで、合計187件のオリジナルの前向きコホート研究が集まったそうな。
最後に曝露量なんかが表示されていなかった25件を除外して、最終的に質の高いオリジナルの前向きコホート研究が162件集まったそうです。これらを基にアンブレラレビューを行った結果、以下のような傾向がみられたんだとか。
【全死亡率】
- サンプル数は1,030,243人以上(136,298人の症例を含む)だった。
- チーズの摂取量が最も多い人たちは、最も少ない人たちに比べて、全死亡率が5%(RR0.95)低下していた…!
- チーズを1日30g食べるごとに、全死亡率が2%(RR0.98)低下していた…!
- この効果はグラフにするとU字型の関係にあった…!
- 全死亡率が最も低くなるのは、チーズの摂取量が1日約40gの時だった…!
【心血管疾患(CVD)による死亡率】
- サンプル数は742,571人(36,965人の症例を含む)だった。
- チーズの摂取量が最も多い人たちは、最も少ない人たちに比べて、心血管疾患(CVD)による死亡率が7%(RR0.93)低下していた…!
- チーズを1日30g食べるごとに、心血管疾患(CVD)による死亡率が4%(RR0.96)低下していた…!
- この効果はグラフにするとU字型の関係にあった…!
- 全死亡率が最も低くなるのは、チーズの摂取量が1日約35gの時だった…!
- チーズの摂取と冠状動脈性心疾患(CHD)による死亡率、脳卒中による死亡率は関係なかった。
【がんによる死亡率】
- サンプル数は1,378,932人(30,818人の症例を含む)だった。
- チーズの摂取量が最も多い人たちは、最も少ない人たちに比べて、がんによる死亡率が0%(RR1.00)と変わらなかった。
【心血管疾患(CVD)・冠状動脈性心疾患(CHD)・脳卒中・高血圧の発症リスク】
- 心血管疾患(CVD)の発症リスクにおけるサンプル数は1,833,112人(86,796人の症例を含む)だった。
- チーズの摂取量が最も多い人たちは、最も少ない人たちに比べて、心血管疾患(CVD)の発症リスクが8%(RR0.92)低下していた…!
- チーズを1日30g食べるごとに、心血管疾患(CVD)の発症リスクが3%(RR0.97)低下していた…!
- 冠状動脈性心疾患(CHD)の発症リスクにおけるサンプル数は686,573人(17,568人の症例を含む)だった。
- チーズの摂取量が最も多い人たちは、最も少ない人たちに比べて、冠状動脈性心疾患(CHD)の発症リスクが8%(RR0.92)低下していた…!
- チーズを1日30g食べるごとに、冠状動脈性心疾患(CHD)の発症リスクが4%(RR0.96)低下していた…!
- 脳卒中の発症リスクにおけるサンプル数は813,636人(21,138人の症例を含む)だった。
- チーズの摂取量が最も多い人たちは、最も少ない人たちに比べて、脳卒中の発症リスクが7%(RR0.93)低下していた…!
- チーズを1日30g食べるごとに、脳卒中の発症リスクが3%(RR0.97)低下していた…!
- この効果はグラフにするとL字型の関係にあった…!
- 全死亡率が最も低くなるのは、チーズの摂取量が1日約40gの時だった…!
- チーズの摂取と高血圧の発症リスクは関係なかった。
【がんの発症リスク】
- がんの発症リスクにおけるサンプル数は9,539,703人(158,601人の症例を含む)だった。
- チーズの摂取量が最も多い人たちは、最も少ない人たちに比べて、がんの発症リスクが1%(RR0.99)と有意ではなかった。
- チーズの摂取量が最も多い人たちは、最も少ない人たちに比べて、エストロゲン受容体(ER)陰性乳がんの発症リスクが11%(RR0.89)低下していた…!
- チーズを1日30g食べるごとに、前立腺がんの発症リスクが6%(RR1.06)増加していた…。
【2型糖尿病の発症リスク】
- 2型糖尿病の発症リスクにおけるサンプル数は674,107人(44,584人の症例を含む)だった。
- チーズの摂取量が最も多い人たちは、最も少ない人たちに比べて、2型糖尿病の発症リスクが7%(RR0.93)低下していた…!
【骨折・認知症・パーキンソン病リスク】
- チーズの摂取量が最も多い人たちは、最も少ない人たちに比べて、全骨折リスクが10%(RR0.90)低下していた…!
- チーズを1日30g食べるごとに、全骨折リスクが5%(RR0.95)低下していた…!
- 全骨折リスクの効果はグラフにするとL字型の関係にあった…!
- 全骨折リスクが最も低くなるのは、チーズの摂取量が1日40gの時だった…!
- チーズの摂取量が最も多い人たちは、最も少ない人たちに比べて、大腿骨近位部骨折リスクが14%(RR0.86)と有意でない低下をしていた。
- チーズを1日30g食べるごとに、股関節骨折リスクが14%(RR0.86)低下していた…!
- 股関節骨折リスクの効果はグラフにするとL字型の関係にあった…!
- 股関節骨折リスクが最も低くなるのは、チーズの摂取量が1日40gの時だった…!
- チーズの摂取量が最も多い人たちは、最も少ない人たちに比べて、認知症リスクが19%(RR0.81)低下していた…!
- チーズの摂取量が最も多い人たちは、最も少ない人たちに比べて、パーキンソン病リスクが26%(RR1.26)増加していた…。
【その他の健康効果】
- 小児の虫歯リスクが63%(OR0.37)低下していた。
- 骨粗しょう症リスクが72%(OR0.28)低下していた。
- 乳児の喘鳴リスクが49%(OR0.51)低下していた。
- 1型糖尿病リスクが45%(HR0.55)低下していた。
- 乳児疝痛(にゅうじせんつう:生後数ヶ月の乳児にみられる原因不明の過度の泣き声のこと)リスクが11%(OR0.89)低下していた。
そしてこの中で、エビデンスレベルとの兼ね合いを見てみた結果がこちらとなります。
【高いエビデンスレベル】
- なし。
【中程度のエビデンスレベル】
- 全死亡率:逆相関あり…!
- 心血管疾患(CVD)による死亡率:逆相関あり…!
- 心血管疾患の発症リスク:逆相関あり…!
- 冠状動脈性心疾患(CHD)の発症リスク:逆相関あり…!
- 脳卒中の発症リスク:逆相関あり…!
- がんによる死亡率:相関なし…!
- 高血圧の発症リスク:相関なし…!
- 前立腺がんの発症リスク:相関なし…!
残りは低い又は非常に低いエビデンスレベルだったそうです。
これらを見ると、チーズは健康良い…!と言えるでしょう。
個人的考察
因みに研究者曰く、
- 特に1日40g以上、チーズを摂取することによって、その健康効果が顕著に現れるだろう
としています。
チーズは1日40g食べると良い…!と覚えておきたいですね。