【まとめ】体脂肪や筋肉量を調べられる「DXA(二重X線吸収法)」の正確性と精度はどうなのか?
当ブログでは、様々な運動やダイエットの記事をご紹介しておりますが、その中で良く出てくるのが、DXA(二重X線吸収法)というものです。DXAは体脂肪や筋肉量を計るのに精度が高くて良い…!って話なんですな。
DXAの体脂肪の誤差は大体0.8~2.8%…!
2012年のペンシルベニア州立大学の研究によると、体組成を測定するためのDXA(二重X線吸収法)の正確性と精度について調べてみたそうです。そもそも1989年のカリフォルニア大学サンディエゴ校の研究を見てみると、DXA(二重X線吸収法)は1980年代後半に臨床現場に導入されたそうで、骨や軟部組織を画像診断する分野に大きな影響を与えたそうな。
んでこの話からも分かる通り、DXAの主な用途は、骨粗鬆症やその他の骨の疾患を診断するための骨密度(BMD)の測定となります。DXAは、それ以前の方法よりも正確性と精度が向上しており、更に骨粗鬆症による骨折の優先部位である股関節や脊椎、上腕遠位部の骨密度を測定できる機能も備えているんですな。
そんなもともとダイエットとなんも関係ないDXAですが、1993年の米国農務省の研究によると、DXAの二次的な(但し無視できない)用途として、体組成の評価、つまり脂肪量(体脂肪)と骨を除いた除脂肪量(除脂肪体重≒筋肉量)の測定機能があるとのこと。DXAは高エネルギーと低エネルギーの2つのX線を人体に透過してそのスピードで、骨密度、脂肪量、除脂肪量を区別出来るんだとか。
では、DXAの正確性と精度はどれぐらいか…?ってことで、過去の研究を見直ししているんですが、そもそもDXAによる体脂肪率は平均して過小評価されやすいみたい。またこの傾向はスリムな人に特に起きやすいそうです。更にDXAの機械自体の結果のズレもあるそうな。
そして具体的な誤差についてはこのようになっておりました。
- 除脂肪量(≒筋肉量)の測定:誤差は約1.0%
- 体脂肪量(体脂肪率)の測定:誤差は0.8~2.7% 、2.8~4.4%の範囲
- 部位別の体組成の測定:全身測定よりも制度が劣るそうで、特に体幹の誤差は0.8~4.8%と高い
つまり、体脂肪の誤差は大体0.8~2.8%ってところですな。なかなか良い精度。
またDXAは、他の体組成の評価方法に比べて比較的簡単に行え、体の脂肪と除脂肪(≒筋肉)の区別をつけるだけではなく、除脂肪組織と脂肪組織の分布をチェックできるんですよね。つまりどのあたりに脂肪や筋肉が多くついているか少なくついているか見れるんですな。これは特に肥満や拒食症(拒食症の人は脂肪の付き方、筋肉の付かなさに特徴がある)などのリスクをチェックするのに有効らしい。
因みに体脂肪率を出すのに一般的なBMIはもちろん完全に正確なスケールではありません。上記に書いたようにDXAは実際にスキャンして脂肪や筋肉量を見るので、BMIのような計算からの推測よりも、より精度が高いんですな。
更にこの研究では、体組成評価のゴールドスタンダードである4-Cモデル(4コンパートメントモデル)と比較した研究もチェックしているんですが、過小評価、有意な平均値の差、大きな個人差、一貫性のない誤差なんかがあったみたいです。
以上の結果から研究者曰く、
- DXAは、精度が高く、広く利用され、放射線量が低いため、体組成評価のための便利で有効な診断ツールと言える。過去20年間のDXAの歴史は、骨密度と体組成の両方を時間効率よく且つリスクを最小限に抑えて評価する方法を可能にしたと言えるだろう
としています。
やっぱDXAは精度の高い測定法として使えそうですな。
体組成や体脂肪(体脂肪率)を調べる方法は大きく2つ…!
体組成や体脂肪(体脂肪率)ってのを調べる方法は大きく2つありまして、
- 直接法:直接解剖してチェックする。生きているヒトでは不可能な方法
- 間接法:間接的な方法を用いてチェックする。生きているヒトでも可能な方法
となっております。
つまり、自宅にある体脂肪計や計算して出るBMI、健康診断での測定やより精密に検査できるDXA(二重X線吸収法)は全て間接法というカテゴリーに属するんですよね。
2,3,4コンパートメントモデルってなに…?
1999年のフリンダース大学のレビュー論文によると、2,3,4コンパートメントモデルにおける体組成の精度について見直ししてみたそうです。
そもそも体組成を計る際にチェックする項目の数で精度は変わりまして、基本的に多い程、より精度がアップするんですよね。んで、大きく分けると、以下の3種類からなるらしい。
- 2-Cモデル(2コンパートメントモデル:2C法):脂肪量(体脂肪)と除脂肪量(筋肉量など)の2つに分けてチェックする方法。例としては、水中体重秤量法(水中体重測定法)
- 3-Cモデル(3コンパートメントモデル:3C法):脂肪量(体脂肪)、除脂肪量(筋肉量など)、骨密度(又は水分量)の3つに分けてチェックする方法。例としては、脂肪量、除脂肪量、骨密度をチェックするDXA(二重X線吸収法)
- 4-Cモデル(4コンパートメントモデル:4C法):除脂肪量を更に水分とタンパク質に分けて、脂肪量、タンパク質、水分、骨密度の4つに分けてチェックする方法。体密度法、重水希釈法、DXA、体重測定の4種のデータ合わせて行う。
んで、このレビューによれば、4-Cモデルは3-Cモデルよりもわずかに精度が高い感じでして、3-Cモデルと4-Cモデルは、2-Cモデルよりもかなり精度が良いとのこと。ベストは4-Cモデルだけど、めっちゃ金や時間、労力がかかるし、ほとんど精度も変わらないから、コスパ重視で3-Cモデルがベターでしょう…!って感じですね。
つまり、DXA(二重X線吸収法)は体組成をチェックする上で最もコスパの良い方法ってことになります。
9種類の体組成の測定方法を行い精度をチェックしてみた…!
2004年のマーストリヒト大学の研究によると、体組成の測定方法を比較してみたそうです。
この研究は、横断研究と縦断研究の2つの実験を行ったと言うもので、参加者は、20歳から45歳の男性ボディビルダーだったそうな。また、少なくとも3年間の筋トレ経験者であり、最低週4回、毎週8時間は筋トレをしている人たちだったらしい。
1つ目の実験では、この男性ボディビルダー27人を対象に、以下の9種類の体組成の測定方法を行い精度をチェックしてみたんだとか。
- 4-Cモデル(4コンパートメントモデル:4C法):除脂肪量を更に水分とタンパク質に分けて、脂肪量、タンパク質、水分、骨密度の4つに分けてチェックする方法。精度は最高だが金、時間、労力がめっちゃかかる。
- 水中体重秤量法(水中体重測定法):水中で体重を測定しつつ、陸上でも体重を測定。その差から計算する方法。
- 重水希釈法:水(重水)を飲んでもらいつつ、尿として排出される重水の濃度をチェックして計算する方法。
- DXA(二重X線吸収法):高エネルギーと低エネルギーの2つのX線を人体に透過してそのスピードで、骨密度、脂肪量、除脂肪量を区別し計算する方法。
- 3-Cモデル(3Cw):全身の水分量を組み込んだ3-Cモデル。
- 3-Cモデル(3Cb):骨密度を組み込んだ3-Cモデル。
- BMI:身長と体重から計算する方法。気になる方はこちらで計算できます。
- キャリパー法:キャリパーという器具を使って、皮下脂肪をつまみ、その厚さから計算する方法。
- 生体インピーダンス法:体に微弱な電流を流して、電気を通しにくい脂肪の電気抵抗(インピーダンス)から体脂肪を計算する方法。市販されている普通の体脂肪計の測定方法がコレ。体の水分量の変化によって結果が変わる弱点がある。
2つ目の実験では、実験1に参加したうちの15人が参加したもので、筋トレを8週間行ってもらい体組成を変化させつつ、上記の方法で測定、精度がどうなのか調べたものになります。
最後に集まったデータを統計処理したそうです。
ではまず横断研究の結果を見てみましょう。
4-Cモデルを基準にした場合における、8種類の体組成の測定方法と体脂肪率の精度と誤差のグラフは以下な感じでした。
ポイントを挙げてみると、
- BMI(体脂肪率が多めに出がち)と3-Cモデル(3Cb)(体脂肪率が少なめに出がち)を除いて、誤差は少なかった…!
- 但し、誤差の範囲は、広い物がほとんどだった…!
って感じ。
これだけみると、BMIよりも生体インピーダンス法とDXAの方が精度が高くて、更に生体インピーダンス法よりもDXAの方が誤差の範囲が少なく良い感じですね。
次に縦断研究の結果です。
4-Cモデルを基準にした場合における、8種類の体組成の測定方法と体脂肪率の精度と誤差のグラフは以下な感じでした。
こちらもポイントを挙げておくと、
- BMI(体脂肪率が多めに出がち)と生体インピーダンス法(体脂肪率が多めに出がち)と3-Cモデル(3Cb)(体脂肪率が少なめに出がち)を除いて、誤差は少なかった…!
- 但し、誤差の範囲は、広い物がほとんどだった…!
- 特に、生体インピーダンス法の誤差の範囲は非常に大きかった…!
となっておりました。
1日の切り取りではなく、日々の測定で見てみると様相が変わりましたな。
もうちょい詳しくポイントを挙げておきますと、
- BMI<生体インピーダンス法<DXAの順で精度が高くなっていた…!
- BMIの精度が上がっていた…!
- 生体インピーダンス法の精度が下がっていた…!
- DXAの精度は依然として高かった…!
- 生体インピーダンス法よりもBMIの方が誤差の範囲が少なくなっていた…!
って感じ。
特に生体インピーダンス法の誤差が大体-5%から+8%なんで、市販の体脂肪計に乗って、体脂肪率が15%…!って出ても、もしかしたら、10%の可能性もあるし、23%の可能性もあるということに…。いやいや見た目からして全然変わっちゃいますしこれじゃあ信用できませんね…。
これらを見た雑感としては、
- やっぱDXAは精度が高くて良いなー
- BMIは手軽で良いけど体脂肪率が高めに出がちだなー
- 生体インピーダンス法はBMIより良さそうだけど、場合によってはBMIより信用できないなー
- 生体インピーダンス法は体内水分量の変化する事(食べる、動く、風呂に入るなど)で誤差が激しいから、この辺に注意しつつ、更に同じ時間・同じ状態でやらないと全然使えないなー
- てか、風呂上りに体脂肪計に乗って生体インピーダンス法で体脂肪率を計っても意味ないなー
と思いました。
正直、DXAでチェックする場合を除き、体脂肪率って数字よりも見た目でチェックした方が精度が高そうですね。
プロスポーツ選手を対象にDXAの精度と正確さを調べてみた…!
2014年のシドニー工科大学の研究によると、プロスポーツ選手を対象にDXAの精度と正確さを調べてみたそうです。
この研究は、プロのオーストラリアンフットボール選手36人を対象にしたもので、以下の2グループに分かれてもらい体組成を評価したと言うものになっております。
- ファンビームDXA:22人
- ペンシルビームDXA:25人
ファンビームとかペンシルビームってのは撮影方法の違いって感じですね。
んで、両方とも2回連続でDXAによるスキャンをしたそうな。更にベースとなる測定値の為に20回もスキャンしたらしい。
その結果、
- 両方のDXAから分かった筋肉量と骨密度はかなり正確だった…!
- 両方のDXAから分かった脂肪量は正確だった…!
とのこと。
どうやらDXAであれば、どれもかなり正確に筋肉量・骨密度が分かるみたいですねー。脂肪量に関してもある程度正確みたいで許容範囲といったところでしょうか。
個人的考察
ということで、DXAの結果は信頼して良いと思います。