【まとめ】自分自身を傷つけちゃう自傷行為の原因は何か?どう対策・支援すべきか?
おそらくこのブログのお読みの方の大半は障がいのある方と何らかのかかわりをしているかと思いますが、当事業所にもおられるように、自傷行為を行っている、行っていた、これから行いそうな方がいるかと思います。
ただ、この辺はデリケートな部分なのもあって支援による介入が難しかったりするんですよね。
「自傷行為」とは何か…?
そもそも「自傷行為」とはどのような事を指すのでしょうか…?
そこでまず参考にしたいのが2003年のオックスフォード大学の研究になります。この研究によれば「自傷行為」とは、
- 自殺意図の度合いやその他の種類の動機に関係なく、オーバードーズ(薬物の過剰摂取)や自傷行為(リストカットなど)を含む全ての意図的な行為を表す
としています。
そして2002年のノルウェー科学技術大学の研究や2008年のゲント大学の研究なんかを見てみますと、上記には、自殺未遂のような自分の死をもたらす意図的行為、自分の死をもたらさない意図的行為、それらが合わさった動機を持つ行為も含まれるんだとか。
更に1969年の研究にある「パラ自殺」っていうものも同じ範囲の行動を含むとしております。但しこの辺は複雑でして、例えば弁証法的行動療法(DBT)で有名なマーシャ・リネハンの1991年の研究によれば、「パラ自殺」は、アメリカでは、特に自殺意図のない自傷行為を指すのに使用されているとのことで、ごちゃごちゃになりやすいことから、イギリスを含む他の国々ではほとんど使われなくなっているそうな(確かに日本でも「パラ自殺」って聞きませんよね)
更に更に複雑なのが精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)ではこの自傷行為を2つの種類に分けていることです。その2つを一応挙げておきますと、
- 自殺行動障害(SBD):自殺する計画を立てて実行した場合に下される障がい
- 非自殺的自傷行為(NSSI):自殺意図のない自傷行為
となっております。そしてこれら2種類が自傷行為に含まれるとのこと。
但しこれまた訳が分からなくなる要素でして、2013年の研究なんかでも、多くの研究者や医師は、やや誤解を招く分類であると考えているんだとか。
こんな感じで掘り下げていくときりがないんで、
- 自傷行為は、自殺の意図を持たずに自分自身に身体的損傷を与える行為
と覚えておくと良さげです。
具体例としては、自分で自分の体を切ったり、自分で引っ掻いたり、自分で殴ったり、わざと薬物を過剰摂取してみたりなどとなります。
「自傷行為」はどれぐらい起きているのか…?
続いて自傷行為がどれぐらい起きているのか見ていきます。
まず結論から申しますと、
- 若者や成人のかなりの割合が生涯にわたって自傷行為を行っていた
- しかも癖になる可能性も高かった
そうです。
いくつか例を挙げておきますと、
- 2007年のオックスフォード大学の研究:イギリスでは毎年、総合病院で自傷行為に関連する症例が200,000件以上発生していた
- 2013年の香港大学の研究:香港では、青年期に自傷行為を行う割合が男性で13.4%、女性で19.7%もあった
- 2002年のリーズ大学の系統的レビュー:自傷行為が止められず繰り返してしまうことはかなり多く、1年以内だと16%、4年以内だと23%の方が再び自傷行為を行っていた
って感じです。
自傷行為は若者や成人で行う可能性が結構高く、また、繰り返してしまう可能性も高いみたいです。
なぜ「自傷行為」をしてしまうのか…?やめられないのか…?
ではなぜ自傷行為をしてしまうのでしょうか…?
次は原因について見ていきましょう。
まず参考にしたいのが2011年の安徽医科大学の研究になります。
この研究は、中国の8つの省にある中学校、高校、大学に通う青少年や成人した若者を対象にしておりまして、サンプル数は17,622人となっております。
そのうち、
- 過去1年間で自傷行為をしたことがあると答えた学生は3,001人(17.0%)もいた
とのこと。
先程の研究同様、結構な割合ですね。
また自傷行為の回数についても聞いてみたところ、
- 1回:742人(4.2%)
- 2回以上:2,259人(12.8%)
って感じでして、やはりこれも先程同様、繰り返す傾向があったみたい。
そして本題の原因についてですが、かなり多岐にわたっておりまして、
- 家族構成(主に両親)
- 父親の学歴(特に大卒でない場合)
- 家庭の年収
- 喫煙の有無
- 身体イメージ(太りすぎ)
- うつ病スケールのより高いスコア
- 無理なダイエット
- アルコールの摂取
とのこと。因みに上記のいくつかは繰り返しにも影響があるそうです。
それでは、もう少し具体的な流れを抑えておきましょう。
2005年のオックスフォード大学の研究をみてみると、この流れが分かりやすくまとまっております。
その前に前提としてイギリスでも自傷行為はかなり問題になっております。なんでもイギリスの青少年の約7%~14%が人生のどこかで自傷行為をするみたいで、また、若者の20%~45%が一度は自殺願望を抱いたことがあったそうな。どの国でも深刻ですね。
では順番に流れを抑えていきます。
まず一つ目として自傷行為前に一般的な問題が起きます。
当たり前ですが、自傷行為は急にいきなり出てくるものではなく、一般的な問題がこじれて起きる現象です。では一般的な問題とは何か…?ってことで、研究者によれば以下のようなことを言うらしい。
当たり前ですが、自傷行為は急にいきなり出てくるものではなく、一般的な問題がこじれて起きる現象です。では一般的な問題とは何か…?ってことで、研究者によれば以下のようなことを言うらしい。
- 両親とのいざこざ
- 学校や仕事でのトラブル
- 彼氏・彼女とのトラブル
- 兄弟とのトラブル
- 体調不良
- クラスや同僚とのトラブル
- うつ
- いじめ
- 低い自己肯定感
- 性的トラブル
- アルコールと薬物の乱用
- 友人や家族の自傷行為の認識
確かに、項目の大半は一般的な問題やトラブルって感じですね。但し、皆さんも経験があるように些細なトラブルが大事になるケースってのは結構あるんで油断できません。
実際、二つ目として一般的な問題がこじれて自傷行為が起きます。
これは、自傷行為が苦痛のサインである可能性が高い、又は嫌な状況から逃げる手段として行っている可能性が高いのが原因です。
もうちょい掘り下げますと、自傷行為の根底にある動機又は理由については下記のようなものが挙げられるんだとか。
もうちょい掘り下げますと、自傷行為の根底にある動機又は理由については下記のようなものが挙げられるんだとか。
- 死にたいから
- 耐え難い苦しみから逃げるため
- 他人の行動を変えさせるため
- 今の状況から逃げるため
- 他人に絶望を見せつけるため
- 他人への仕返しや罪悪感を与えるため
- 緊張を和らげるため
- 助けを求めるため
昔の記事に書いた「少年院の子どもに聞いてみた犯罪を犯した理由」に近い物を感じますね。確かに一瞬だけなら逃げられるのでそのような効果を期待して自傷行為を行う人がいてもおかしくないかと思います。
そして三つ目として自傷行為を繰り返します。
上記にも書いた通り、自傷行為は一度で止められず繰り返す傾向がございまして、その要因としては、
上記にも書いた通り、自傷行為は一度で止められず繰り返す傾向がございまして、その要因としては、
- 過去の自傷行為から
- 人格障害から
- うつから
- アルコールと薬物の乱用から
- 慢性的な心理的社会的問題と行動障害から
- 家族関係の乱れから
- 家族のアルコール依存症から
- 社会的孤立から
- 学業成績の悪さから
というものが挙げられるらしい。
確かにどれもトリガーとして有り得る話ですね。
実際、自傷行為をよくする人に見られる傾向を調べた2005年のオタゴ大学の研究や2003年のマサチューセッツ大学の研究をみてみますと、
- ストレスの高まり
- うつ病の悪化
- 不安感の増加
- 帰属意識の欠如
- 社会的孤立や孤独
- 自尊心の低下
といった心理的社会的特徴が当てはまるそうなんで、さもありなんといったところです。
「自傷行為」の対策・支援の方法は何なのか…?
最後に「自傷行為」から抜け出すための対策や支援方法について見ていきます。
まず参考にするのが上記でも登場した2005年のオックスフォード大学の研究になります。この研究によれば、思春期の自傷行為に対する治療法として以下の物が有効とのこと。
【本人】
【本人】
- 問題解決技法(問題解決療法・SOCCSS法)
- 認知行動療法
- 精神疾患の治療法(抗うつ薬や認知行動療法など)
- 薬物乱用やアルコール依存症の治療法
- アンガーマネジメント(ストレス対策)
【家族】
- 家族療法
【グループ】
- 環境の変化(今の環境から距離を置く。例えばシェルターや一時的な代替宿泊施設の利用など)
なるほど。確かにどれも良さそうですね。
因みに研究者は特に問題解決技法(問題解決療法)をおすすめしておりました。問題解決技法をざっくり説明しますと以下のステップを踏んで解決していく感じです。
- 取り組むべき問題を特定し決定する
- 目標を決める
- 目標を達成するための手順を考える
- 最初のステップとして、どのようなことをするか決める
- 進捗状況を確認する
- 進歩を妨げる心理的要因を対処する
- 次のステップに進んでいく
問題解決技法は専用シートを使うと良いと思います(下記記事からダウンロードできます)
また下記の記事に詳しく載せておりますので併せてご覧ください。
次に参考にしたいのが2016年のメルボルン大学の系統的レビュー・メタ分析になります。
この研究は、1999年から2016年6月までに発表された成人の自傷行為の患者さんを対象にした心理的・社会的介入のランダム化比較試験をMEDLINEやPsycInfo、EMBASEで検索し、質の高い物をピックアップして結果をまとめてみたと言うもの。
この研究は、1999年から2016年6月までに発表された成人の自傷行為の患者さんを対象にした心理的・社会的介入のランダム化比較試験をMEDLINEやPsycInfo、EMBASEで検索し、質の高い物をピックアップして結果をまとめてみたと言うもの。
最終的には36件の質の高い研究(総サンプル数7,354人)をまとめてみた感じで、その結果は、
- 心理的介入+社会的介入が効果的だった
- そのため通常の治療法にプラスして、心理的・社会的介入をするのが良さそう
ということでした。
では具体的に何をすればいいのかですが、
- 対人関係に的を絞って、自傷行為の関係者(本人や家族、グループなど)に認知行動療法を行うのが良さそう
ってことでした。
これにより、苦痛を軽減し、対人関係スキルがアップするので、自傷行為の頻度や繰り返しの減少が期待できるそうです。
もう一つ2015年のコクランの系統的レビューも見ておきます。
これは成人の自傷行為に対する薬物治療の効果について、1999年にコクランが調べた系統的レビューのアップデート版でして、合計546人の患者さんを対象とした7件の研究結果をまとめてみたというものです。
これは成人の自傷行為に対する薬物治療の効果について、1999年にコクランが調べた系統的レビューのアップデート版でして、合計546人の患者さんを対象とした7件の研究結果をまとめてみたというものです。
んで、気になる効果をバーッと見ていくと、
- 抗うつ薬:OR0.76、但し研究の質は低い
- 低用量フルフェナジン:OR1.51、但し研究の質は超低い
- 気分安定薬:OR0.99、但し研究の質は低い
- 天然物(栄養補助食品・サプリメント):OR1.33、但し研究の質は低い
のようになってました。
つまり各研究の質が低い又は非常に低い、そもそも研究数が少ないって感じで、自傷行為の患者さんに薬物治療でどれが効くのか結論を出すのは不可能とのこと。
但し研究の質は低いものの、1件の研究ではフルペンチキソールが自傷行為の繰り返しに有意な減少効果があったみたい(OR 0.09)。とはいっても1件なんで、今後の研究で全然覆る可能性もありますので、自傷行為の治療にベストな薬は未だ見つかっていないみたいです。
最後に新たな治療法の視点もみておきましょう。
2016年のニューサウスウェールズ大学の系統的レビューでは、ウェブベースやスマホベースでの自殺予防介入の効果を調べておりまして、結論だけ書いておきますと、
- 研究数は少ないものの、希死念慮やうつ病、絶望感といった主要なネガティブが大幅に減少していた
そうです。
まだまだこれからの研究に期待という感じですが、若者が困難な状況に対処できるよう、デジタルを組み込んだ新しいアプローチとしてよろしいのではないでしょうか。
若者たちにおける自傷行為のリスク要因と保護要因についてのアンブレラレビュー
2023年のアイルランド王立外科医学院(RCSI)の研究によると、若者たちにおける自傷行為のリスク要因と保護要因についてアンブレラレビューを行ってみたそうです。
まず研究者たちは、2010年から2021年10月12日までに発表された該当研究をOvid Medline、Embase、APA PsycInfo、コクラン、CINAHL、Scopusで検索してみたそうな。すると合計2,384件の研究がヒットしたとのこと。続いて重複研究を除外し、各研究の質をチェック、精査していったんだとか。
最終的に選ばれた系統的レビューは61件でして、若者の年齢層は10~25歳が多かったらしい。
それでは結果を見てみましょう。
まずは自傷行為のリスク要因として多かったものです。
- 小児期の虐待/ネグレクト(特に性的虐待)
- うつ病/不安障害
- いじめ
- トラウマ
- 精神疾患(うつ病/不安障害を除く)
- 薬物使用/乱用
- 両親の離婚
- 家族関係の悪化
- 友人の少なさ
- 他者の自傷行為への曝露
然もありなんってものばっかですね。
次に自傷行為との関連性が強いリスク要因を見てみます。
- 行動障害
- パーソナリティ障害
- うつ病/不安障害
やはり障がい、特に精神障がいは自傷行為のリスクが高まるみたいですね。
では、逆に保護要因はどんな感じなのか見てみましょう。
- 良好な家族関係
- 良好な友人関係
調べた研究自体が少なかったみたいなんですが、上記は保護要因として挙げられることが多かったらしい。因みにその他では、十分な睡眠と学校との良好なつながりってのもありました。リスク要因と保護要因を見てもポイントなのは人間関係の良好さって感じがしますよね。
またこの研究では、自殺意図のない自傷行為と自殺意図のある自傷行為でリスク要因に違いがあるのかもチェックしているんですが、若干の違いはあるものの、多くのリスク要因が共通していたようです。
こうなってくると自傷行為をする理由が気になってくるんですが、多岐にわたっていたとのこと。例えば、
- 対処方法として自傷行為をしていた…。
- 刺激を求めて自傷行為をしていた…。
- 心理的苦痛を回避する為に自傷行為をしていた…。
- 人間関係が上手くいかない時の感情を制御する為に自傷行為をしていた…。
などがあったんだとか。
う~ん。こちらもなんとなく想像通りですねー。基本的にはネガティブな事からの体験の回避(回避行動)と言えるかと…。
更にこの研究では自傷行為への効果的な対策も載っておりましたので下記にまとめておきます。
- 介入の大部分(59%)は認知行動療法(CBT)などの心理療法的な治療が効果的だった…!
- 弁証法的行動療法(DBT)や問題解決技法などの心理療法は、個人レベルでもグループレベルでも効果的だった…!
やっぱ認知行動療法は良いんですねー。
10代の若者における自傷行為と自殺傾向のリスク要因と保護要因
2024年のオークランド工科大学の研究によると、10代の若者における自傷行為と自殺傾向(自殺行動と希死念慮)のリスク要因と保護要因についてメタ分析のアンブレラレビューを行ってみたそうです。
そもそも10代(10歳から19歳)と定義される青少年の死亡原因として最も一般的なものの1つが自殺とのこと。また、自殺は10~24歳の若者における死亡原因の第2位なんだとか。
更に自傷行為に関しても、2022年の四川大学のメタ分析によれば、反復的な自傷行為の有病率は約20%とのことで、青少年の自傷行為・非自殺的自傷行為(NSSI:自殺意図のない自傷行為)も広く蔓延する問題であるらしい。
一方で、これまで数多くの研究でリスク要因と保護要因を調べてきておりましたが、子どもに焦点を当てたものは意外と少なかったりします。
そこで今回、これまでの知見をまとめて自傷行為と自殺傾向のリスク要因と保護要因をガッツリ調べてみることにしたんだとか。
まず研究者たちは、2003年から2022年12月30日までに発表された該当する系統的レビューとメタ分析をMedline、PubMed、Embase、CINAHL、PsycINFOで検索してみたそうな。すると全部で259件の研究がヒットしたとのこと。次に重複している研究や質の低い研究を除外していったらしい。
最終的に選ばれた研究は33件でして、これらを基にアンブレラレビューを行ってみたそうです。
ということで結果の前に自殺行動・希死念慮・自傷行為の定義を確認しておきます。
- 自殺行為:自ら死に至る意図を持った行為
- 希死念慮:自殺について考えること、自殺を計画すること
- 自傷行為:死ぬ意図がなく故意に自分自身を傷つけること。非自殺的自傷行為(NSSI:自殺意図のない自傷行為)のこと
それでは結果をじっくり見ていきますかー。
10代の若者における自傷行為と自殺傾向のリスク要因
まずは各リスク要因を見ていきます。
【抗うつ薬】
- 最も多く研究されていた自殺行動のリスク要因は、SSRIや新世代の抗うつ薬だった。
- これらの研究は、うつ病と診断された参加者を含む、9~25歳の青少年に焦点を当てていた。
- 抗うつ薬は、ミルタザピン、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム、フルボキサミン、ベンラファキシン、エスシタロプラムの服薬をチェックしていた。
- SSRIと自殺行動との全体的な関係はOR1.92だった…!
- 抗うつ薬の曝露と自殺行動との関係はOR1.70だった…!
- 抗うつ薬の使用と自殺行動・希死念慮の複合結果との関連性はRR1.58だった…!
- 抗うつ薬(SSRIを含む)への曝露による自殺行動リスクのプール相対リスクは1.38だった…!
- SSRIのみへの曝露による自殺行動リスクのプール相対リスクは1.28だった…!
- 抗うつ薬の使用による若者の希死念慮リスクはOR1.45だった…!
- 抗うつ薬の使用による若者の自傷行為リスクはOR1.44だった…!
上記を見ると、やっぱり若者のSSRI・抗うつ薬の使用は自殺行動・希死念慮・自傷行為のリスクを高めそうですね。この辺は「抗うつ薬の服薬と健康への悪影響についてアンブレラレビューを行ってみた!」でも説得力のあるエビデンスで出ていましたからね…。
【いじめの被害者・加害者】
- いじめの被害者と自殺行動との全体的な関係はOR2.78~3.26だった…!
- いじめの加害者の自殺行動リスクはOR2.62だった…!
- いじめの被害者と希死念慮との全体的な関係はOR2.23と2.34だった…!
- いじめの加害者と希死念慮との全体的な関係はOR2.12だった…!
- ネットによるいじめの被害者と希死念慮リスクは相関関係(r=0.27)にあった…!
- いじめの被害者の自傷行為リスクはOR1.98~2.34だった…!
- ネットによるいじめの被害者の自傷行為リスクはOR3.55だった…!
いじめダメ…!絶対…!が浮き彫りになった結果ですね。しかも、これらのレビューとメタ分析を統合した結果、いじめの被害者と加害者の両方が、自殺行動・希死念慮・自傷行為の共通のリスク要因だと判明したとのこと。非常に当たり前な結論ですが、従来型のいじめでも、ネットによるいじめでも、やっちゃいけないし、やられちゃいけないですね。
【睡眠障害】
- 睡眠障害は、睡眠困難、不眠症の症状、睡眠不足と定義した。
- 睡眠障害と自殺未遂リスクの関係はOR1.92だった…!
- 睡眠障害と希死念慮リスクの関係はOR2.35だった…!
- 睡眠障害と計画のある希死念慮リスクの関係はOR1.58だった…!
睡眠問題も侮れないですね。この辺に関しても「全米医学アカデミーから学ぶ慢性的な睡眠不足のデメリット」や「睡眠不足って健康や肥満など、どんなデメリットがあるの?」で紹介している通りかと。特に「睡眠不足って健康や肥満など、どんなデメリットがあるの?」で紹介した2023年の鄭州大学のアンブレラレビューの結果は衝撃でしたしね。
【女性】
- 自殺未遂は男性の若者よりも女性の若者に多くみられる。
- 女性の若者が自殺行動を経験する可能性は男性のほぼ2倍(OR1.96)だった…!
- 自殺未遂を報告する女性の若者は8.5%だったが男性は4.9%だった…!
- 計画のある希死念慮は男性の若者よりも女性の若者の方が多く、女性の割合は11.4%~19.8%だった…!
- 自傷行為リスクは男性の若者よりも女性の若者の方が高かった。
- 女性と自傷行為との全体的な関係はRR1.72だった…!
- 女性の非自殺的自傷行為(NSSI:自殺意図のない自傷行為)の割合は25.4%だったが、男性は22%だった…!
これらを見ると、女性の若者も注意が必要ですね。
【LGBT】
- LGBTと若者の自殺行動との全体的な関係はOR2.26だった…!
- LGBTと若者の自殺傾向(自殺行動と希死念慮)の全体的な関係はOR2.92だった…!
- バイセクシュアル(バイセクシャル)の若者と自殺行動・希死念慮の関係はOR4.92だった…!
この辺は近年見えてきた傾向と言えましょう。
やはり注意が必要そうですね。
【精神疾患のある青少年】
- 精神疾患と自殺企図リスクの関係はOR3.57だった…!
- 女性の自殺行動に関係する精神疾患は、不安障害、薬物乱用、うつ病、抑うつ症状、精神疾患や虐待などだった。これら精神疾患と女性の自殺行動の全体的な関係はOR1.15~4.49だった…!
- 男性の自殺行動に関係する精神疾患は、不安障害、うつ病、精神疾患や虐待などだった。これら精神疾患と男性の自殺行動の全体的な関係はOR3.79~6.07だった…!
- 女性の若者のうつ病(大うつ病・大うつ病性障害・MDD)と自殺行動との関係はOR4.49だった…!
- 男性の若者のうつ病(大うつ病・大うつ病性障害・MDD)と自殺行動との関係はOR6.07だった…!
- 双極性障害は過去の自殺未遂の割合が21.3%、研究時点で記録された自殺未遂の割合が25.5%だった…!
- 社会不安障害と自殺未遂は相関関係(r=0.10)にあった…!
- 社会不安障害と現在の自殺リスクは相関関係(r=0.24)にあった…!
- 自閉症の若者における自殺行動の割合は8.3%だった…!
- 精神疾患及び虐待の家族歴と、男性の若者の自殺未遂リスクの関係はOR2.63だった…!
- 自閉症の若者における希死念慮の割合は25.2%だった…!
- 双極性障害の若者の希死念慮リスクはRR2.94だった…!
- 精神障害(うつ病症状、不安症状、パーソナリティ障害、適応障害など)と自傷行為リスクとの全体的な関係はOR1.89だった…!
精神障がいを持つ若者や発達障がいを持つ若者も注意が必要そうですね。
【過去に自殺や自傷行為をしたことがある青少年】
- 過去の希死念慮のある女性の若者と自殺行動の関係はOR4.39だった…!
- 過去の希死念慮のある男性の若者と自殺行動の関係はOR3.97だった…!
- 過去に自殺未遂を経験している女性の若者と自殺行動リスクの関係はOR6.96だった…!
- 自傷行為のある青年と自殺未遂の関係はRR9.14だった…!
- 過去に自傷行為や希死念慮の経験がある若者と自殺未遂の関係はOR3.48だった…!
- 過去に希死念慮の経験がある若者と自殺未遂の関係はOR3.26だった…!
- 過去に非自殺的自傷行為(NSSI:自殺意図のない自傷行為)の経験がある若者と自殺未遂の関係はOR2.26だった…!
- 過去の自殺未遂の経験がある若者と自殺未遂の全体的な関係はOR5.56だった…!
- 家族の過去の自殺行動と女性の若者の自殺未遂リスクの関係はOR2.84だった…!
これらを見ると、繰り返すって傾向がみられますね。やっぱり注意が必要そうな感じ。
【懸念される行動のある青少年】
- 青少年の大麻の使用と自殺未遂の関係はOR3.46だった…!
- 青少年の攻撃性やルールを守らない、犯罪行為などは自殺行動リスクが1.59倍高く、違法行為の経験は自殺行動リスクが2.36倍高かった…!
- 青少年の大麻の使用と希死念慮の関係はOR1.50だった…!
- 青少年の学校の欠席と希死念慮の関係はOR1.20だった…!
- 青少年の学校の欠席と自傷行為の関係はOR1.37だった…!
- 青少年の行動問題(インターネット依存、アルコール・薬物の使用、喫煙、スマホ依存、家出、自殺未遂、インターネット・スマホの乱用、処方薬の意図的な間違った使い方(オーバードーズなど)、逃避、オピオイドの間違った使い方、鎮静剤の間違った使い方、ゲーム依存症など)と自傷行為リスクの関係はOR2.36だった…!
- 青少年の喫煙における自傷行為発生率は24.7%で、青少年の非喫煙における自傷行為発生率10.1%よりも高かった…!
- 青少年の飲酒における自傷行為発生率は24.4%で、青少年の非飲酒における自傷行為発生率9.3%よりも高かった…!
一昔前のヤンキーみたいな行動をしている場合や、不登校問題、スマホ依存問題なんかの注意が必要ってことですね。
10代の若者における自傷行為と自殺傾向の保護要因
次は各保護因子を見ていきます。【学校とのつながり】
- 学校とのつながりと若者の自殺未遂の関係はOR0.59だった…!
- 学校とのつながりとハイリスクな若者の自殺行動と希死念慮の関係はOR0.60だった…!
- 学校とのつながりと性的マイノリティな若者の自殺行動と希死念慮の関係はOR0.61だった…!
- 学校における自殺行動と希死念慮の予防介入は、自殺行動の予防に効果があった(Hedges's g=0.30)
- 学校とのつながりを経験した青少年と希死念慮との全体的な関係はOR0.53だった…!
- 学校における自殺行動と希死念慮の予防介入は、希死念慮の予防に効果があった(g=0.15)
学校とのつながりがある、感じていると自殺行動・希死念慮が減るみたいですね。
【最適な睡眠時間】
- 睡眠時間の長さと自殺傾向(自殺行動と希死念慮)との全体的な関係はOR0.52(=睡眠時間が長いと自殺傾向リスクが低くなる)だった…!
- 睡眠時間の長さと希死念慮との全体的な関係はOR0.55(=睡眠時間が長いと希死念慮リスクが低くなる)だった…!
- 睡眠時間の長さと計画のある希死念慮との全体的な関係はOR0.50(=睡眠時間が長いと希死念慮リスクが低くなる)だった…!
- 睡眠時間が8~9時間の青少年は、自殺未遂リスクが最も低かった…!
- 青少年の睡眠時間が1時間長くなるごとに計画のある希死念慮リスクが11%減少していた…!
兎に角皆ちゃんと寝ようぜ…!って感じですね。ベストはとりあえず8~9時間みたいでして、この辺は「結局、おすすめ睡眠時間は何時間なのか?」の記事を見ても納得できるかと…。
その他の曝露リスク要因
その他のリスク要因ってのも載っていましたんで、ご紹介しておきます。
- 女性における小児期の虐待と自殺行動の関係はOR2.76だった…!
- 男子における小児期の虐待と自殺行動の関係はOR3.77だった…!
- 一人っ子の家庭と自傷行為の関係は25.8%だったのに対し、兄弟姉妹のいる家庭と自傷行為の関係は27%と多かった…!
- ひとり親家庭と自傷行為の関係は30%と、両親がいる家庭よりも多かった…!
- 身体症状(障害や睡眠障害など)と若者の自傷行為リスクとの全体的な関係はOR2.85だった…!
やっぱ子ども時代の虐待(トラウマ)は自殺行動と関係があるんですね。また兄弟姉妹の有無や親の状況、自分の障がいの有無なんかも関係あるみたいです。
上記の特定の暴露がなかった場合、自傷行為と自殺傾向(自殺行動と希死念慮)の発生率はどれだけ減るのか…?
最後に、上記の特定の暴露がなかった場合、自傷行為と自殺傾向(自殺行動と希死念慮)の発生率はどれだけ減るのか(人口寄与率:PAF)をチェックしておりましたんで、見ておきます。これでどのリスク要因の影響が強いのか分かりますからね。
【1番影響度が強いリスク要因:いじめ】
- 世界学生健康調査(GSHS)によれば、いじめの被害者発生率は低・中所得国で30.4%、低・中・高所得国で30.5%と推定されている。
- GSHS研究に基づくと、いじめの被害から自殺未遂までの全体的な関係はOR3.06で、世界レベルでの関係はOR2.97だった…!
- つまり、いじめの被害から自殺未遂までの人口寄与率(PAF)は、低・中所得国で31.4%、低・中・高所得国で33.6%と推定される…!
- いじめの被害から希死念慮までの人口寄与率(PAF)は、低・中・高所得国で21.8%と推定される…!
- 上記の結果から、いじめに遭わない環境だと、自殺未遂が33.6%、希死念慮が21.8%、発生しなかったとなる…!
もし、いじめがない環境にいたら、自殺未遂が3分の1減っていた、希死念慮が5分の1減っていたってのは衝撃ですね。やっぱいじめは超大問題だと言えましょう。
【2番目に影響度が強いリスク要因:睡眠障害】
- 2番目に高い人口寄与率(PAF)を示した曝露は睡眠障害だった…!
- GSHSによれば、から推定された睡眠障害の有病率とメタアナリシスから推定された相対リスクに基づくと、希死念慮に関する睡眠障害の人口寄与率(PAF)は12.1%で、自殺未遂に関する睡眠障害の人口寄与率(PAF)は10.4%と推定された…!
- 上記の結果から、児童・青少年の時に睡眠障害を持たない環境だと、自殺未遂が10.4%、希死念慮が12.1%、発生しなかったとなる…!
10代の若者に睡眠障害がないだけで、自殺未遂・希死念慮ともに10%減るのは大きいですねー。やっぱ睡眠は基本で超大事だと言えましょう。
【3番目に影響度が強いリスク要因:学校の欠席】
- 世界の研究では、学校の欠席の定義は様々。
- その中で最も問題のある学校の欠席として定義されているのは、無断欠席と登校拒否。
- 学校の欠席の一般的な定義は、学齢期の青少年が①少なくとも2週間、授業時間全体の25%以上を欠席している、②少なくとも2週間、授業に出席することが極めて困難で、子ども又は家族の日常生活に著しい支障をきたしている、③15週間の開校期間中、10日間以上学校を欠席している(=少なくとも15%の日数を欠席している)場合を指す。①と③はどちらも、少なくとも25%の日数を欠席している。
- ニュージーランドのデータによると、慢性的な学校の欠席(欠席日数が30%以上)と中程度の学校の欠席(欠席日数が20~30%)の両方を含めた希死念慮の人口寄与率(PAF)は4.5%だった…!
- 十分なデータがなく、自殺未遂の人口寄与率(PAF)はよく分からなかった。
学校、つまり子どもにとっての社会とのつながりが如何に大事かも考えさせられますね。
因みに研究者によれば、生徒がつながりを感じ、帰属意識と安心感を持てる学校環境を作るために、学校内の教室文化を競争から協力へと転換させる必要がある、教員はいじめの第一対応者となるため、メンタルヘルスリテラシースキルが必要だとしておりました。
また解決策として、いじめ防止を可能にするために生徒と教師の関係を再構築する、状況に合わせて複数の介入を実施する、状況に合わせて複数の個別戦略で対応するのが望ましいともおっしゃっております。
いずれも納得できますねー。
個人的考察
2002年のオックスフォード大学の研究にもある通り、そもそも自傷行為をする人のほとんどは、自傷行為を認めることも、自傷行為をする前に助けを求めることにも消極的な場合が多いのが実情です。
確かに当事業所にいる(いた)方々も自傷行為の対策や支援に関して消極的な面が多かったですね。
その為、自分自身で出来る物や上記で挙げた新しいデジタルベースのアプローチなんかかなり良いんじゃないかな~と個人的に思っております。
参考文献
リンク