これまで、フィンランド、オーストラリアの研究から、知的障がいと平均寿命の関係を見てきました。
今回はイギリスの研究を見ていきます。



イギリスに住む知的障がいのある方の平均寿命について調べてみた…!更に回避可能な死亡要因もチェックしてみた…!

2013年のブリストル大学の研究によると、イギリスに住む知的障がいのある方の平均寿命について調べてみたそうです。更に、知的障がいのある方とない方の回避可能な死亡要因を比較してみたんだとか。
ということでまず研究者たちは、イングランド南西部で医師によって診断された4歳以上の知的障がいのある方々の死亡についてチェックしてみたそうな。すると2010年6月1日~2012年5月31日までの間に247人の方が亡くなっていたらしい。また併せて、死亡についての詳しいデータも集めたそうです。次に比較対象として、知的障がいのない方で年齢や性別、死因がほぼ同じ方の死亡調査も行ったみたい。
最後に集まったデータを統計処理し、傾向をチェックしてみたんだとか。
その結果、

  • 知的障がいのある方のほぼ4分の1(54人、22%)が50歳未満で死亡していた。
  • 知的障がいのない方の50歳未満での死亡率は9%だった。
  • 知的障がいのある方の死亡年齢の中央値は64歳だった。
  • 知的障がいのある男性の死亡年齢の中央値は65歳だった。
  • 知的障がいのない男性の死亡年齢の中央値は78歳だった。
  • 知的障がいのある女性の死亡年齢の中央値は63歳だった。
  • 知的障がいのない女性の死亡年齢の中央値は83歳だった。
  • 知的障がいの重症度が重くなるほど死亡年齢の中央値は低かった。
  • 軽度知的障がいの方の死亡年齢の中央値は68歳だった。
  • 中度知的障がいの方の死亡年齢の中央値は64歳だった。
  • 重度知的障がいの方の死亡年齢の中央値は59歳だった。
  • 重度知的障がいの方と複数の障がいを持つ場合の死亡年齢の中央値は46歳だった。
  • 質の高い医療が原因の回避可能な死亡は、一般人口(13%)よりも知的障がいのある方(244人中90人、37%)の方が高かった。

う~ん。知的障がいのある男性は一般人口と比較して平均13歳も死亡年齢が早く、女性に至っては20歳も早いんですね。またこれまで見てきた先行研究と違い、このイギリスの研究では、軽度知的障がいの方の死亡年齢の中央値は一般人口に比べ、かなり若かったみたいです。
但し希望もありまして、質の高い医療が原因の回避可能な死亡が一般人口よりも知的障がいのある方に多く見られたみたいなんで、ここを対策することにより、もっと寿命を延ばせる可能性があるということ。まぁ、そもそもそんな差があるのが問題なんだ…!って言ったらそれまでですが…。
因みに回避可能だった原因については、

  • 本人のニーズに対して不十分又は不適切な入所施設や生活スタイル
  • スタッフに話を聞いてもらえなかったと感じる家族
  • 高度な医療ケアと計画における問題
  • 本人のニーズの認識とニーズの変化に調整・対応が難しかった問題
  • 本人の意思決定能力の評価と本人の医療ケアの意思決定プロセスのズレ

の割合が有意に高かったとのこと。
確かにどれもありそうですね。特に知的障がいの重症度が重くなるほど、本人のニーズをちゃんと把握し変化にも対応するのは難しいでしょうな。



個人的考察

ということでイギリスの研究は他とちょっと違う感じの結果でしたね。



参考文献